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Melodia〜僕に捧げるIの歌〜」(2012/12/27 (木) 16:39:40) の最新版変更点

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 □ 青春に君の死は―――――?  □ 今回の件、『バトルロワイアル』という言葉に僕は無論のこと馴染みはない。 つい先ほど聞いたばかりで馴染めというのが無理な話で、その内容もその居心地の悪さを促進しているだろう。 『バトルロワイアル』。 簡単に言っちまえばそれは殺し合い。 殺し合い、人と人とが、ないしは人と怪異が互いに互いを殺し合う、ただそれだけのこと。 それだけという言葉を使えば中々に危機感が衰えてしまっているがこの場合の「それだけ」とは言ってることが単純、といってることに対してだ。 まあ。 内容については言うまでもなく、意味不明だ。意味朦朧、魑魅魍魎。 これまでの人生に置いて僕に人の死というものが全く縁の無い代物という訳でもないけれど。 正直に言ってなによりも先行する気持ちと言ったら「理解不能」。 冷静でいられるかと言ったら勿論嘘になるだろうし、混乱していないと言えばそれはれっきとした戯言だろう。 もう一度言うが、僕は理解に追い付いていないのだ。 別に悲しんでいる訳でもなく、憤っている訳でもなく。 喜ぶわけないし、可笑しいわけでもない。 ただ呆然と、愕然と突っ立っている、といってもさほど間違いじゃない。 せめてもの救いとして、僕は運が悪かったから。 そう、不運の塊だ。だから僕は参加させられたのだと思いたい。 けれどその救いの求めも虚しく、明らかに確信犯だということは残念ながら容易に考えついた。 かつて蟹に行き遭った少女、戦場ヶ原ひたぎ。 かつて猿に願った少女、神原駿河。 かつて蛇に巻きつかれた少女、千石撫子。 かつて猫に魅せられた少女、羽川翼。 かつて人と巡り遭った少女、忍野忍。 その少女ら。 僕の知り合いが一同に固まって参加している時点でもうその可能性は低い。 どう考えたところで、落ちこぼれであるところの僕には狙われたという可能性しか見取れなかった。 無論のこと、僕には心当たりがあるわけではない。 そりゃあ最近は自由奔放すぎた一面こそ見受けられたかもしれないが、それもそこまでだ。 異常事態、非常事態。 一度は投げ出した命とはいえども、一度は放り出した生とはいえども。 惜しくないと言えば答えはノー。 少なからず僕は今のこの生活は好きであるし失いたいとは思わない。 だがそれでも事態は進んでいくのだ。 目先の見えない物語。 足跡が消えてく物語。 そんな物語は今ここに確かに存在していて、進行していた。 現在進行形、決して能動的な物語ではなく受動的な形であれども僕が巻き込まれた物語。 後日談でもないしオチでもない。どころか、いつもで言うところの零の文ですらない。 それでも。 それでもなお。 僕はこの物語のことを早々と語ろうと思う。 それはいわば、僕は一語り部としての責任がありこれもまた義務であろうと僕は思い至る。 いまだ終わってもいない物語を。 そして始まってもいない物語を。 いずれにしたところで。 僕の命が、物語を語り尽くせるまであるかなんて、分からないのだけど。 それでも良ければ。 自己満足として、僕は語ろう。  □ 締めというか今回のオチ。 始まって数分、何故だか僕は寝ていた。 あの縁と紫の塊であるところの学習塾跡の廃墟で。 「あー………」 僕の声はむなしく廃墟に響いた。 なんかあれは夢だったのかなあ。 よくわかんない学校に呼び出され、首輪が爆発して、人が死んだなんて。 夢だったのか、幻だったのか。 いや。 「そりゃないな」 大体あんな胸糞悪いくせに現実味がいやにびったりと纏わりつく夢なんて見てたまるか。 じゃあこれは一体全体なんだというと、答えは決まっている。 これは現実だ。 現実的でも、現実味でもなく正真正銘の現実だった。 ならば次の議題だ。 何故、この建物がここにあるのか、ということなのだが。 まあ、簡単に言うなれば。 先ほど僕が意識を手放していった原因と直結するんじゃないかな。 魔法の様な、なにか。 言うならば――――怪異の様ななにか。 「怪異………か」 ここにいると、何故だが八九寺のことを思い出す。 僕が最後に『くらやみ』と対面した場所だから。 瞳を閉じて、思い耽る。 確か少女と幼女と童女の三連コンボで戯れていた時。 それは突然現れて、忍と僕の結びを引き千切り、そして八九寺の消失の最もたる間接的要因となってしまった。 それがなにかと聞かれたところでやはり僕にはどう答えればいいか戸惑う。 あの人に、僕をこよみんと呼ぶあの人に色々教えて貰ったちゃあ貰ったが、よく理解していない。 そんな事を考えていた場合でも無かったような気がしたから。 まあ。 その嫌な胸騒ぎも見事的中して今のように色々と無念でハチャメチャで不条理な展開が続いている訳だけど。 そういえば、あの主催者であろう三人が言ってたな。 願いを叶える、とかなんとか。 だったら「八九寺真宵の復活」を願えば、また八九寺に遭えるのだろうか。 僕を好きだと言ってくれたあいつに逢えるのだろうか。 とはいえ、願うつもりもないのだけれど。 それは意を決して自らを犠牲にしたあいつに対して失礼だ。 失礼、噛みました。程度では済まされない。 と、僕は寝がえりを打ちながらぼんやりとそんな事を考える。 はあ。 全くどうしたものか。これから。 まずはみんなと合流して無事を確かめる、というのが先決だな。 …………ていうよりかはみんな殺し合いなんかに乗ってないよな? まあ千石は乗るわけないよ、あんな性格だし。むしろ僕みたいな紳士じゃない人に襲われないか心配だ。 千石が絶滅しちゃ―――やっぱだめだよな。 羽川は難しいところだ。 勿論彼女を信じたい気持ちはある、だから「普通状態」の彼女に対してはさほど心配を抱いてはいない。 だが、一つ忘れちゃいけないのがあの猫。「ブラック羽川」。 ストレスの権化。ストレスの放出口。 彼女がこの殺し合いに巻き込まれたことで、再度ストレスが溜まるなんて話、ないわけではないだろう。 そこからなにかが発展することは逃れられないかもしれない。あいつ馬鹿だから何やるか分かんないし。 神原は…………どうなんだろうな。 あいつは変に畏まった奴だし、下手なことを起こす奴だなんて毛ほども思わないけど。 万が一のことを考えて、戦場ヶ原の為に善からぬことを起こそうとしている、なんて事はあるかもしれない。 さながら、五月の下旬に起きた一件の如く。 忍に関しては大丈夫だろ。 あいつにはそんな力は既にない。むしろ僕が死んであいつが元に戻る―――なんてことは避けなければならない。 最後に。 戦場ヶ原ひたぎ。 僕の恋人。 彼女はどうなんだろうか。 キャラとしての切れが無くなった今なら大丈夫なんだろうか。 だけど今だって時折見せる、毒舌時代の名残が蔓延しないだろうか。 それが心配だ。 まあ。 何はともあれ、僕が動かないことには意味がないだろう。 だから僕は動こうと思う。 ……………。 ああ、なんかなー。 起きるって案外大変なんだな。 吸血鬼って夜行性だけど今の僕はペアリングも切れてることも相重なり、そんな言うほどじゃないんだよな。 こんなときに、役に立たないんだな。あの火炎姉妹。 たまにはさ。「いつまで寝てるの? お兄ちゃん。起きてよう」なんて…………。 「いつまで寝てるのよ、死ね」 その声に驚き、目を見開くと。 僕の頭に鉈が振りかざされていた。 「うおおおっ!」 飛び跳ねる様にそれをかわす僕。 いや、かわし切れずに髪の毛の少しが持ってかれた。 そしてその髪の毛を散らしながら鉈の先端は床を突き刺した。 心臓がバクバクと言っている。 よ、よかった……。生きてる。 見れば、そこには見知らぬセーラーを着た女の子が呆れた表情で僕を見ていた。 凍てつくような鋭き眼。やだな、興奮するじゃねーか。 じゃなくてだな。 「お、おまえ何やってんだよ!? 見知らぬ僕を殺す気か!?」 「あんたが何回呼んでも起きないからでしょう。そんな奴一回死ねばいいんだわ。  せっかくこのあたしが起してやってんだから起きるべきなのよ、死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ」 「おまえなんかひでー横暴なキャラになってるぞ!? 何回死ねって言ったんだ!」 「死んだ世界戦線のジョークの応用よ。そのぐらい察しなさい」 「意味分かんねえよ!…………って、は? 死んだ?」 唐突なんだ。 おかしな子だとは感じたがまさかの電波か。 最近流行りの。 「成程ね、あなたも音無くんと同じく記憶がないのね」 と、言うが否や。 「じゃあ簡単に」 なんていって。 懇切丁寧、分かりやすく説明してくださったおかげで僕の頭はちんぷんかんぷんとなった。  □ 以下要約。 Q1:「死んだ世界戦線とは何?」 A1:「死んだ世界で神に抗うために作られた戦線名よ。………まあころころ変わるけどね」 Q2:「死んだ世界って?」 A2:「簡単に言うと死んだ人が行く世界、そこでは『死』って観念がないわ」 Q3:「具体的には?」 A3:「『死ぬ』という行為を行った人は数分もすれば元通りに再生するって感じかしら」 Q4:「それは僕の記憶と合致しないのですが?」 A4:「記憶喪失なんてことは割とあるものよ、さっき言った音無くんって人もそうだったし。…………ていうか今思ったけど声似てるわね」 Q5:「むしろ貴方が間違っているという可能性は?」 A5:「それはないわ、生前の世界から死後の世界に行くことはあっても死後の世界から生き返るのなんて恐らく不可能だわ。成仏するだけよ」 Q6:「根拠は?」 A6:「さっき、首輪爆発した時、さして時間を経たずして転送させたでしょ? あたしだったらそうはしないわ。    だってあたしの様な人間だっているんだし、本当に『死』を与えたいのなら時間をおくべきだったのよ。警告だってしてたし。あの男の人で」 Q7:「転送について何か心当たりは?」 A7:「あの天使のスキルを盗めばどうとでもできるわよ」 Q8:「ならば、あなたはこの『バトルロワイアル』の意図は何だと思いますか?」 A8:「胸糞悪い悪趣味な『遊び』ね。付き合ってられないわ」 Q9:「ではこの『バトルロワイアル』での当面の目的は?」 A9:「あの三人とそれにつながっている人を殺す。そして元の学校に戻るわ。あーあと仲間にも合流したいわね」 Q10:「では最後に貴方の仲間は誰?」 A10:「音無結弦くん、日向秀樹くん、椎名さん、えーと……一応直井文人くん、ね」 以上要約  □ あれだ。 簡潔にまとめると、 「僕は既に死んでいて、ここは死後の世界。そしてそこには『死』の概念がない」 とのご達し。 あれだな。よくわからない。 仲村曰く「そう言う人も偶にいるのよ」だって。 そりゃ僕という存在に『死』という概念は切っても切り離せないものだろうけど………。 それってありか? 理解する云々以前の問題として、それはいいのか? あり得るのか? 確かに僕は春休みに『死んで』いる。その時に死んだ世界とやらに行ったならまだ分かる。 だが、このタイムラグはなんだ? 僕の夏休みまでの生活はどうなったんだ? ……………さて、少し落ちこぼれの脳をフル稼働させてみよう。 パターン一。 八九寺真宵と類似するパターン。 幽霊パターン。 幽霊となって本来の人間には見えないしようとなっているが、 それこそ、怪異だか魔法だか天使の力やらでどうにかしたのだろう。 今僕の目の前に存在している。 パターン二。 阿良々木月火ちゃんと類似するパターン。 不死身パターン。 不死身だから死なないのは当たり前だ。 だが怪異を知らない彼女は、「死後の世界」という都合のいい世界を作り出して、 今現在まで生きてきたという、ある種の電波ちゃん。 しかし。 ふたつのどちらにしても言えることは、それは彼女一人の問題ではなく一つの学校を取り巻いていたということ。 だから僕はこう仮定づける。 例えばここに、「しので鳥」というある意味では馴染みのある「怪異」が彼女を蝕んでいた、ということとしましょう。 ですがそれでは彼女の言うような集団性が理屈付けれませんので、ここで「詐欺師」というものを挙げておきます。 いつかの千石の一件の如く、その「詐欺師」はありもしない「伝奇」を振りまき、その被害は一つの集団を巻き込んだものになったとさ。 その一人が彼女、仲村ゆりという少女でした。 うん、ここまでの理解度が限界だ。 要するに「怪異」の仕業ってことなのか? ……………ならば僕は働かなければならない。 理由なんて今さら必要ない。 女の子を救うのに理由なんていらないだろう。 まあ。 なんてわけで。 「まずは阿良々木くん。死んだ世界戦線に入らない?」 「ああ、是非入れさせてもらうよ」 少女の観察。 そして、できれば忍に解決してもらうとしよう。 こうして僕は、殺し合いへの抗いの第一歩を踏みこんでいった。 【B-5 塾の廃墟/未明】 【阿良々木暦@物語シリーズ】 【装備:不明】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:仲村ゆりと行動、ついでに観察 2:死んだ世界……ねえ 3:みんなとの合流、特に忍野忍、戦場ヶ原ひたぎを最優先 【備考】 ※鬼物語で八九寺真宵が成仏してからペアリングが戻る前までのどこか ※ペアリングが切れているため、吸血鬼性は限りなく低いです ※死後の世界について凡そ聞きました 【仲村ゆり@Angel Beats!】 【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:気にいらないから主催どもを殺す 2:阿良々木暦君と行動 3:みんなを探す 【備考】 ※ユイが消えるまでのどこか ※ここが死後の世界だということに思い至っていません ※怪異についてはまだ聞いていません 【鉈@ひぐらしのなく頃に】 林業や狩猟などの山林で働く人々の用途に適した刃物の類である。 一般的に斧、包丁、鎌、刀剣以外の大型刃物を総称して鉈という場合が多い。 竜宮レナが持ってる姿が印象的。 |[[皆の世界をまもるヒト]]|時系列|[[闇に濡れたCatastrophe]]| |[[それと便座カバー、それと……]]|投下順|[[生き抜く事/守り抜く事]]| |&color(cyan){START}|阿良々木暦|[[悠久の旅人〜Dear boys]]| |&color(cyan){START}|仲村ゆり|~|
 □ 青春に君の死は―――――?  □ 今回の件、『バトルロワイアル』という言葉に僕は無論のこと馴染みはない。 つい先ほど聞いたばかりで馴染めというのが無理な話で、その内容もその居心地の悪さを促進しているだろう。 『バトルロワイアル』。 簡単に言っちまえばそれは殺し合い。 殺し合い、人と人とが、ないしは人と怪異が互いに互いを殺し合う、ただそれだけのこと。 それだけという言葉を使えば中々に危機感が衰えてしまっているがこの場合の「それだけ」とは言ってることが単純、といってることに対してだ。 まあ。 内容については言うまでもなく、意味不明だ。意味朦朧、魑魅魍魎。 これまでの人生に置いて僕に人の死というものが全く縁の無い代物という訳でもないけれど。 正直に言ってなによりも先行する気持ちと言ったら「理解不能」。 冷静でいられるかと言ったら勿論嘘になるだろうし、混乱していないと言えばそれはれっきとした戯言だろう。 もう一度言うが、僕は理解に追い付いていないのだ。 別に悲しんでいる訳でもなく、憤っている訳でもなく。 喜ぶわけないし、可笑しいわけでもない。 ただ呆然と、愕然と突っ立っている、といってもさほど間違いじゃない。 せめてもの救いとして、僕は運が悪かったから。 そう、不運の塊だ。だから僕は参加させられたのだと思いたい。 けれどその救いの求めも虚しく、明らかに確信犯だということは残念ながら容易に考えついた。 かつて蟹に行き遭った少女、戦場ヶ原ひたぎ。 かつて猿に願った少女、神原駿河。 かつて蛇に巻きつかれた少女、千石撫子。 かつて猫に魅せられた少女、羽川翼。 かつて人と巡り遭った少女、忍野忍。 その少女ら。 僕の知り合いが一同に固まって参加している時点でもうその可能性は低い。 どう考えたところで、落ちこぼれであるところの僕には狙われたという可能性しか見取れなかった。 無論のこと、僕には心当たりがあるわけではない。 そりゃあ最近は自由奔放すぎた一面こそ見受けられたかもしれないが、それもそこまでだ。 異常事態、非常事態。 一度は投げ出した命とはいえども、一度は放り出した生とはいえども。 惜しくないと言えば答えはノー。 少なからず僕は今のこの生活は好きであるし失いたいとは思わない。 だがそれでも事態は進んでいくのだ。 目先の見えない物語。 足跡が消えてく物語。 そんな物語は今ここに確かに存在していて、進行していた。 現在進行形、決して能動的な物語ではなく受動的な形であれども僕が巻き込まれた物語。 後日談でもないしオチでもない。どころか、いつもで言うところの零の文ですらない。 それでも。 それでもなお。 僕はこの物語のことを早々と語ろうと思う。 それはいわば、僕は一語り部としての責任がありこれもまた義務であろうと僕は思い至る。 いまだ終わってもいない物語を。 そして始まってもいない物語を。 いずれにしたところで。 僕の命が、物語を語り尽くせるまであるかなんて、分からないのだけど。 それでも良ければ。 自己満足として、僕は語ろう。  □ 締めというか今回のオチ。 始まって数分、何故だか僕は寝ていた。 あの縁と紫の塊であるところの学習塾跡の廃墟で。 「あー………」 僕の声はむなしく廃墟に響いた。 なんかあれは夢だったのかなあ。 よくわかんない学校に呼び出され、首輪が爆発して、人が死んだなんて。 夢だったのか、幻だったのか。 いや。 「そりゃないな」 大体あんな胸糞悪いくせに現実味がいやにびったりと纏わりつく夢なんて見てたまるか。 じゃあこれは一体全体なんだというと、答えは決まっている。 これは現実だ。 現実的でも、現実味でもなく正真正銘の現実だった。 ならば次の議題だ。 何故、この建物がここにあるのか、ということなのだが。 まあ、簡単に言うなれば。 先ほど僕が意識を手放していった原因と直結するんじゃないかな。 魔法の様な、なにか。 言うならば――――怪異の様ななにか。 「怪異………か」 ここにいると、何故だが八九寺のことを思い出す。 僕が最後に『くらやみ』と対面した場所だから。 瞳を閉じて、思い耽る。 確か少女と幼女と童女の三連コンボで戯れていた時。 それは突然現れて、忍と僕の結びを引き千切り、そして八九寺の消失の最もたる間接的要因となってしまった。 それがなにかと聞かれたところでやはり僕にはどう答えればいいか戸惑う。 あの人に、僕をこよみんと呼ぶあの人に色々教えて貰ったちゃあ貰ったが、よく理解していない。 そんな事を考えていた場合でも無かったような気がしたから。 まあ。 その嫌な胸騒ぎも見事的中して今のように色々と無念でハチャメチャで不条理な展開が続いている訳だけど。 そういえば、あの主催者であろう三人が言ってたな。 願いを叶える、とかなんとか。 だったら「八九寺真宵の復活」を願えば、また八九寺に遭えるのだろうか。 僕を好きだと言ってくれたあいつに逢えるのだろうか。 とはいえ、願うつもりもないのだけれど。 それは意を決して自らを犠牲にしたあいつに対して失礼だ。 失礼、噛みました。程度では済まされない。 と、僕は寝がえりを打ちながらぼんやりとそんな事を考える。 はあ。 全くどうしたものか。これから。 まずはみんなと合流して無事を確かめる、というのが先決だな。 …………ていうよりかはみんな殺し合いなんかに乗ってないよな? まあ千石は乗るわけないよ、あんな性格だし。むしろ僕みたいな紳士じゃない人に襲われないか心配だ。 千石が絶滅しちゃ―――やっぱだめだよな。 羽川は難しいところだ。 勿論彼女を信じたい気持ちはある、だから「普通状態」の彼女に対してはさほど心配を抱いてはいない。 だが、一つ忘れちゃいけないのがあの猫。「ブラック羽川」。 ストレスの権化。ストレスの放出口。 彼女がこの殺し合いに巻き込まれたことで、再度ストレスが溜まるなんて話、ないわけではないだろう。 そこからなにかが発展することは逃れられないかもしれない。あいつ馬鹿だから何やるか分かんないし。 神原は…………どうなんだろうな。 あいつは変に畏まった奴だし、下手なことを起こす奴だなんて毛ほども思わないけど。 万が一のことを考えて、戦場ヶ原の為に善からぬことを起こそうとしている、なんて事はあるかもしれない。 さながら、五月の下旬に起きた一件の如く。 忍に関しては大丈夫だろ。 あいつにはそんな力は既にない。むしろ僕が死んであいつが元に戻る―――なんてことは避けなければならない。 最後に。 戦場ヶ原ひたぎ。 僕の恋人。 彼女はどうなんだろうか。 キャラとしての切れが無くなった今なら大丈夫なんだろうか。 だけど今だって時折見せる、毒舌時代の名残が蔓延しないだろうか。 それが心配だ。 まあ。 何はともあれ、僕が動かないことには意味がないだろう。 だから僕は動こうと思う。 ……………。 ああ、なんかなー。 起きるって案外大変なんだな。 吸血鬼って夜行性だけど今の僕はペアリングも切れてることも相重なり、そんな言うほどじゃないんだよな。 こんなときに、役に立たないんだな。あの火炎姉妹。 たまにはさ。「いつまで寝てるの? お兄ちゃん。起きてよう」なんて…………。 「いつまで寝てるのよ、死ね」 その声に驚き、目を見開くと。 僕の頭に鉈が振りかざされていた。 「うおおおっ!」 飛び跳ねる様にそれをかわす僕。 いや、かわし切れずに髪の毛の少しが持ってかれた。 そしてその髪の毛を散らしながら鉈の先端は床を突き刺した。 心臓がバクバクと言っている。 よ、よかった……。生きてる。 見れば、そこには見知らぬセーラーを着た女の子が呆れた表情で僕を見ていた。 凍てつくような鋭き眼。やだな、興奮するじゃねーか。 じゃなくてだな。 「お、おまえ何やってんだよ!? 見知らぬ僕を殺す気か!?」 「あんたが何回呼んでも起きないからでしょう。そんな奴一回死ねばいいんだわ。  せっかくこのあたしが起してやってんだから起きるべきなのよ、死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ」 「おまえなんかひでー横暴なキャラになってるぞ!? 何回死ねって言ったんだ!」 「死んだ世界戦線のジョークの応用よ。そのぐらい察しなさい」 「意味分かんねえよ!…………って、は? 死んだ?」 唐突なんだ。 おかしな子だとは感じたがまさかの電波か。 最近流行りの。 「成程ね、あなたも音無くんと同じく記憶がないのね」 と、言うが否や。 「じゃあ簡単に」 なんていって。 懇切丁寧、分かりやすく説明してくださったおかげで僕の頭はちんぷんかんぷんとなった。  □ 以下要約。 Q1:「死んだ世界戦線とは何?」 A1:「死んだ世界で神に抗うために作られた戦線名よ。………まあころころ変わるけどね」 Q2:「死んだ世界って?」 A2:「簡単に言うと死んだ人が行く世界、そこでは『死』って観念がないわ」 Q3:「具体的には?」 A3:「『死ぬ』という行為を行った人は数分もすれば元通りに再生するって感じかしら」 Q4:「それは僕の記憶と合致しないのですが?」 A4:「記憶喪失なんてことは割とあるものよ、さっき言った音無くんって人もそうだったし。…………ていうか今思ったけど声似てるわね」 Q5:「むしろ貴方が間違っているという可能性は?」 A5:「それはないわ、生前の世界から死後の世界に行くことはあっても死後の世界から生き返るのなんて恐らく不可能だわ。成仏するだけよ」 Q6:「根拠は?」 A6:「さっき、首輪爆発した時、さして時間を経たずして転送させたでしょ? あたしだったらそうはしないわ。    だってあたしの様な人間だっているんだし、本当に『死』を与えたいのなら時間をおくべきだったのよ。警告だってしてたし。あの男の人で」 Q7:「転送について何か心当たりは?」 A7:「あの天使のスキルを盗めばどうとでもできるわよ」 Q8:「ならば、あなたはこの『バトルロワイアル』の意図は何だと思いますか?」 A8:「胸糞悪い悪趣味な『遊び』ね。付き合ってられないわ」 Q9:「ではこの『バトルロワイアル』での当面の目的は?」 A9:「あの三人とそれにつながっている人を殺す。そして元の学校に戻るわ。あーあと仲間にも合流したいわね」 Q10:「では最後に貴方の仲間は誰?」 A10:「音無結弦くん、日向秀樹くん、椎名さん、えーと……一応直井文人くん、ね」 以上要約  □ あれだ。 簡潔にまとめると、 「僕は既に死んでいて、ここは死後の世界。そしてそこには『死』の概念がない」 とのご達し。 あれだな。よくわからない。 仲村曰く「そう言う人も偶にいるのよ」だって。 そりゃ僕という存在に『死』という概念は切っても切り離せないものだろうけど………。 それってありか? 理解する云々以前の問題として、それはいいのか? あり得るのか? 確かに僕は春休みに『死んで』いる。その時に死んだ世界とやらに行ったならまだ分かる。 だが、このタイムラグはなんだ? 僕の夏休みまでの生活はどうなったんだ? ……………さて、少し落ちこぼれの脳をフル稼働させてみよう。 パターン一。 八九寺真宵と類似するパターン。 幽霊パターン。 幽霊となって本来の人間には見えないしようとなっているが、 それこそ、怪異だか魔法だか天使の力やらでどうにかしたのだろう。 今僕の目の前に存在している。 パターン二。 阿良々木月火ちゃんと類似するパターン。 不死身パターン。 不死身だから死なないのは当たり前だ。 だが怪異を知らない彼女は、「死後の世界」という都合のいい世界を作り出して、 今現在まで生きてきたという、ある種の電波ちゃん。 しかし。 ふたつのどちらにしても言えることは、それは彼女一人の問題ではなく一つの学校を取り巻いていたということ。 だから僕はこう仮定づける。 例えばここに、「しので鳥」というある意味では馴染みのある「怪異」が彼女を蝕んでいた、ということとしましょう。 ですがそれでは彼女の言うような集団性が理屈付けれませんので、ここで「詐欺師」というものを挙げておきます。 いつかの千石の一件の如く、その「詐欺師」はありもしない「伝奇」を振りまき、その被害は一つの集団を巻き込んだものになったとさ。 その一人が彼女、仲村ゆりという少女でした。 うん、ここまでの理解度が限界だ。 要するに「怪異」の仕業ってことなのか? ……………ならば僕は働かなければならない。 理由なんて今さら必要ない。 女の子を救うのに理由なんていらないだろう。 まあ。 なんてわけで。 「まずは阿良々木くん。死んだ世界戦線に入らない?」 「ああ、是非入れさせてもらうよ」 少女の観察。 そして、できれば忍に解決してもらうとしよう。 こうして僕は、殺し合いへの抗いの第一歩を踏みこんでいった。 【B-5 塾の廃墟/未明】 【阿良々木暦@物語シリーズ】 【装備:不明】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:仲村ゆりと行動、ついでに観察 2:死んだ世界……ねえ 3:みんなとの合流、特に忍野忍、戦場ヶ原ひたぎを最優先 【備考】 ※鬼物語で八九寺真宵が成仏してからペアリングが戻る前までのどこか ※ペアリングが切れているため、吸血鬼性は限りなく低いです ※死後の世界について凡そ聞きました 【仲村ゆり@Angel Beats!】 【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:気にいらないから主催どもを殺す 2:阿良々木暦君と行動 3:みんなを探す 【備考】 ※ユイが消えるまでのどこか ※ここが死後の世界だということに思い至っていません ※怪異についてはまだ聞いていません 【鉈@ひぐらしのなく頃に】 林業や狩猟などの山林で働く人々の用途に適した刃物の類である。 一般的に斧、包丁、鎌、刀剣以外の大型刃物を総称して鉈という場合が多い。 竜宮レナが持ってる姿が印象的。 |012:[[皆の世界をまもるヒト]]|時系列|015:[[闇に濡れたCatastrophe]]| |007:[[それと便座カバー、それと……]]|投下順|009:[[生き抜く事/守り抜く事]]| |&color(cyan){START}|阿良々木暦|062:[[悠久の旅人〜Dear boys]]| |&color(cyan){START}|仲村ゆり|~|

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