自分も似たような気持ちだ。しかし――
腰に掛けた聖剣の鞘にそっと手をかけセシルは一人思考する。
この判断は間違っていない……なんとか自分に言い聞かせる
この期に及んで自分はまだ嘘をついているのだろうか?
「セシル、エッジ」
三人旅の悩みが支配する空間を打破したのは竜騎士の言葉。
「俺が言うのもおかしな話かもしれない……しかしお前達の判断は間違っていると俺は思わない」
寡黙なカインがいつになく饒舌な台詞を吐く。普段とは状況が逆転してるようだ。
「悩みは今後の戦いの士気にもかかわる」
「まさかお前に……カインに説教されるとはな――」
先ほどから落ち着かない風に船内のあちこちに所在を置いていたエッジがカインを向く。
「確かにその通りだな! それにあの時が別れになるわけじゃねえ。俺達が生きて帰れば、またリディア達には会えるわけだしな!」
「その通りだ」
少し元気を取り戻し、いつもの調子が戻ってきたエッジの意見をカインは肯定する。
「その為には万全の態勢で戦いに挑む必要がある。月まではまだまだ到着に時間がかかる、少しでも
休んで体を回復するべきだろう」
その言葉に同意をするようにエッジは船内の後方に備え付けられた休憩室へと足を進める。
「お前も休んだ方がいい、セシル」
その様子を見送った後、旧知の親友であるセシルにも言葉を向ける。
「カインはどうする」
「俺は所持品の確認をしておく、ローザもリディアもいないのだ。回復薬もアイテムもたくさん必要だろう」
準備は俺に任せて後は休め。カインの気遣いは旅立ちの前のバロンの言葉を思いださせた。
「ありがとうカイン」
今は彼の善意に甘えることにしよう。セシルも休憩室へ向かって歩き出した。
(今度こそ本当に最後の戦いになる)
地上での戦いとは違い、月には正真正銘の最後の決戦が待っている。
その為には体調を整える事も立派な戦術であろう。ましてや今は静かな宇宙の航海の真っただ中なのだ。
(こんなにゆっくりできるのはこれが最後かもしれない)
道中にテントやコテージを使用できる場所はあるかもしれないが確実ではない。
たとえ存在していたとしても敵襲の警戒はしなければならない。
休憩室の扉をくぐると、エッジの様子も確認せずに、開いていた機械のベッドへともぐりこむ。
あなたにもしものことがあったら、私……
眼を閉じて眠りへといざなわれるセシル。ミストへの旅立ちの前夜、長い夜の彼女の台詞がセシルの頭に再生される。
(ローザ……)
彼女への答えを出せぬままセシルは深い眠りについた。
最終更新:2021年09月19日 20:11