ツングース諸語

世界の言語大紹介
ユーラシア大陸極東部、ロシアのシベリア地域、アムール川流域、沿岸州、樺太から中国の東北部(黒竜江省や内モンゴル自治区フルンボイルなど)に分布する言語。人口およそ10万人。モンゴル諸語チュルク諸語とともにアルタイ諸言語を成すアルタイ型言語。単に「ツングース語」と呼ぶことも。



ツングース諸語に含まれる言語

以下の4種類に分類される。

エウェン語(ラムート語)
エウェンキー語(オロチョン語)
ソロン語(エウェンク語)
ネギダール語

ウデヘ語
オロチ語

ナーナイ語(ゴリド語 ヘジェン語)
オルチャ語(ウルチャ語 ウリチ語)
ウイルタ語(オロッコ語)

マンジュ語(満洲語) シベ語
女真語

Ⅰ エウェン語・エウェンキー語を併せてもともとツングース語と呼ばれていた。現在のツングース諸語の中では一番広い範囲で使用されている
Ⅱ ロシア沿岸州で使用されている言語
Ⅲ 樺太のウイルタ語はかつて北海道にも話し手がいた。
Ⅳ マンジュ語はかつて中国の清王朝の主要な言語だった。が、現在では使用者はごく少ない。その一方言であるシベ語が、現在も中国新疆で使用されている。



文字使用

ツングース諸語の中では唯一マンジュ語に、マンジュ文字で書かれる伝統的な文字言語がある。マンジュ文字はモンゴル文字を改良して作られたもの。
その他の言語では、比較的近代になってから対応する文字言語を普及させようと言う試みがある。ロシア地域ではロシア文字を基にした正書法が作られている言語もある。



文法的特徴

アルタイ型言語である
語順や、接尾辞をつける仕組みなどは日本語によく似ている。
母音調和の法則がある。
擬音語や擬態語が豊富に使用されている。

◆所属接辞
日本語でいう「の」の表現方法に、日本語との違いを感じることができる。

日本語の場合:

 私-の 手

(所有する側に属格「の」がついている)

 私 手-(私の)
 mini ngaala-bi

(所有物の側に、所有されていることを示す「所有接辞」がつく)
※ただしこの例では「私」も「私の」になって、意味的にダブっている(「私の 手-(私の)」)

ゆえに属格がない言語がほとんど。

譲渡可能
さらにこうした「の」を表現するときに、それが「人にあげることができるかどうか(譲渡可能性)」を区別しなければならない。

 私 手-(私の)  「私の手」
 mini ngaala-bi

「私の手」は通常、体の一部なので人にあげることはできない。この場合は「譲渡不可能」なので特別な接辞は不要。

 私 魚-(譲渡可能)-(私の)  「私の魚」
 mini sungdatta-ngu-bi

「私の魚」はあげようと思えば他の人にあげられるものである。「譲渡可能」なので、-nguという接辞が必要になる。

◆格の一致
名詞を修飾する形容詞は、名詞と同じ格接辞をつける。

 aya-wa kniga-wa buujem
 よい-を 本-を あげよう

「よい本」aya kniga に「を」を付けるとき、aya-wa kniga-wa「よいを本を」と両方に「を」を付けることになる。

◆述語には、主語の人称にあわせて人称接辞を付す。(≒人称変化

◆指定格(出現動詞の目的語)

格の例
エウェン語 エウェンキー語 ウデヘ語 ナーナイ語 マンジュ語
主格 - - - - -
属格 -i
対格 -w -wa -ba -ba -be
不定対格 -ya
指定格 -ga -na -go
与格 -du -duu -du -do -de
方向格 -tki -tkii -tigi -ci
処格 -la -laa -la -la
奪格 -duk -duk -digi -jiaji -ci
離格 -gic -git
方向場所格 -kla -klaa
道具格 -c -t -ji -ji -i

◆命令形には近未来命令と遠未来命令がある

◆動詞の否定には否定動詞を用いる。
否定動詞-形動詞-人称 本動詞-形動詞 
という形になる。
最終更新:2015年05月17日 12:26