「勝手な推測だがな……」
長老はそう付け加えた。
「だが、奴の本音くらいは分かる間柄であると自負してるつもりだ」
「誰も止めなかったのですか?」
「引き留めようともしたが、奴は聞き入れなかった。一度決めたらもうその考えを修正する事はない。
奴はそんな性格なのだ。本来なら奴こそミシディアを率いる者だったのだ……」
テラが去った後のミシディアは長老がひきたのだろう。その後どうなったかは、今の町並みを見れば明白だ。
結果的にテラが去ったことはこの国を発展に導いたのかもしれない。
それでもしばらくは住人達にはやるせない思いが残ったであろう。
誰にも罪を問うことが出来なかった。そして皆が優しさと思いやりを持っていた。だが、それが
不幸を呼んだ。そしてその不幸は恨みや、悲しみを誰にもぶつける事ができない。その例をとってみると
この類の不幸は一方的に押し寄せる不幸に比べて、なんともやりきれないものだ。
「これで私の話は終わりだ」
「……有難うございます」
長老にはつらい話をさせてしまった。無駄な詮索などしない方がよかったのかもしれない。
だが、セシルはミシディアの民の持つ、多くの悲しみを少しだけだが、理解できた様な
気がした。それはセシルにとって大きな収穫であった。
最終更新:2007年12月14日 04:15