セシルの言葉が戦いの狼煙であった。
ジオットを始めとしたドワーフ戦車隊。シドが用意した飛空艇部隊。
それぞれが攻撃を開始した
「これが最後なんじゃ! これが終わればもう戦車はいらん。だからどんどんうちまくれ!」
「そうじゃこっちも武器にはせんわい!」
地底と地上二つの世界の技術の枠がバブイルの巨人の進行を食い止める。
すでに戦闘が始まって小一時間は立っているだろうか
巨大な敵を相手にここまで戦闘を継続するシド達には頭が下がる思いだ。
だがそんな気持ちとは裏腹に巨人がダメージを受けた様子はなかった
「巨人がひるんでいる!?」
最初に驚くのはローザ。
確実に巨人の接近を拒む攻撃の動きが鈍くなっているのに気付いたのだ。
「時間稼ぎにしかならんと思っていたが――」
最初から地上の攻撃を当てにしていなかったと思われるフースーヤもこの変化には驚いている。
「今の内に内部に入る!」
「最初から言っていたやつの心臓を叩くってわけか!」
作戦を後方で聞いていたエッジが腕をかち合わせ意気込む。
「だったら機動性のある飛空艇で一気に接近する!」
セシルは提案した。
巨人の手がとまった以上小回りの利く飛空艇で一気に接近してしまえばいい
「うむ」
フースーヤも承諾した
「シドに頼もう!」
「時間がない クリスタルを使って一気に行く!」
踵を返し月面船を着陸させようとした矢先、今度はフースーヤが提案する。
「中央のクリスタルを使って、シドとやらのところまでいく。わたしも一緒にいくぞ」
既に集まっていたローザ達の元に歩き出すフースーヤとセシル。
「月面船は大丈夫なのか」
「安心しろある程度はオートで動いてくれる、私たちがいなくなった後はいったん戦線を離脱して着陸させるように指示している」
後方席の休憩室の方へ眼をやりながら話すフースーヤ。
台座中央に到着してセシルは再びクリスタルへと触れる。
「セシル、シドの飛空艇の元へ行きたいと念じるのだ」
ゾットでの戦いの後、ローザの転移魔法テレポが脱出魔法以上の力をもってバロンまでセシルを導いた。
あの時と似た使い方なのだろう。
想いの力とでもいうのだろうか
時には強い力にもなる。時には嫉妬から醜い感情になる。時には心配から恐怖や不安に駆られる。
そのどれもが人が誰かを大切に感じ何かを大事に想う気持ちからくるのだ。
(その力を無駄にはしない)
確かな思いを込めてセシルはクリスタルへと念じた。
最終更新:2021年09月17日 21:53