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決戦4



セシルが目を覚ますと魔導船は目的地である月へと到着していた。
休憩室へも中継されている外部モニターは薄暗い闇の宇宙ではなく乾いた銀色の大地を一面に映している。
既にこの部屋にはセシルしかいない。エッジも先に向かったのだろう。
「行くぞ!」
自動扉を開け放ちクリスタルの鎮座するメインブリッジへと向かう、エッジの姿を確認するやいなや、セシルは一言強く言い放った。
そのままエッジを追い越し、魔導船の乗降口へと向かう。既に月の大地への着陸は完了し、この船と月を結ぶタラップは展開されていた。
「!」
出口へと向かうタラップ付近にはカインが静かに腕組みをして待っていた。
しかしその後に起こった出来事はセシルを驚かせた。
外のタラップから静かに歩いてくる一つの影、その人物の事をセシルは見間違う事はなかった。
「ローザ!」
その息使いや表情などは間違いなく幻覚や化けて出たものではない。蒼き星で別れた彼女そのもので間違いない。
「…………」
思ったよりも早く再会した彼女はただ静かに無言を貫き、セシルの事を微動だにせずに見つめている。
「そこを退くんだ……」
一度決めたこと、今更撤回などするわけがない。即座にその考えを言葉にしてローザへと突きつけるセシル。
「いやよ」
彼女の口が開いた。
「いやよ! 私も連れて行ってくれなき、ここを退かないわ」
「何を……」
地上で静かに別れた彼女からは予想もつかなかった反論の声。それはいつもと違う、セシルの知らない彼女の反応であった。
「あなたの側にいられるなら、どうなっても……」
少し俯き、手のひらを胸にもっていき小さな声で話す。ローザはさらに続ける。
「いいえ、あなたと一緒にならどんな危険なことだって……!」
今度は前を向き、セシルへと向かって歩き出すローザ。
「ローザ……」
彼女はいつも自分を想っていてくれた、そして自分の役に立ちたいと思い白魔道士として魔法を極めた。
いつだって危険を顧みずに自分のところにかけつけてくれた。
(あの程度の事で彼女は引き下がらないんだな)
静かに何も言わなかったのはローザも同じく悩んでいたのだろう、彼女も足手まといになるのではないかと。
「私がいなければ回復はどうするの」
しかし今は自分の役割でセシルの役に立ちたいとはっきりと言葉を向けてくる。
なんで黙って去ったのか? そこに違和感を感じなかったセシルではない。ローザは、彼女はいつもセシルを想い迷いながらも言葉を
くれた。そこに惹かれたのは間違いない。
(僕はパラディンになった)
パラディンは誰かを守るもの。この力を手に入れたのはなんの為だ?
「仕方ないな……セシル」
困ったような言葉のカイン。しかしその声は笑っている。
「羨ましいねえ」
エッジもそれだけだ。セシルの判断を待っているのだろう。
「分かったローザ……ローザ、僕が君を守ってもみせる!」
誰かを守るパラディンの力。そしてカインを始めとした仲間達。その力があれば必ずこの戦いからも生きて帰ってこれる。
もうセシルに迷いはなかった。
ローザを受け入れ静かに抱きしめる。
「うまくいったね!」
感傷に包まれたその場所に割り込む声、タラップからもう一つの影が現れる。
「おめーーリディア」
ここにいて当然とばかりに主張するリディア
「いつか言ったでしょ、これはみんなの戦いだって」
セシルもローザから腕を離し、彼女を肩に回し、リディアを見る。
「それに幻獣たちを呼べるのは、私だけよ!」
「やっぱり隠れてたのかよ!」
少し怒り気味なエッジ、しかしどこか嬉しそうである。セシルにはそう感じられた。
「リディア……わかった」
そういって彼女の小さな手をとる
「行こう! 僕らの戦いに!!」
この戦いは――激戦となるだろう
しかしローザ、カイン、リディア、エッジ。誰一人欠ける事なく蒼き星へと帰るのだ。
仲間達とタラップを降り決戦の大地へと足を踏みしめながら、セシルは一人で胸に誓った。

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最終更新:2021年09月19日 20:11
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