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決戦8

月の地下渓谷、自然の岩場をくり抜いたようにつくった洞窟状を進んでい行くと景色は一変
開けた場所にやってくると急な明るさがセシルを襲った。
今までの薄闇を照らしていた松明も照明魔法も必要ないほどの明るさ
道行く道も地面一体がクリスタル状の通路で埋め尽くされていた
「カインの言った通りだったね」
月での時間の概念はわからないが、昨夜――セシル達の野営地へカインが帰ってきたのは、皆が寝静まってからほどなくしての事であった。
(向かったところに明るい場所がある)そんな事をいっていた。
「フッ……決戦が近いという事だな」
「へへっ……今までに比べて明るいって事はもうあんなに迷わなくていいって事だぜ!」
ここまでの地下へ向かう道は薄暗闇が支配し、幾多もの隠し通路に迷わされてきた。
見るとこの場所はクリスタルの通路は規則正しく作られた階段が結び、最深部へと案内しているようだ。
「ここに月の民のみんなは眠っているのかな……あのフースーヤおじいちゃんの仲間達が?」
透明なクリスタルの通路からは微かに最深部へと向かう深淵がのぞいて見えた。
「みんな油断はしないでね」
皆の傷の癒し手であるローザが仲間達に注意を促す。その言葉は何よりもここにいる五人を安心させ、士気を高めた。
慎重なセシル達の前に何かが転移されていく。
「顔?」
徐々に姿を現すそれは一つの顔――読んで字のごとく「顔」だけであった。
「最深部マデヨウコソ? アナタ方は我々のご客人ですか?」
やや籠っていたがその声は機械から発せられた声であった。録音したものなのだろうか
? やや人間味を感じさせる声である。
その「顔」は全体で数m、セシル達が見上げるほどの大きさである。表情に敵意は見えない。
「ワタシはフェイズ――ここは我々の仲間が眠る場所……ナニヨウで」
「僕たちは――」
消耗という意味でもあまり戦いたくはないが
「お願いしても無理そうだよね?」
「返答ナシ。侵入者とみなして排除シマス」
「顔」が駆動音を上げる。既に皆戦いの準備はしていた。
「魔法障壁――リフレクを展開シマス。目標を確認排除します」
顔の――フェイズの口が開き、侵入者を排除するためのの透過レーザーを発射する。
「追撃――魔法攻撃にハイリマス」
やはり、交戦は避けられそうにもない。
顔、フェイズとの遭遇をきっかけにゼムスや兄の元へ続く戦いの火蓋が切られた。
「こいつは?」
幾度ものフェイズとの交戦を経て、クリスタルの通路を向かう先で巨大な人影が見えた。
セシル達を人まわりも大きく巨大な人影のそれは確かに人の形をしていた。
「ゼムスサマヘ……」
僅かに声がするしかしそれは無機的でとても人の声には思えなかった。
よくみると人の影は輪郭だけであり、その姿はただ橙の思念の塊であり、頭部の顔ものっぺらぼうのように表情もない。
さきほどの機械のフェイズとも違う、本当の意味で表情がないのである。
「ゼムスサマヘホウコク……」
顔から発せられるビーム状のものがセシル達に近づく、痛みはない。
攻撃とは思えなかった。
「セシル……セシルハーヴィ……パラディン……」
「なんだこいつは?」
「カイン、ローザ、リディア、エッジ……ゼムスサマヘホウコク」
「俺達の事をゼムスに伝えている?」
おそらくは侵入者の情報をゼムスへと伝えるものなのだろう。
「邪魔だ」
エッジが一足早く攻撃態勢に移る。しかし、彼の刀はすっとその人影を抜けた。
「実体がない」
機械的でないそれはゼムスの思念とすら呼べるものだ。
(しかし攻撃をしてこない)
おそらくはただこちらの情報を伝えるだけなのだろう。
隠れてきたつもりはないし、セシル達の侵入はすでに察知されている。
そもそもこの先にはセシル達よりも先に向かった先客がいるのだ。
ここにきてゼムスの思念と呼べるものが現れたのは本体が近くにいるということだ。
(だがこのゼムスの思念ともよべるものが攻撃してこないのは何故だ?)
おそらくは――
「!」
考えがまとまる前に奈落の方からの轟音と振動が駆け巡った。
「何?」
姿勢を保つようにリディアの疑問の声
やはり――
ゼムスの思念体が情報集め程度の思念にしか集中していないということは本体自体が戦闘状態に入ったということだ。
「急ごう」
おそらくは今の音も、ゼムスと先客の戦闘の開幕を告げる音であろう。
セシルはゼムスブレスを無視してダッシュした。
(兄さん……無事でいてくれ)
はやる気持ちが近づく戦闘の音に呼応するように大きくなる。不安を振り払うようにセシルは進みだした。

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最終更新:2021年09月24日 23:47
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