六節 双肩の意志2

「陛下! 答えてください!」
本当なら、父上と呼びたかったが、今はひたすら私情を抑え、王の心境と明かそうとする。
「はて……何がお前を其処まで、怒りに触れたのだ?」
王の答えは素っ気ないものであった。まるで他人行儀なその姿にセシルは困惑する。
「それよりも――」
「陛下! はぐらかさないでください! 私がこの国を発ってから、明らかな変化がありました。
民も不審を抱いてます! 貴方ほどのものが気付いてはいないと思えません!」
少なくとも、セシルを知っていた王は、そこまで愚かではないはずであった……
「ベイガンは……あなたの為に、人である事を捨てました……」
「ほう……」
「知っていたのでしょう! 陛下!」
あまりにあっけない王の答えに、声を荒げるセシル。
「彼は……彼だって、国がこんな事にならなければ野望を抱かなかったでしょう……なのに、あなたは!」
「…………」
「それに何故、魔物を徘徊させたのです。挙げ句、他の者の進言を拒むなど……私の知っている陛下は……」
一旦、そこで口を紡ぐ。
「父上……あなたはそんなに、そんなに弱気人間では……なかったでしょう……」
セシルの声は先程までの強みが急に退いたかのように、弱かった。
そして、今まで言わなかった事。王を父と呼んだ彼は、王の変貌は怒りよりも悲しみに映ったのだ。
「セシル」
その熱意に静かに答える王。だが、そこには過去、息子のように自分を可愛がった暖かみはない。
「先程も言おうとしたのだが、よくぞ戻ってきたな……もう一度、私の元でやり直す気はないかね?」
何を言ってるのか、最初は理解できなかった。
「父上、ふざけているのですか!」
あそこまで問いつめた自分に今更何を……あまりにも突然な事だ。
「しかしその為にはな……その姿は頂けない」
「!」
言って、自分を見回すその目を見て、一つの可能性にやっと気付いた。
「パラディンはいかんぞ……そうだ、いかんのだ」

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最終更新:2008年08月24日 09:31
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