「セシル、みんなが……みんなきてくれた!」
近くにいたローザがぎゅっとセシルの手を握ってくる。
「ああ」
見るとローザの目には涙が浮かんでいた。きっとセシルも似たような表情であっただろう。
(みんなが)
心の中でセシルの決意が固まる。
「フースーヤ」
出来事の一部終始を黙ってみていた月の民へと声をかける
「みんなと話がしたい。できるかな?」
「クリスタルを使えば可能であろう」
そう言って視線を船内の中央に鎮座するクリスタルへと向ける。
「しかしバリアは展開中じゃ、あまり長い時間は無理だ」
「わかった」
自分の提案を受け入れてくれたフースーヤに感謝をしてセシルはクリスタルへと手を触れる。
「ローザ、リディア、エッジ。君たちも来てくれ」
仲間たちを自分の後方へと案内する。
(みんなに届け)
クリスタルがわずから煌めきと共に一筋の光を船外へと射出する。その光は上空で広がり外部モニターからでもわかる大きさへとなっていく。
やがてそれは船内のセシル達を映し出すホログラム映像へと変わった。
「おおっ! セシル!」
シドの声が自分の提案が上手くいったのだとわかる。
「みんなありがとう」
船内から外の皆へ感謝の言葉を伝える。
「そしてこれから大変な戦いになるかもしれない。苦しいかもしれない。身勝手なお願いかもしれない。でも僕と一緒に戦ってほしい」
今の自分にできる精一杯の声をひねり出した。そのつもりでセシルは喋っている。
「そなたたちだけではない!」
聞こえてきたのはミシディアからの船だ。
「この大地に生きとし生けるもの全ての 命の戦いじゃ!」
パロム、ポロムを左右に従えて立つのはミシディアの長老だ。
(長老!)
あの日ミシディアから一つのクリスタルを奪取した暗黒騎士がいた。そこから贖罪の旅は始まったのだ。
「ありがとうございます」
軽く会釈。はっきりと前を向きセシルは言葉を続ける。
「みんな、もう少しだけ力を貸してください。きっと最後の戦いになる。だから僕にもう少しだけつきあってほしい」
ミシディアから始まった旅、パラディンとなり歩いてきた道、それらの足跡は今――長き旅路は着実に終わりに向かっている。
(まだ終われない)
軽く心でひとりつぶやいた。
最終更新:2021年09月17日 21:53