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てっきり炭坑の内部はバリケードやトラップなどが仕掛けられ、ナルシェ側は
全力で侵入を阻んでくるだろうと予測していた彼らにとって、炭鉱内はあまりにも
退屈な場所だった。おそらく洞窟に自生しているであろうモンスターに何度か
遭遇しただけで、苦もなくここまで到達することができた。
炭鉱内ではじめて彼らの行く手に立ちふさがったのは、木で組み上げられただけの、
申し訳程度の防壁だった。
しかしこんな物では時間稼ぎにもならないだろう。
「俺がやる、下がってろ!」
男の一人が前へ出て言い放つと、魔導アーマーごと体当たりして木製の防壁を
破壊した。地面に散らばった廃材を踏みつけて、男は前方へ顎をしゃくった。
そんな相棒の姿を見て、奴らしい力業だな、と、後ろに立っていた男は小さく笑った。
その直後だった。
たった今壊したばかりの防壁の先に広がる闇の中から、逃げるように走り出てきた男
――ナルシェのガードと対峙する。
「幻獣はわたさない! ……ユミール、行け!!」
狂気にも思える叫び声と共にガードが脇へ飛び退くと、背後から突進してきた得体の
知れない――巨大なカタツムリのようにも見える――怪物が魔導アーマー三体の前に
現れた。彼らは反射的にレバーを握り身構える。
最終更新:2007年12月12日 01:13