扉を開けたローザの目に飛び込んできた光景は、彼女の意識を破壊するにあまりある
ものだった。部屋の中心に立ち、同じように放心したように自分を見つめるのは、
まぎれもなく親友のカインの姿。
そして、 その、 手の、 槍が 、セシルの、・・
「やめてえぇーーーーーっっ!!」
もっとも大切なひとが奪われようとしていた。
もっとも信頼していた友人の手によって。
その光景の意味を理解してしまう前に、彼女の理性はそれを否定した。
「ローザ!?
なぜ、君がっ・・!?」
泣き叫ぶローザの姿にカインは気を取られ、無意識に槍を握る手を緩めていた。
その機を逃すヤンではなかった。
痛烈な爪の一撃がカインのみぞおちをえぐり、続けざまの攻撃で間髪入れずに壁際に
蹴飛ばされる。
「ぐっ!」
「ローザ殿!」
すかさずヤンがセシルを守るように立ちはだかり、傷ついたセシルを目で示した。
ローザは恋人のもとに駆け寄り、深々と鉄の刃が刺さった胸に気遣わしげに手を添える。
胸を抑えながら踞り、カインは自分を見下すモンク僧を凄まじい視線で睨みつけた。
「き、さま・・!」
「カイン! お願い!」
再びローザが悲痛な声で懇願する。その声に、カインもまた悲痛な表情で押し
とどまった。激しく歯を食いしばりながら、カインは怒りに身震いしていた。
最終更新:2007年12月12日 04:13