リリイロリリ1 それは日常 「今日も楽しかったー」 DDRで課題にしていた曲がようやく満足いくクリアとなって彩葉は上機嫌だった。 学校のことを考えるとゲーセンに長居はできないけれど、あの独特の空間ですごす時間は、昼間とは違った濃密さを持っている。 「これでお風呂入って明日までぐっすり寝れたら言うことなしね」 「明日のLL、当たってなかった?」 「…いやなこと思い出させないでよぅ」 ご愁傷様、と肩をすくめてみせる。 昨日は今日の連なりであり、今日は明日の連なりである。 けれど同じではない。 「明日になったらまた早くゲーセン行きたいって思ってるんだろうな」 「学校、嫌い?」 「好きよ。毎日いつでもゲーセンに行けてるとそれはそれでつまらないでしょ」 少し彩葉の中では比重はゲーセンに重きを置いているらしい。 「リリスは?学校好き?」 「…そうね、好きだと思うわ」 同じではない日々の中で微かに変わってゆく互いを知ることができる。昼であれ、夜であれ。 また明日という言葉を囁きあいながらも、今日と同じ日を繰り返し演じるつもりはさらさらない。 それが日常。 「学校でもゲーセンでも、彩葉を見てるのは面白いもの」 「観察してるような言い方」 「彩葉もしてるでしょ」 微笑。彩葉が笑みを浮かべると周囲がとても華やぐけれど、今向けられているそれは共犯者への揶揄を含めた、昼間では見られないもの。 「してる」 「お互い様」 互いが互いをひそやかに見つめる。それが日常。 「明日のLL、もしわかんなかったら写させて」 「先生に質問されて困った顔の彩葉、見たいわ」 「悪趣味」 共犯者には共犯の笑みを。 日常における、近さと遠さ。その絶妙な距離を楽しみながら、彩葉とリリスは明日へと時間を移してゆく。