西住みほ&ライダー ◆7ajsW0xJOg
時に、少女は夢を見る。
それは暗く冷たい水中へと沈む夢だ。
濁った水に絡まる四肢を動かし、漂う泡を掻き分け、水底に落ちていく鋼鉄を追いかけた。
痛みはあった。だけど迷いは無かった。
背後に残した大事な何か、これまで守り続けていたもの、勝利へ繋がっていた道を振り返ることなく。
少女は水中に身を投げ出して、必死に追いかけていた。
落ちていく鋼鉄を。
後に、その決断を否定され。
何かを諦めることになるとしても。
何かに失望することになったとしても。
その時、少女は迷わなかった。
過去の夢。
時間は止まっている。
冷たい水の中。
一度だけ。
脳裏に。
ただ一つの教えを聞いた。
『撃てば必中、守りは堅く、進む姿は乱れなし』
その時、少女が裏切ることになった教えの声を。
『鉄の掟、鋼の心、それが西住流』
▼ ▼ ▼
小さな部屋に響き渡るアラームの音。
「……ん……」
そうして今、ベッドの上で目を覚ました少女――西住みほ――の目覚めは決して、快適なものとは言えなかった。
「……っ!」
跳ね起き、時計に手を叩き付けるようにして目覚ましを止める。
「あ」
そして大急ぎで服を脱ぎかけたところで、気が付いた。
「そっか」
部屋の風景を見まわして。
「もう家じゃないんだ」
声は一人暮らしの部屋に、小さく響いた。
▼ ▼ ▼
西住みほは良く晴れた空の下、歩き慣れた道で学校へと向かう。
彼女はこの通学路をとても気に入っていた。
途中で通るパン屋の匂い、実家の近くには無かったコンビニ、帰りがけに寄れるアイス屋さん。
どれも好きで、だけどそれを楽しむには大切な友達の存在が欠かせない。
「西住さん。おはよう」
道中、声をかけてくれた
クラスメイトの友達に、彼女も挨拶を返す。
「おはようございます」
この学校に転校してきたばかりの頃は、友達が出来るか不安だった。
引っ込み思案な性格もあって上手く周囲に溶け込めなかった。
通学路、友達と一緒に登校する同級生を羨ましく見ていることしか出来なかった。
だけど今は違う。
あの日『誰か』に教室で声をかけてもらった事をきっかけに、沢山の友達が出来た。
最初に、誰に声をかけてもらったのか、その記憶がいまいち曖昧ではあるけれど、
こうして今日も、友達に言葉をかけてもらえる。
「え……っと」
目の前の友達の名前を言葉にしようとして。
「西住さん。選択必修、楽しみだね」
不意に投げられた言葉に思考が途切れる。
――選択必修、ああそういえば先日、履修申告用紙が配られたんだっけ。
「西住さんも私と同じ、『香道』にしたんでしょ?」
――そう香道。一度はそれに丸をつけて……一度?
鞄の中から用紙を取り出してみると、確かに香道にだけ丸がついていた。
他に、目を引くような授業も無い。
――だけど……なんだろう……何か他に……あったような。
自分の内側に在る不自然な思考が引っ掛かる。
ボタンを掛け違ったような、小さなズレ。
無視してもいいはずなのに、無視できない何か。
――変、だな。
今朝、妙な夢を見たせいだろうか。
不意に眩暈がした。
少し体調が、おかしい。
「着いたね。西住さん」
「え?」
俯いた顔を上げると、すでに校門が目の前にあった。
「じゃあ、私は職員室に寄っていくから、また後でね」
「あ、うん」
あいまいに返事を返して、下駄箱で友達と分かれる。
ただ一言最後に言い残し、彼女は快活に去っていく。
「具合悪いなら、保健室に行ったほうがいいよ?」
その背中を見ながら思った。
どうしてだろう。
なぜなんだろう。
彼女の名前が思い出せない。
確か自分は、クラスメイト全員の名前と誕生日を憶えていた筈なのに。
その後も、気分が優れることは無かった。
体調不良に加え、常に強烈な睡魔に襲われ続け、授業中に何度も眠ってしまいそうになった。
最近見続けている妙な夢のせいか。
気持ちよく起きれたことが、もう随分ない。
ちゃんとした睡眠が取れていなかったのだろう。
そして遂に、選択必修を次に控えた歴史の授業で、彼女の意識は闇に落ちた。
▼ ▼ ▼
こぽこぽと鳴る水音。
冷たい水温。
濁る視界の先には巨大な鋼鉄の塊。
――ああ、またこの夢。
そうして、『西住みほ』は自己を取り戻す。
この夢を見ている間だけ、全ての記憶を取り戻す。
正しい現状認識を得る。
これは夢であって夢じゃない。
実際に起こった過去の記憶。
だから、そう、これこそが現実(しんじつ)だ。
夢とは、つい先ほどまでいた日常(あちら)だ。
西住みほにとっての、かつての理想。
友達がいて、■■道がない世界。
嘘の世界、架空の世界、データの世界。
そこから覚めればどうなるか。
知っていた。分かっていた。
聖■は全ての知識を授けてくれたから。
マ■ター、サー■ァント、魔■。
なに一つ理解できないのに、理解させられた。
■杯によって、強制的に。
だからもう、
ルールは分かっている。
システムは把握している。
西住には、聖■戦争に参戦する資格がある。
あと必要なものはただ一つ。
この嘘の日常(ゆめ)から覚めようという決断ひとつ。
水中に沈んでいく鉄塊――戦車――を、西住は追いかける。
それは後悔なのだろうか。
今でも彼女には分からない。
ただ、脳裏に浮かぶ言葉が一つ。
『撃てば必中、守りは堅く、進む姿は乱れなし。
鉄の掟、鋼の心、それが西住流』
ああ、そうだった。
――撃てば必中。
そう在ろうとした。
――守りは堅く。
そう在ろうとした。
――進む姿は乱れなし。
そう在ろうとしていた。
――鉄の掟。
分かっていた。だけど……。
――鋼の心。
それだけは、それだけは、どうしても持つことが出来なかった。
「私は、たすけたい」
西住は鋼鉄に手を伸ばす。
そうして届く、やっと届く、瞬間。
全ての記憶が、弾けた。
――ね、名前で呼んでいい?
少しずつ、増えていく友達の名前。
――私、戦車道やります!!
いつかの、自身の決断。
――負けたら我が校はなくなるんだぞ!!
そして、唐突に知らされた真実。
「私は。そうだ、私は、あの時」
そして最後の記憶。
雪の進軍。
運命の準決勝。
後に引けない戦い。
追い詰められた教会の中で。
――これ、なんだろう?
拾い上げた十字の木片が。
「っ―――――――!」
流れこむ記憶の奔流に、少女は叫び声をあげながら目を覚ました。
▼ ▼ ▼
その後、どうやって保健室にたどり着いたのかは分からない。
ただ、授業中に椅子から転げ落ちた西住を覗き込むクラスメイトの顔は誰一人として記憶になく。
ああ、やっぱりこっちが夢だったのかと、改めて自覚ことだけは記憶していた。
頭が割れるような頭痛と、夢見るようなN■C達の目から逃れる為に、
教室を飛び出し、そうして、たどり着いた保健室には誰もいなかった。
ベッドに潜り込み、体を丸める。
全身が気怠い。
体が何かと繋がっていて、それに力が吸い取られていくように。
――サー■ァントの召喚が行われかけている。
水に沈むの夢の中でだけで維持できた記憶が今も在ることに驚きはない。
もう、目覚めかけていることを自覚しているから。
今は沈む夢よりも、孤独な日常(ゆめ)の方が怖かった。
真ん中のベッドで左右を見ても、あの日一緒に来てくれた友達はいない。
布団にくるまり、目を閉じる。
そうすればまたあの夢の世界に行くのだと信じて。
▼ ▼ ▼
時に、其れは夢を見る。
一面赤に染まった空の下。
硝煙の匂いが充満し、炎が大地を覆い尽くす。
呆気にとられて、少女は停止する。
その夢はいつも見る夢とは違った。
冷たい水中とは真逆の、熱く激しい、これは炎に焼かれる鋼鉄の夢だった。
熱が、頬をかすめていく。
漂う大量の血の匂い。
耳に聞こえる音は、全て凄惨一色だ。
剣を突き刺す音。
銃弾が撃ち込まれる音。
そして、放たれる砲の轟音。
赤い空の下。
破壊、破壊、破壊の繰り返しが行われる無限の悪夢。
それは戦争。
西住みほの知る戦いとは、似ているようで全く違う。
この赤い夢は、少女の知らない本物の戦火だった。
直感的に理解する。
誰かの夢を、自分は今、見ている。
誰かの、心を覗いている。
西住みほの知らない誰かの。
戦い続けた誰かの、殺し続けた誰かの。
――かつて英雄と呼ばれた、一人の男が見た夢を。
それは、終焉を望む記憶。
駆け抜けた戦場。辿り着いたと夢想した安息。
この手にしたと信じていた栄光は、次の戦場に臨む起点でしかなかったという愚かしさ。
要らない。もうあれは要らない。
血の赤も、骨の白も、焼け爛れる肉の黒も腹から噴き出る臓腑の灰も。
銃剣の煌き弾丸のメタル。軋む戦車の振動に塹壕の饐えた匂い。
避けられぬなら今一度だけ、また全霊をもって殺戮するしか術はなく。
「俺は繰り返す俺を殺さぬ限り終われない」
▼ ▼ ▼
そうして、少女は夢から浮上した。
体を起こし周囲を見回す。
いつの間にか自らの服装は女子高の制服から戦車搭乗服(パンツァージャケット)へと変わっており。
保健室だった部屋の雰囲気も、ガラリと変化していた。
いつの間に夜になっていたのだろう、窓から差し込む青白い月の光。
電子的な煌きが室内の壁を照らし、水槽の内側ような、どこか幻想的な景色になっている。
静謐に染められた冷たい部屋は、少しだけ、牢屋に似ていた。
異常を発露した世界に、しかし、西住は驚かない。
何故ならこの場所は最初から異常だった。
これが、本来の姿なのだ。
招かれた時、最初に教えられたことを思い出しただけ。
そして何より、今は思考がいっぱいになっていたから。
見回した部屋の隅に見つけた―――
「―――」
『鋼鉄』の姿に。
鋼の心。
少女がどうしても手に入れられなかった物の、具現に。
部屋の隅、足を投げ出して座る漆黒の壮漢。
少女の前に、男は一人、そこに居た。
一分の隙も無く着こなした黒い軍装、その内側にある極限まで鍛え上げられた肉体は鋼と形容するに相応しい。
古代の彫刻の如き芸術性と、荒ぶる武威の完璧なる融合が在った。
そして奈落のように暗い眼は、どこまでも人間味のない冷たさを感じさせ、それはさながら機械のような―――
「あなたは……」
見えない力に背を押されるように、少女は立ち上がっていた。
頭痛は既に無い、意識はクリアだ。
ただ全身の生命力が常に消えていくような感覚に襲われている。
何よりも、突如現れた漆黒の男が恐ろしくないかと聞かれたら嘘になる。
それでも体が勝手に動く。
ゆっくりと、ゆっくりと、おそるおそる歩いて、男の目の前に、立った。
――だけど、思ったより怖くないのはなぜだろう。
西住は自問する。
きっと男が人間よりも、彼女が慣れ親しんだ鋼鉄に――『戦車』に、あまりにも似た印象を与えるからだろうか。
「―――」
男は黙して語らない。
座ったままピクリとも動かない。
死んでいるのだろうかとすら思えた。
だから少女は無意識にしゃがみこみ――
「―――――」
ぺたり、と。
男の胸元に、そっと手を置いた。
夢じゃない現実のいつか、古びた戦車に手を触れた、あの時のように。
「……よかった」
心臓の鼓動はない。
呼吸の音すら聞こえない。
だけど確かに、そこにはまだ熱が在ったから。
「まだ、生きてる……」
そう言って、顔を上げた時、初めて男と目が合った。
「――ぁ」
やっと冷静になった頭と、自分の行為と、今の状況を振り返り。
声を上げながら離れようとして。
「――問おう」
鉛のような重量を伴った声に、全身が硬直させられていた。
ここで初めて口を開いた男は少女の目を真っ直ぐに見つめている。
冷たい、冷たい眼の奥に、確かに宿る熱(せつじつ)を込めて。
「お前が俺のマスターか?」
その答えがきっと、最後の切符になるのだと、少女は正しく理解していた。
頷けば彼が生き抜いた戦場へ。
首を振ればもう一度、あの優しい夢の中へ。
此処がどういう場所かは聖杯に教えてもらっている。
だから自分がどれだけ弱者なのかも分かっている。
戦いになれば、きっと負けるだろう。
ここから先は本物の『戦場』だ。今まで体験してきた『嗜み』とは違う。
殺し殺されの鉄火場。
最後まで生き残れるとは、正直思えない。
だから、頷くか、首を振るか、どちらが己にとって正しい道なのか。
それは今更、明らか過ぎて、迷う余地もなく。
――いつか、自分の道に失望した。
だから降りた。ずっと歩んでいた道から逃げ出した。
そうして手に入れた安寧を。
「はい、私が貴方のマスターです。よろしくお願いします。
ライダーさん」
少女は再び、自らの意志で捨て去った。
痛む左手の甲。
刻まれた令呪が誓いの証。
――いつか、もう一度、進むと決めた道があった。
友達が出来て、仲間が出来て、大切なものが出来た。
共に、勝ちたいと願った。
だけどあの日、雪の降る準決勝、圧倒的劣勢、追い詰められた教会で迫る敗北の最中、誰かが言った。
『ここで負ければ終わり』だと。
もう、おしまいなのだと。
その時、偶然掴んだ木片に、いったい何を願ったのか、忘れない。
「まだ、終わりたくない」
一度は逃げ出した道でも、それでも、ここで終わりたくない。
終わらせたくない。
そして――
「まだ、続けたいんです」
だからもう、ここに居ちゃいけないと。
夢から覚めて、あの場所に戻らなくちゃと、強く思う。
「帰るために、お願いします。私に力を貸してください」
頭を下げて、少女は自らの従者(サーヴァント)に願う。
殺したくはない。
戦いたくもない。
だけど、帰りたいから。
『続けたい』から、手を貸して欲しいのだと。
そんな、少女の、ちっぽけな願いに、
「――了解(ヤヴォール)。マスター」
漆黒の男は応えた。
「聖槍十三騎士団黒円卓第七位ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン。
――お前の願い、必ず叶えよう」
暗い瞳の奥に、赤く苛烈な、戦場の景色を映しながら。
彼はその、誓いと共に。
「だからマスター。お前は――」
ただ一つの、彼の渇望(ねがい)を口にした。
「俺に唯一無二の終焉をくれ」
▼ ▼ ▼
実のところ少女は正しく理解していた。
自らの脆弱さ。
出自が魔術師の家計ではないどころか、
そもそも魔術の片鱗さえ存在しない世界から招かれた『西住みほ』は、マスターとして限りなく無適正。
魔力供給という、聖杯戦争で求められるもっとも重要な役割において、彼女は致命的な欠陥を抱えている。
身の丈に合った弱いサーヴァントを呼び出せば、その弱さをカバーできず敗死する。
かといって単に強いサーヴァントを呼び出せば、その強さを扱いきれず結果は同じだ。
この場所に呼ばれた時点で詰み。生き残る見込みはほぼ無い。
最弱のマスターと言って過言ではないだろう。
勝ち目など、やはり無いのだろう、と。
しかし実のところ、少女はまだ理解していなかった。
自らが何を呼び出してしまったのかを。
その圧倒的に他とズレた強さの質を。
純粋に、純真に、『終わり』のみを求めた彼の宝具(そうぞう)が、何を現出させるのかを。
―――終焉の幕引き(デウス・エクス・マキナ)。
全てに幕を引く渇望の具現。
『聖杯戦争の根幹』すら破壊可能の異端。
剣呑極まりない、ご都合主義の機械仕掛けが今、少女のちっぽけな願いを、不可能な願いを叶えるために起動する。
それは、さながら戦車進軍の如く。
―――パンツァー・フォー。
少女は『続ける』為に。
男は『終わらせる』為に。
――この時。
今宵この場所で、世界を滅ぼす一組の主従(レギオン)が胎動を開始した。
そのことを知る者は、まだ一人も存在しない。
【クラス】
ライダー
【真名】
ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン@Dies irae ~Amantes amentes~
【パラメーター】
筋力B(A+) 耐久C(B+) 敏捷D(C+) 魔力D(B+) 幸運D(C) 宝具EX
※マスターからの魔力供給が微弱な為、宝具以外の全ステータスが一段階から二段階程ダウンしている。
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
本来はC相当のランクを持つが、マスターの魔力供給が微弱な為このランクに落ちている。
騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン(以降『マキナ』と表記)にとっては、彼自身が騎乗する宝具(せいいぶつ)そのものである。
スキル自体のランクはライダーとしては低いものの、黄金の獣を除き聖遺物との最高の融和性を誇る彼は、
誰よりも自身の体を駆動させることを得手とする。
【保有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
守護騎士:E
他者を守る時、一時的に防御力を上昇させる。
かつて英雄だったマキナは国を、民を、守るために戦った。
しかしその記憶は既に希薄であるためランクは低い。
鋼鉄の腕:A
機械の肉体。戦闘続行と勇猛のスキルを複合したような特性を持つスキル。
彼はその機械の肉体により、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。同時に精神干渉を無効化し、格闘ダメージを向上させる。
【宝具】
『機神・鋼化英雄(デウス・エクス・マキナ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
マキナの聖遺物であり、彼そのもの。
その素体は彼が生前に搭乗していたティーゲル戦車。そのため彼の皮一枚下からは完全な機械である。
第二次大戦末期にヴェヴェルスブルク城で行われた万人規模の魂の殺し合い、蟲毒において、
他の魂を全て殺害・吸収した最後の生き残りである魂、その片割れを利用して形作られた、聖遺物であり生体兵器。
内部には、蟲毒の勝者であるマキナの人格が個我として存在している。
総数六万以上もの魂を内包した聖遺物であり、特殊発現型である彼はこれを常時全身に展開している。
前述の通り、彼自身が宝具であり、彼の肉体による攻撃は全て、後述する『渇望』の効果がある程度付随する。
一切の対物対魔対属性防御を無視して貫通する鋼の拳。
マキナの攻撃には、如何なる盾も鎧も意味を為さない。
『人世界・終焉変生(Midgardr Volsunga Saga)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
エイヴィヒカイトにおける創造位階。
「唯一無二の終焉をもって自らの生を終わらせたい」
というマキナの渇望が具現した、彼自身を終焉の極点へと変生させる求道型の究極である。
己の存在を死そのものと化し、触れた者に死を与える。
誕生して一秒でも時間を経ていたものならば、物質・非物質を問わず、例え概念であろうともあらゆるものの歴史に強制的に幕を引く。
この状態のマキナの拳が壊すのは生物も器物も知識も概念も等しく内包している時間、積み上げた物語という歩みと、その道である歴史そのもの。
如何なるものであれ生誕より僅かでも時間が経過している限り、たとえコンマ百秒以下であっても、その歴史を粉砕する。ゆえに防御が絶対に不可能な文字通りの一撃必殺。
曰く、「幕引きの一撃」。
一撃一撃が正しく必殺。
その上、何発でも連射可能。
攻勢に出る限り、黒騎士(ニグレド)は無敵である。
しかし現状、マスターの魔力供給が微弱な為、この宝具の使用は極力控えることが推奨される。
仮に使用した場合、使用期間を極短時間以内に抑えなければ、急激な魔力消費によりマスターの肉体に著しい悪影響を与え、最悪の場合死に至らしめることになりかねない。
それほどにこの宝具は規格外であり、同時にマスターの素養が低いことを意味している。
【weapon】
「機神・鋼化英雄」
前述した彼の宝具と同名の彼の肉体。
ライダーのクラスである彼が繰る、彼そのものたる鋼鉄の戦車である。
エイヴィヒカイトの摂理において特殊発現型である彼は常時形成位階であり、この武装を展開している。
あくまで彼の内側で渦巻く理の片鱗であるためか、常時展開されているにも拘らずこの状態では魔力消費がほぼ無い。
非常に燃費の良い武装と言える。
【人物背景】
聖槍十三騎士団黒円卓第七位・大隊長、ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン。
筋骨隆々とした体に無精髭を生やした寡黙な男。重戦車を思わせるような鋼鉄の戦士。
無駄な戦いを嫌い殺し合いもあまり好まないが、戦いにおける確かな矜持を持ち合わせる在り方はまさしく『英雄』。
「黒騎士(ニグレド)」の称号を持つ黒円卓幹部格、近衛三騎士、大隊長の一人。
騎士団員には専ら「マキナ」あるいは「マキナ卿」と呼ばれる。
黒円卓結成の際、第七の席・天秤の座が埋まらなかったことから副首領メルクリウスが首領ラインハルトの「城」の内に存在した魂たちを殺し合わせて作り出された存在。
蠱毒の壺の中で勝ち残った最後の魂。
彼から分たれたもう1つはメルクリウスが手を加え、ツァラトゥストラとなった、故にツァラトゥストラを唯一無二の戦友と見なし「兄弟」と呼ぶ。
死者であり、死を奪われた彼は、ただひたすらに自らの「唯一絶対の死」を求めており、死者の生を否定し唯一至高の終焉を尊んでいる。
しかし、その身はラインハルトの戦奴として無限に甦るため彼の求める死の安息を得ることができない。
自らの兄弟たるツァラトゥストラとの全力の戦いの果てに至高の終焉を得るため、彼は戦奴の身となり終焉の時を待ち続けていた。
それは聖杯によって英雄として呼び出されたとしても同様。
繰り返される英霊召喚のシステムは彼の渇望たる「唯一絶対の死」を冒涜しており、戦奴の身と状況を全く同じくする。
解放される為ならば、たとえ聖杯戦争の根幹を破壊しても構わない意思を持つ。
彼は彼の渇望の為、絶対にこの戦争で死ぬわけにはいかず、その先に在る聖戦、至高の終焉を目指し戦い続ける。
なお生前の記憶はほぼ残っておらず、既に自分の名前すら覚えていない。
ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンとは単なる称号である。
つまり彼には今の彼となる以前の名、真の真名とも言うべき名が存在するはずだが、彼自身が忘却しているためかマスターにさえそれを読み取る事は出来ない。
転じて、現在の真名が看破されても然したる不都合が無いという利点になっている。
【サーヴァントとしての願い】
唯一無二の終焉によって、死者としての生を終える。
【基本戦術、運用法、方針】
自らを騎乗物とし徒手空拳で戦闘を行う彼は、ライダーのクラスとしては少々異質な存在と言えるだろう。
彼は戦場における重戦車。人型の戦争兵器である。
現在は著しく減衰しているが、ステータスもそれに伴って本来は非常に戦闘向きなものとなっている。
あまりに剣呑すぎる宝具と相まって、攻勢に出る分には基本無敵と言って相違ない。
単純に敵へぶつけるだけでも相応の被害を見込めるが、現在のマスターがその運用法を実践した場合、長くもたないことは明白。
ではいかに彼を運用するのか。それこそが、主の腕の見せ所であろう。
方針は一つ。マスターを守護し、生存すること。
英霊という戦奴の鎖から解放される。
その為ならば、聖杯戦争そのものを終焉させることを厭わない。
【マスター】
西住みほ@ガールズ&パンツァー
【参加方法】
全国大会準決勝プラウダ高戦時。
圧倒的劣勢の際に立てこもった教会の中にて、拾い上げた『ゴフェルの木片』により半強制的に参戦させられた。
【マスターとしての願い】
元の世界に帰り、友達と戦車道を続けたい。
【weapon】
「戦車(パンツァー)」
彼女が元居た場所で慣れ親しんだ武装にして装甲。
走る鋼鉄の塊。
元は第一次世界大戦に編み出された塹壕突破を目的とした戦闘車両。
そこから第二次世界大戦に渡り、様々な形状の戦車が開発され、活躍していった。
キャタピラにて力強い無限軌道を実現し、弾丸を弾き返す鋼の装甲を纏い、そして一撃必殺の砲火を撃ち放つ。
その姿は正に陸戦の華。
戦車道の家元の出身たる彼女は、その戦術指揮に非常に長けている。
この聖杯戦争における彼女の『戦車』が一体何であるか、それは語るまでもないだろう。
【能力・技能】
魔術師としての適性は極端なまでに低レベル。
魔術の血統に生まれなかった事、彼女の居た世界観が魔術から遠いところに在った事などが起因している。
その為、マスターとして最も大事な役割である『魔力供給』が覚束ないという、致命的な欠点を晒している。
現状では自分で自分を守る手段も乏しく、サーヴァントへの魔的な援護も微弱な魔力供給で手一杯という有様。
端的に言って足を引っ張っている状態であるが、彼女が完全に無力なマスターなのかと問われればそうではない。
彼女の真価は指揮官および軍師の適性として発揮される。
元居た世界のでの乙女の嗜み『戦車道』にて、
集団戦の判断力、戦術眼において抜きんでたものを持ち、その卓越した指揮力を発揮してきた。
彼女以外全員が戦車道素人という状態の大洗女子学園が、全国大会準決勝まで駒を進め得たのは偏に彼女の指揮あってのこと。
時に冷静に、時に思い切った戦術で彼女は劣勢を覆す。
戦車道名家西住流の次女としての経験だけでなく、本人の才も含めた手腕。
しかし彼女の戦術は本来の西住流から見れば邪道らしく、本人は自分の戦車道を見つけたいと願っている。
曰く、みんなで勝利する戦車道。
力を合わせられる仲間(チーム)が集った時、彼女の秘めたる力、そして恐ろしさは初めて、敵へと発揮されるだろう。
総じて、黒騎士(ニグレド)の主としては少々荷が勝ちすぎている感は否めないが、
同時にこと『戦車』を扱うにおいて、彼女以上の手腕を見せられる者はそう居ない。
【人物背景】
戦車を用いた『戦車道』と呼ばれる武道が女子のたしなみの一つとされ、競技として発展している世界出身。
高校2年生の16歳。誕生日は10月23日、てんびん座、血液型はA型。
熊本県熊本市出身。茨城県立大洗女子学園 あんこうチーム<Ⅳ号戦車D型>戦車長。大洗女子学園唯一の戦車道経験者であり、隊長も務める。
引っ込み思案で人見知りだが、誰よりも友達想い。
戦車道以外では、電柱にぶつかったり、机から落としたものを拾おうとしてモノが机やら引き出しやらからばらばら落ちるなど不器用でドジっ娘の面がある。
座右の銘は、「友情は瞬間が咲かせる花であり、時間が実らせる果実である(アウグスト・フォン・コッツェブー)」
由緒正しい戦車道の名家である西住家(西住流家元)の出身。母は西住しほ、姉に西住まほがいる。
元は名門校黒森峰女学園で副隊長を務めていたが、とある事件が切っ掛けで戦車にトラウマを抱え、戦車道を避けて茨城県立大洗女子学園に転校してくる。
しかしみほの出自を知っている生徒会により選択必修科目として戦車道の選択を余儀なくされ、一度は失意するもの、友人である沙織と華の影響もあり再び戦車道へと向き合うことを決意。
戦車に乗り込むといつもの頼りない感じから一転、人が変わったように凛々しい優秀な戦車長となる。
【方針】
生存重視、可能なら仲間を集めたい。
最終更新:2014年07月15日 22:44