1.どこにでも居るサラリーマンの青年が、ある日、通勤中に腹痛に襲われる
2.この電車を降りてしまうと大事な打ち合わせに遅れてしまう、しかし我慢するには限界がある
3.そんな極限状態で、彼は自分とは何か、使命とは何かを考える
俺はどこでもいる、ごく普通のサラリーマンである。会社でしっぽりと部長に無理難題をひーひーと言わせられながらも、自宅に帰れば、愛する妻と娘(7才)がいる。
俺はいつも通りに起きて、愛するハニーの手料理を食べて。元気100倍で、会社に向かう……、はずだった。
しかし、今日は違った。朝ご飯は愛する妻の手料理が、娘の覚えたての料理だった。
その料理は、朝から、ボリュームがある特大ハンバーグだった。
まぁ、普通の日なら、その料理は難なく食べられた。でも、昨日は、部長とその仕事仲間と飲み会で、散々飲まされたのだ。
『お父さん、これ食べて!!あたしがね、ママに教わったお料理なの?』
と、下から目線で、キュンキュンさせられる笑顔には敵わなかった。
まぁ、これは食えるものだ。しかし、ハンバーグは主に夕食に頂くものだ。
「おぉ!!これは、自分で作ってたのかい。ユキちゃん、お父さん会社で自慢しちゃうぞ」
俺は、昨日の飲み会の事を忘れ、happyな気分で、そのハンバーグを平らげた。
「行ってらっしゃい、ダーリン♪今日は早く帰れるでしょ、なら、夕飯までには帰ってきてね」と、マイハニーと挨拶を交わし、
「今日は、早く帰るよ、ハニー」と、マイハニーと軽くチュっとキスを交わす。
ここまでは、前日譚。
本当の地獄を見るのは、電車の中だ。
そう、電車に揺られた俺は、驚異的な腹痛が襲いかかってくる。
その原因は、言うまでもない。朝ご飯に、愛しき娘の作った初めての料理。それはお手製特大ハンバーグだ。
しかし、ふと脳裏に過るのは、今朝の大事な打ち合わせだった。
前日、部長は言っていた。
『遅れるものは、真夜中まで始末書を書いてもらう』・
この電車を降りてしまうと大事な打ち合わせに遅れてしまう。しかし、ここで我慢すれば、あぁ、想像もしたくない結果になる。
そして、俺は次の駅に降りるまで、腹痛と我慢比べををしながら、極限状態で冷静に考える。
自分とは何か、使命とは何か、を。
PM 11:45
「ごめんなさい、ダーリン」
流石に夕飯に間に合わなかった俺に呆れ、寝てしまっただろうと、こっそりドアを開けると、愛しきマイハニーが玄関で正座して待っていた。
何故、ハニーが謝るんだ!?
と、謝罪したハニーに「何故、ハニーが謝る義理がある。俺こそ、夕飯に間に合わなくて、すまん」
と、その場に土下座する。すると、ハニーが俺の手を取り、顔を近づけ、キスをされる。
「冷静になって。今朝のユキのハンバーグだけど、アレには、隠し味に、牛乳とプルーンのダブルパンチが仕込まれていたの。監督失格ね、私が謝る立場なの。ごめんね、ダーリン」
それを聞いた時、朝の電車を思い出す。
――――
――
-
俺は、電車を降りる事にした。
そんなこと、1分も考えれば、答えに辿り着くほど簡単だ。
ここで、汚物をパンツに放てば、電車の人は勿論の事、打ち合わせに間に合っても、会社で、退職するで、俺を周りが汚物のように白い目で敬遠されるだろう。
俺は、打ち合わせより、人間としての在り方を選んだ。
後に、ついさっきまで始末書に追われていた。
それでも、自宅に帰って、愛しきハニーの笑顔で、それも無かったかのように、また今日も一日が終わっていく。
Q. E. D.(証明終了)
最終更新:2014年02月10日 18:40