「レッシィか」 扉を覗く前から確信が持てた。 そしてやはり、その部屋にはセシルの予期した通りの人物が 中央の机に備え付けの椅子に座っていた。 「起きてたのか……」 わざわざ、話しかけなくてもいいと思ったが、もう一度寝直すのはできないと思った。 皆が起きるまでもう少しだけ時間がかかりそうでもあるし、時間を持てあますよりはいいと 判断し、部屋に入室した。 「あら……でも、もう早朝といってもいいでしょうし……」 よく見ると、窓から見渡せる風景は既に暗闇が薄くなりつつある。 しばらくせぬ内に静まりかえった町に活気が返ってくるであろう。 「いつもこんなに朝が早いのかい……?」 何気なく聞いてみる。するとレッシィは少し考える仕草をした。 「う~ん……こんなに早起きするようになったのは極最近になってからです。とは言っても 今までも、お父さんと二人で暮らしてましたからね。基本的には早起きですよ」 最近というのはいつだろうか? 彼女の生活に変化がおきたということだろう。それは…… 「やっぱり気になるのか?」 日常に起こった変化。ためらいつつも、セシルは訪ねる。 「お父さんですか……そりゃあ、やっぱり気になりますわよ」 セシルはシドの事とは言わなかったが、彼女は直ぐに何を聞きたいのか分かってしまった ようだ。 「でもね……心配ばっかしてても仕方ないですから。お父さんは昔から無茶を する人だったけど私やお母さんを悲しませる人ではなかったからね」 元気な娘だ。そこには無理に意志を保っているような気配は感じられない。 さすがは豪快な飛空挺技師であるシドの娘といった所か。多少の事でへこたれはしない。