穿つ流星24

「シド、悪いけど先に言っておいてくれないか」
「何? どういうことだ?」」
セシル以上に話に取り残されていたシドは自分に御鉢が回ってきた事、そしてセシルの急な要望が不可解であった事に対して二度の
驚きの声を上げた。
「あの魔物の狙いはどうやら僕達三人だけのようなんだ……だからヤンと一緒に」
「それだけでは納得いかんぞ!」
シドはすぐには首を縦には振らなかった。当然であろう。
「やっと皆がそろったのだ! お前達を置いていくことなどできるわけがないであろう……」
老技師は自分が今この場所に於いて不要だとされている風潮に対して怒っている訳ではない。
「ここでお前達三人を残していけばまた帰ってこなくなるのではないか? 儂はそれが怖いのだ」
セシルとカインの旅立ちで残されたのはローザだけではなかった。シド、赤い翼の仲間達も当然ながら残された者として寂しさを
持っていた。
「シド殿。行きましょう」
梃子でも動くつもりのないシドにヤンがひっそりと声をかける。
「…………」
「シド殿、我々が此処にいても邪魔になるだけです。しかし私達にはまだ出来ることがあります」
黙ったままのシドに対して更に続ける。
「船乗りは必ず海に旅だちます。ですがいずれは元の場所へと帰ってまいります。しかしそれには待つ者の存在――碇の存在が必要不可欠
なのです……」
「今の状況もそうだというのか?」
「はい」
「碇か……確かにな!」
少しの迷いの後、シドは元の語気を取り戻した。
「わかったわい!」
重い腰を上げたように言った。
「だが約束だぞ! 絶対帰ってくるのだぞ!」
「ああ!」
力強く差し出された腕をセシルも強く握り返す。
「では我々は先に行っています……すみません力になれなくて」
「いやこちらこそすまない」
本来ならヤンの力も借りたいほどであった。
多少の傷を負っていても彼の力はやはり頼もしかった。
「だが……これは僕たちの問題だ……」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年11月09日 01:14
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。