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LOG内検索 / 「ちかなりちか3」で検索した結果

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  • ちかなりちか3
    ちかなりちか3 奥方様 「毛利元就が妻、久と申します」 「長曾我部元親の妻、菜々ですわ」 すずやかな振る舞いが美しい奥方様たちは出会い頭は花のかんばせであったが次の瞬間には、 「うちの田舎っぺ大将が」 「いえいえこちらの冷血漢が」 と夫を遠慮なくこき下ろした。 チカとナリの奥様方、本を読んでいるとだいぶ面白い人たちっぽい。 (司馬遼の菜々、山岡の久)
  • 学園ちかなりちか3
    学園ちかなりちか3 「ふあ」 字面だけなら悩ましい。けれど実際は間抜けな大あくびをかます元親に、元就はこれで五回目だとうんざりした。 「大方、くだらない機械いじりでもしていたのだろう」 「ちっげえよ、一組のけーじから漫画借りて読んでたら夜があけてたんだ」 「くだらん」 「…そういうことは見てから言え、元就」 「株価情報でも見ているほうがましだ」 「てめーな!くだらねえかどうかは一巻読んでから言え!」 又貸しになっちまうけどとりあえず読みやがれ!と元親は元就に、慶次に返すはずの漫画本を押しつけた。 「よーチカ、漫画読んだか?」 「ああ…あと三日くらい貸しちゃくんねえか」 「え?かまわねえけど、全巻読んだってメールくれたじゃねえか」 「いやちょっとよ、元…あいや、うちの家の連中まで読み始めちまってさ、しばらく返せそうもねえんだ…」 「なーんだそういうことか。いいぜ、いいもんはじ...
  • ちかなりちか7
    ちかなりちか7 「なあ元就」 「…」 「今日よ、厳島行ってきたんだがよ」 「…」 元就の『興味のない話題は無視』を貫く姿勢も元親は慣れていた。つきあいだけは、本当に長いものだから。 「俺ぁ厳島でゆっくり島巡りしたことがないがな」 「…」 「いいところだよな」 「ふん」 つめたくて生意気な返事が優しく聞こえた。 「今度は観光案内してくれや。鬼の神さん祭ってる神社があるそうじゃねえか、なあ」 「自力でゆけ」
  • ちかなりちか6
    ちかなりちか6  ふこふこ 「あのよう」 ふこふこ 「人を犬か猫と間違えちゃねえか」 「こんな図体の犬猫がいてたまるか」 ふこふこ 元就は切れ長の目を書物からあげないまま、手を動かす。 「ふむ、手触りはどちらかといえば狐か虎だな」 「だー!おい!人の頭を撫でくりまわすのも大概にしやがれ!」 がっちゃがっちゃ手枷足枷を動かし抵抗を試みるも西海の鬼を頑丈にとらえるそれらがちぎれるはずもない。 「黙っておれ、千爺」 元就は何事もなかったようにまた元親の頭をなで回した。 ふこふこ
  • ちかなりちか4
    ちかなりちか4 ハンドメイド 「アニキ!俺らがよなべして作った応援旗、使ってくれよな!」 「もちろんだぜ野郎共っ」 「アニキ!アニキ!(エンドレス)」 「…」 「あん?どうしたよ元就」 「これを貴様にくれてやろう」 「なんだこりゃ?ちっこい輪刀か?」 「貴様の配下は危険があればあのうっとおしい声援しか送らぬがこれは違うぞ」 「おい人の子分を」 「黙って聞け。これに一言呼びかければ摩訶不思議、日輪の加護が貴様に降り注ぐ」 「つまり?」 「我が加勢に入ってやる。さあ指にはめるのだ元親。今なら石見銀山特製純銀だ」 「いやっなんかそれ違うぞ元就!?これ明らかにゆび…っ」 元就がゆがんできた
  • ちかなりちか1
    ちかなりちか1 捏造上等の過去話 その昔、超絶かわいい子をみかけた。 厳島神社の平行する廊下と廊下で父親とその家臣について歩いてる子だった。 一応神域であるので、お互いの敵国武将たちはあからさまに目をそらしている中、そのこの目はまっすぐで輝いていた。 どうにも初めての場所にきょときょと目を泳がせていてその様も可愛い。白い髪と肌がやけに目に残る。 「あれらは長曾我部の…」 「いずれ若殿とあいまみえることになりましょうな…」 「まあ何ともひ弱そうな若子だが…」 後ろについてくる家臣を切り捨てたくなった。 姫若子と呼ばれていた初恋の人とでも言うべき相手が長じていつのまにか鬼若子と呼ばれることになろうとは露知らぬ毛利の若様だった。 捏造チカナリチカ。 どこかでそんな出会いがあればいい
  • ちかなりちか8
    ちかなりちか8 「チカー!チカー!モトチカー!」 元親の肩でわめく鳥を元就は睨みつけた。 「やかましい」 「珍しいだろー人の言葉を覚えるんだぜ」 眩しい黄色の羽根をばたつかせ、なおも鳥は「モトチカー!」と鳴く。 「こいつの躾は信がやってなぁ。言葉もスラスラ覚えさせるんだぜ」 「ふん」 信親の名前を聞いて、元就の目がすぅっと細くなる。信親は実父より長身でさわやかな好青年だが、元就を見る目はアニキ親衛隊が浮かべるものと大差ない。 「この世で海が似合うオトコは?」 「モトチカー!」 「よーしよく出来たなー。な!すげぇだろ元就!」 「ナリ!」 鸚鵡はバサバサ飛んで元就の前に飛んでくると一言言った。 「カバチタレ!」 「!?」 「お、おいおい」 「ナリ!カバチタレ!イナカモン!」 「貴様…今すぐその舌を引っこ抜いてくれる!」 「うわ!元就!やめやがれ!」 なぜ鸚鵡が元就にそんな...
  • ちかなりちか5
    ちかなりちか5 くもりのち 「去ね、貴様はいらぬ」 「もっ元就様!」 能面から吐かれる言葉は氷の如く毒の如く。 ひとりの家臣が消えた軍議にて空気はゆるむところを知らない。 「…今日の元就様、機嫌が悪いなあ」 「…やっぱり曇りのせいか」 「しっ!滅多なこと言うんじゃねえ」 末端までも神経がぴりぴりしているところに飛び込んだ者が一人。 「よーう元就!相変わらずシケた面してんなあ!」 「…貴様、何用だ」 「沖でいいのが釣れたんでお裾分けってやつだ、ほれ!好きだろ」 長曾我部元親である。 「菜々がなー食いきれないならご近所にわけてやれっていうしよ」 「ふん」 永久凍土のオクラの権化が、ならば捌けと言って元親はいい酒よこせと笑った。 「(…)」 「(…元親殿、ずっとここにいてくださればいいのに)」 「(…姫若子時代なら問答無用でさらって嫁に据えることもできただろうよ)」 さすが...
  • 学園ちかなりちか6
    学園ちかなりちか6 「なー元就、虎の先公知らねえか。職員室にいねんだが」 「おってんないか」 「っ?」 「ならば校庭で二組のやかましいのを鍛えているのだろう。そこにおらねば知らぬ」 「あ、ああ?うん…行ってみる」 元就はぽろっと出た方言に気づかない。 ヒロシマリアン講座『居る』 「いる」→「おる」 「いない」→「おらん」 「いらっしゃらない」→「おってんない(おられない)」 お国言葉deバサラとか可愛いよね
  • ちかなりちか2
    ちかなりちか2  元親が浜で拾った子供を肩車してやっていたら、「鬼が子供をさらいに来た」と元就に言われた。 「明日の知れない孤児になるのと海賊になるの、どっちがましだ」 「そうして鬼が増える、か」 能面めいた元就が笑ったようだが気色は薄い。腹から力を入れる、という言葉にこれほど縁遠い男もいない。 「子供は嫌いか」 沈黙。 「苦手か」 元親はそう読んだ。子供の扱いが下手そうに見えた。 「小さきものは脆い」 恐れでもしているように。 「ああ脆ぇな。弱っちくて、すぐ壊れちまう」 しかし、子供はしなやかだ。逆境にもっとも柔軟に接する。たとえその先が鬼と呼ばれるものであろうと。 「生きて生きて生きぬいて笑う奴が勝者だ」 もみじの手が元親の白髪をいじる。爺みたい、という声を頭上で聞く。 「あんたもそうじゃなかったかい」 「そういう話は聞きたくない」 だがつっぱねる声の主...
  • 学園ちかなりちか9
    学園ちかなりちか9 「里帰りよかったか?」 「当然だろう」 「みやげはー?」 「貴様…目当てはそれか」 「あ!もみじ饅頭は厭きたぞっ」 「焼け焦げよ!」 次からおみやげが物産展真っ青なバラエティー豊富なものになった。しかしながら熊野筆のメイクアップブラシセットなんかどうすればいいのか、もらった元親は悩むことになる。
  • 学園ちかなりちか7
    学園ちかなりちか7 机の上に何冊もカー雑誌が広がっている。どれも誰もが耳にしたことのあるブランドばかりだ。 「これはなんだ」 元就が指し示す雑誌に埋もれていたのは元親。かなり機嫌がよさそうだ。元々機械が好きな質だからこうしたものを見ていると顔が緩むらしい。 「次の休みに車の免許とるからな、今から車選び」 「…誰がだ」 「俺が」 「無免許運転じゃないのか」 「手前ぇ失礼なこと言うなよな。捕まるへまはしてねえぞ」 叩いたら埃の出る身ではあるらしい。 「一組の竜のさ、お目付け役ってえのか?渋い兄ちゃんが乗ってた車がBM○でなあ」 セレクトも心憎い!と言う元親はガサガサ雑誌を漁る。 「…身の丈にあった車選びをすることだな」 「悩んでるんだよなあ、イタ車かアメ車…」 「……土佐で走るにはどちらも不似合いだな」 「うるせ!じゃあ、おまえだったらどこの車にするんだよ!」 「マ○ダ」 「...
  • 学園ちかなりちか5
    学園ちかなりちか5 「今日はうしおととらか」 休憩時間に突入するとクラスの半分ほどが各単行本片手に語り出す。もはや見慣れた風景となりつつあった。 かくいう元就も元親から単行本を受け取る。しゃくに障るが気になると放置できない性格が結局最終巻まで手をのばさせる。 「元就…20巻と21巻はいいぞ」 「…どういう意味だ」 「まんまだ、心して読みやがれ」 元親はなんだか嬉しそうな顔で席をたった。たぶんこれからロトの紋章を借りにいくのだろう。 「20巻と21巻」 別にこれという興味もなかったがぺらっと読み進めてみる。すると元就のすっと刻んだような眼差しがさらに細くなる。 「ふん…里心が出たのか、単純なやつめ」 おまけにこれは土佐ではなくて香川ではないかと毒づいた。 うしとら読み返していたら水乃緒さん出たよ!そういえば彼女好きだったな…ああ四国(単純なのは私)
  • 学園ちかなりちか4
    学園ちかなりちか4 元親が漫画本を持ち込んだおかげで3組では漫画の回し読みがひそかにブームだ。皆こぞって集めた漫画本を男女問わず読んでいる。 「ねースラダン7巻誰が持ってるの?」 「昨日山本が持ってたよーな…あ!ときめきトゥナイト16巻もってくんの忘れた!」 「おい次僕タマ読むのは俺だぞ」 「だったらるろ剣早いとこ持ってこいよ!後つまってんだぞ」 にわかに3組は漫画ブームだ。風紀委員もさりげなくセーラームーンを読んでいたりして。 「ねーチカちゃん、ドラゴンボールの40巻知らない?」 「あ?40なら俺が読んで元就に回したぞ」 「…もーり君も読んでたの」 「おうよ、あいつはベジータ派なんだがよー俺は悟空のほうが好きだなー」 「そーなんだ…あ、ダイ大読んだ」 「読んだぜ!ハドラーがかっこいいよな!」 「やっだぁハドラー様でしょ!ハドラー様!」 ちなみにこの後は推理小説ブームに3組はハ...
  • 学園ちかなりちか1
    学園ちかなりちか1 「チカちゃんチカちゃん」 ちょうそかべもとちか、という名前が呼びにくいのでクラスメイトからは「チカちゃん」「チカ」よばわりだ。元親はあんまり気にしていない。気にするのはなぜかその隣の席の毛利元就だ。ちなみに彼は「ナリ君」と女子のあいだでは呼ばれるが面と向かって言う剛の者はさすがにいなかった。 「チカちゃん頭暑そうだからまとめてあげるー」 「ん?おーう頼むわあ」 セットしにそうな、いかにもチャレンジしがいのある元親の頭に美容師を目指す彼女の目はキラリンと光った。 五分後。 「…貴様、なんだその頭は」 「女子がやってくれた」 後ろに流して小さなピンでとめられた頭にいち早く元就が反応した。ピンクと紫のコントラストが白い髪に生える。 「チカちゃんかわいいー」 「おーよ」 たかだか五分席をはずしただけで様変わりしてしまった元親に何を思った元就は。 「...
  • 学園ちかなりちか2
    学園ちかなりちか2 あるところに竹から生まれたと噂される「なよ竹の姫若子」という絶世の姫がいたそうです。 嫁ぐ気もないのにあんまりにも求婚者が多いため困った姫若子は「特にいらないけど宝物くれたらお嫁になってあげる」と求婚者たちに無理難題を押しつけて言いました。 求婚者たちは頑張ったのですが姫によく似た鬼若子という人が宝物を持ってきてもいちゃもんつけたあげく「贋作」と言ってたたき割っていたそうです。 なにより鬼若子が怖くて姫若子に近づくものは命をかけねばいけないという噂も流れました。 さすがに求婚者が途絶えた頃、求婚者たちに言った宝物を文句なく集めてきた人がいました。 「すべては日輪のご加護、さあ嫁げ」 「いやあの俺人間じゃなくて月からきた鬼なんだけど、どっちかっつうと姫は仮の姿でこっちが本物なんだけど」 「それがどうした」 日輪の信奉者は姫を拉致監禁し、連れ帰りにきた月からの使者(...
  • 学園ちかなりちか8
    学園ちかなりちか8 「なに読んでるんだあ?」 マ○ダ騒動から数日、かっこよさ重視のRXから元就の理詰めで燃費のいいデミオに言い負かされそうな元親は、なにやら分厚いフルカラー本を熟読している元凶元就を見つけた。 「……」 「おーい」 数度呼びかけてやっと切れ長の目が鬼を映した。 「元親」 「ん?」 ガツリと肩を掴まれた。元就の雛人形のお内裏様みたいな目がキラキラしていた。やばい今度はザビー先生の怪しい勧誘だろうか。バズーカ片手の英語講師と仲がいい元就の精神構造はよくわからない。自分に害がないからといって放っておいたのは悪かったのか。 体に似合わずおびえ気味の四国の鬼に、元就は輝きを増した目で訴えた。 「我と検定を受けろ」 「………は?」 目が点の元親にバッと読んでいたフルカラーの本を見せた。 タイトルはズバリ「宮島本~すべてわかる!宮島検定認可完全テキスト~」 「これを読...
  • ちか3
    ちか3 ※ちかファミリー。色々と本で読んだネタが入っています。 信親が久方ぶりに家に戻ってみると母の菜々が侍女にまざってきゃあきゃあ騒いでいた。もともとは美濃の人である。しかも美濃一と歌われた美女は信親のような大きな息子を持っているようには全く見えない。 「母上、なにをなさっているんです?」 「あのね信親、ちょっと奥の倉のものを虫干しさせようとしていたら、わたくしのお義父様でおまえのお爺さまの国親様のお着物が出てきたのよ」 「お爺さま」 信親はその単語を転がしてみる。 国親は母が結婚する前にこの世を去っている。ただあの元親の父というだけあって、一度は衰えかけた長曾我部家を立て直した偉人であるということは知識で知っている。 だがそれ以上の祖父の顔を信親は知らない。 しかし、菜々が膝の上で並べているそれは、年月を経て古びているが明らかに女物である。 信親がはて、と首をかしげていると...
  • バサラ
    バサラ 奥州-こじゅまさ 収穫 プラスちか1 パーリィin奥州 チェンジ 苦渋 合戦準備 牙を研ぐ 庶民派 大阪-たけとみ 温泉 どっち? 恩賞 帰還 繕いもの 睦言 蜘蛛の宴 小田原-こたうじ ぼらんちあ あいらぶゆう うぉーたー たがために にがみばしり りすきー きがのよる るーずに にしゃたくいつ つかのま まおとこ こよ よびかけ けわしきよでも ものいえるみならば ばんり りち ちかく くったく くもなし しゅうや やくじょう うえをみよ ようようはるのごとし しろくおいたねこ こどくのほし しじまのつき  こたとゆかいな北条家 1 2 3 4番外編 氏政様の守人 1  2 中四国-ちかなりちか 捏造過去 ひとさらい 奥方様 ハンドメイド くもりのち ふこふこ 厳島 with鸚鵡 補給部隊へ 手習いに 家族の肖像 厳島にて 安土-みつのぶ 日記  草葉 甲斐-...
  • ちか4
    ちか4 「あいたっ」 「信、それで何度目だあ?」 「ち、父上こそなんでぶつからないんですかっ」 厳島の回廊は朱が驚くほど風景になじみ、それでいて神域であることを忘れさせない。 しかしなんともこの社殿は全体的に天井が低く、並外れて長身の信親は景色にみとれていると頭をぶつける。 信親には負けるがやはり土佐では目立って背の高い元親のほうはひょいひょいと頭を上げ下げして難を逃れていた。 「んな恨みがましい顔すんじゃねえよ。俺は色々と…何度も着てるからよう」 言葉の端々に日輪とオクラの気配がしたと、父上ラブの信親は感じた。 「親様、このような時くらいちゃんと手をお出しになって」 「いいじゃねえかよ菜々ぁ」 常日頃引っ込めている手を菜々が出させる。 「おっ、そうだ信。後で鹿にエサやるか?」 「結構ですっ」 「なんだぁ?昔鹿に追っかけ回されたのをまだ怖がってんのか」 「ち、違いますよ!」...
  • ちか1
    ちか1  「陸にあがる準備できたかー?」 「おうよー」 「買い出しにいく奴にちゃんと表作って渡せよ」 「おいおめえ字、汚ねえ!」 「うるせえ雰囲気でわかれよ!」 上陸直前は船のどこをみてもそわそわしている。陸に手が届きそうで届かない、そのもどかしさはいい意味で船員を刺激する。 長曾我部元親の長男・信親が甲板にあがってきた。この嫡男は皆から「若」と呼ばれている。 言うまでもなく信親も元親を敬愛し崇拝して親衛隊隊長の名誉を勝ち取っている。(隊長職をかけて『長曾我部軍内勝ち抜き百回勝負』の結果、決まったことなので誰も異存はない) 「おっ若も陸にあがりやすかい?」 「いや。…買い出しにいく奴は誰だ?」 「俺です俺ですっ」 元親を「やんちゃ坊主の田舎っぺ大将」と朗らかに評価した奥方と信親は笑っている顔が一番似ていると言われている。つまりは元親とは違ったたぐいの男前で、剛胆な我らがアニキとは...
  • ちか2
    ちか2 ちくちくちくちく 「また穴あけちまったのか」 「へへ、申し訳ねえ。ひっかかっちまって」 ちくちくちくちく 「慣れちまえば針なんざ楽なもんだな」 「ア、アニキ!俺もさっき穴あけちまって!」 「ああん?まずは、あて布もってこい!」 糸を噛みきった歯を白く見せた。 「…まさか花嫁修行に覚えた針仕事がこんなことになるとはなあ」 野郎共のつくろいものを山と作っても元親は怒らずちくちく針を動かした。 「父上、私のも」 「自分でやりやがれ」 長曾我部家はできることは全力で自力でやれとしつけられている。 ちょっぴりなんでもできる自分がイヤになった信親だった。 姫若子時代にチカは花嫁修行パーフェクトにできてたりして
  • こじゅまさ2
    こじゅまさ2 +ちか 「ぃよーし野郎共!奥州の海で一丁釣りといくぜ!」 「へい、アニキー!!!!」 「アニキ!大漁旗の準備できたぜ!」 「おうよ」 お手製の釣竿片手にした長曾我部を見かけた。まさか一本釣り?と思うがなんだか楽しそうだ。 「俺ものりてえなー」 「あなたは船の上も凛々しいですが馬上のほうがご立派です」 「煽ててもきかねえぜ小十郎、心配ならついてきな。HEY!西海の鬼さんよ!」 「お!?独眼竜じゃねえか」 「楽しそうなことやってるじゃねえかよ。俺も混ぜろよ」 「いいぜ船賃は俺様と勝負だ!」 「YA-HA!その前に通行料払えよな!海の上だろうがそこは奥州だぜ」 「海の上に境目なんかあるかよぉ!」 小十郎が止める間もなく六爪と碇槍がぶつかった。 ちかとだてむね、じゃれあいをしてこじゅをハラハラさせたらいい!手え出すなと言われたのでこじゅはぐっと我慢
  • ニクシロ4
    ニクシロ4 贔屓 どっちかといえば俺はアメリカ贔屓だ。完全実力主義やら気質やらは梅雨の日本みたいななあなあさに比べれば言うまでもない。 それでも認めてやってもいいものは三つある。 ひとつは牛丼。 「花見も悪くない」 「おまえの場合、花より団子、団子より酒だろ」 「ほっとけ」 美的センスでみても、桜のような幽玄さを持つ花を俺はほかに知らない。 あとは 俺の隣で笑う、まるきり異国の風貌をしながらサムライであるこいつを生み出したのは、偉業だと認めてやってもいい。
  • 悪魔10
    オリジナル 悪魔10 【気狂いの引き算をしようか】 ごう、と海風が血涙の悪魔をなぶる。髪が外套が容赦のなく弄ばれるのも気にせず、彼は波が削っていった海岸線のそばを飛んでいた。冬を迎えた海は暗く沈んだ紺色で白く砕ける波と相まってうら寂しい情景を見せている。そこに一際、海に突き出た岬があった。剣の切っ先めいた鋭い先端には断崖にもかかわらずぽつりと人家があった。大きなものだが、木造で丈夫そうには見えない家だ。 「あそこか」 悪魔はそこに降りたった。びょうびょうと吹く風はやまず、彼の目の前に建つ家もそれにあおられ小刻みに震えているような気がした。 真実、そうかもしれない。ただしそれは風に家が震えているのではなく、内側のものによって。 「エスタローザ」 血涙の悪魔は盲目ではない。瞼と皮膚が縫い止められたように開かず、その奥に隠された瞳が何色であるか、またそれが眼球としての役割を果たしてい...
  • ゼファ5
    ゼファー5 ルルススの時計は狂っている。単位としての時間を把握することも曖昧であるし、生体としてのリズムも不規則で、三日近く起きていることもあればその倍の時間眠ることもある。起き続けるということも眠り続けるということも体の限界のシグナルがやってきから、その異状を察知していた。 「だいぶ改善させてきたんだがな…」 一日という時間を区切り、睡眠と活動を規則正しく行うようにルルススに教えてきたキラーは寝台でぐっすり眠り込む少女に肌かけをかけてやる。 「ルルは寝たんだ」 「やっと、というべきかな」 リヒトの繊手がのび、翠の髪を撫でてやる。絵面だけをみれば、薄紅の髪の青年が年の離れた妹のような少女をいとおしむようにも見える。 あどけない寝顔を無垢だ。だがそれを見守るリヒトの紅い瞳はルルススが長い眠りを取ることを待ちかまえていた。 「つねっても起きないかな?」 「やめろ。やっと眠ったとこ...
  • さゆき1
    さゆき1(こたうじ8から微妙に続き) 「なんふぉ、ほだはらのひのびがみずはめ…」 「おいおい旦那、食べるか喋るかどっちかにしなよ」 「むぐぐ」 タレのかかった団子をもちもち味わった後、幸村は目を輝かせた。 「…して、小田原の忍が大事そうに水飴をなめていたと」 「茶も飲めよ。…いやー寄越せとは言ってないのに凄い勢いで追い返されちゃってな」 「それは…風魔小太郎ほどの忍が服すとなると…」 「なると?」 「よほどうまい水飴なのであろうな!よし!今度某が小田原に立ち寄ったときにでも調べてみるぞ!」 「ちょっとちょっと!旦那!」 「さぞや名のある老舗の銘菓に違いあるまいぞ、佐助!」 「ああもう…旦那ってば甘味と戦とお館様のことになると本当イノシシになっちまうんだから」 武田一の苦労忍は苦笑まじりにため息を人知れず吐いた。
  • 識柚6
    識柚6 かなりパロディです。近未来もの。 「人型アンドロイドのモニター、ねぇ」 じっとりとした眼差しでモニター越しのケイナを睨んだ。 画質のいいテレビ電話はケイナが両手を合わせて、頼む、という姿をしっかりと映している。 「で、今度はどないな規格外品作ったんや」 『失礼な!俺は純然とした好奇心で研究してるんやぞ!』 「おまえが作るもんは大抵常識はずれやろが!犯罪手前マッドサイエンティストのくせして!」 長年の知人をやっているがこの男、頭は優秀なのだがいかんせん常識とかそういうもののネジが二三本飛んでいる。愛玩兼ガードでモニタリングをしたドグロイド(犬型ロボット)は攻撃モードになると口をあけたらミサイルが飛び出すわ背中からは機関銃が姿を現すわ、ろくでもない兵器だった。それが可愛らしいチワワ型の犬から出るのだから末恐ろしい。これでも一応大手のアンドロイド製造企業お抱え研究者なのだから世...
  • 氏政様の守人2
    氏政様の守人2 ※まんま「南君の○人」なこたうじ。こたが小さくなったら?な小ネタ集。 「ますます一寸法師めいておるのう」 姫君方の雛人形のお古である小さな狩衣と腰にさした針。当座の小太郎の装いを整えてやった氏政はそう言った。 「…」 兜や忍装束はただ今風魔の忍びたちが夜なべして製作しているらしい。曰く、小太郎専用の巨大手裏剣なども城下の職人と手先の器用な忍びが協力して試行錯誤を繰り返しているとも聞いている。 小太郎は着なれない狩衣に居心地が悪そうだが、紺の落ち着いた色といい元の見栄えのよさも手伝い、よく似合っている。烏帽子は嫌がったのでざんばらな頭はそのままだがこれが元の大きさであったら見とれる者も多いに違いないと氏政は不思議な充足感を覚えた。 「小太郎」 氏政が掌を出すと、小太郎はそこにおそるおそる乗った。 「しばし辛抱じゃな」 もう少しそのままでいて欲しい気もしたが、貴...
  • こたうじ8
    こたうじ8 小田原城の天守閣のそのまた上。 「おーやおや?これまた意外な一面発見だね」 風魔小太郎と水飴なんて奇特な組み合わせだよ、と茶化すのは武田が忍、猿飛佐助。 「お互い、手間のかかりそうな主だもんなあ。甘いもんでも食ってないとやってらんないってとこ?」 手のひらに収まる小さな壷をちびりちびり、とても大事そうに口に運ぶ小太郎は佐助の話をほとんど聞いてはいない。 「うちの旦那もさあ、甘いもんにゃ目がないんだけどお宅もその口?」 一口味見させてよとぼやくと返答は無数の手裏剣だった。 「ちょっとちょっと!いきなりそれはないんじゃない!?」 壷にしっかり封をして懐にしまった小太郎は次の瞬間には影分身まで呼び出した。 「なんなのよそれ!俺まだなにもしてないでしょーが!」 なにが逆鱗にふれたのかもわからないまま、佐助は小田原を追い出された。
  • ゼファ4
    ゼファー4 (これ以降のXepherは改名済み) 「キラーはルルのことを守ってくれる?」 「もちろん」 そのためだけに自分はいるのだとは言わない。 まどろみに落ちかけたルルススの肩に布をかける。顔にかかる緑の髪をすくってやると彼女はくすぐったそうにほほえむ。 「リヒトは?」 「…ルル」 「キラーはリヒトを守ってくれないの?」 彼には守る義務はない。リヒトはルルススや今もって朋友がつれているあの少女とは違う。 キラーが守るべきは目の前の少女だけだ。 だが。 「…守ろう。おまえが大切に思うものすべてを」 「…よかった」 額におかれたキラーの手にルルススはすっと頬を寄せた。 守ってねとつぶやく少女は半分は眠りの国に向かっている。 「…みんな大好きだから、キラー…守ってくれる?」 「ああ」 おまえが好きだと思うもの、おまえに連なる近しいもの。 自分自身の命すら投げ出していいと考え...
  • 学園バサラ4
    学園バサラ 鬼と竜 そろそろ次のしけこみ場所を探さなくてはならない。 人気がないとはいえ、屋上のコンクリートに直に座るのは寒くなってきた。 「よう」 「おう」 錆びた扉を半ば蹴り開けるようにやってきた元親を政宗は見やる。お互い、目立つので顔見知りだ。 なんとなく広い屋上で隣あってフェンスを背にする。 暮れ始めてオレンジ色の太陽がものさみしい光に照らされる。 「あのよ」 「なんだ」 「今日、てめぇんちに泊まらせてくれ」 「それ、人に物を頼む態度かあ?」 にやっと笑った元親が煙草をくわえ、政宗の隻眼が一本寄越せと訴える。 「泊めてやりたいのはやまやまなんだがな、…俺もちっとばかり、家にいたくなくてな」 実家の親父がやってくるんだわと煙草もついでに渡して言う。 「…奇遇だな。俺もそうだ」 元親の父親は、近所でも有名な「綺麗なお母さん」だ。趣味と実益をかねた女装がすっかり板につ...
  • バディ2
    小ネタ バディ2 夷澤ネタ多い(笑) ・夷澤は鎌治のことを「テナガザルみたいっすね」と言ってしまい、葉佩に死ぬほどボコられた。 ・AV未経験者→響(真っ赤になって見られません)、墨木(じ、自分には必要のない知識でアリマス!!)、黒塚(鼻から興味なし)、真理野(破廉恥な!!) ・AVには興味のない黒塚だが、ミロのヴィーナス像とかには「舐めたい」と言うかもしれない。 ・2年の身体検査で夷澤は0.5センチ縮んで、それをかなり気にしている(所詮小物) ・皆守は誕生日にアロマオイルセットに大ハマリ。もはや汗の匂いすらラベンダー。 ・レリック・ドーン新兵肝試し。1.寝起きのマッケンゼンor2.欲求不満の喪部。どちらもうまくいけば生存は可能。 ・トトの知らないところで彼の三親等の家族が20名はいる。 ・たいぞーちゃんこそ美食ハンターになれる。 ・阿門の髪は厳十郎がぴっちりセッティング。...
  • 葉皆5
    葉皆5 ヒロシマリアン2 「のーのー」 「…」  そっぽを向いた皆守はしつこくついて回る葉佩を無視してどんどんと屋上へと足を運ぶ。 「甲ちゃーん、甲たろー!のー、これ以上休んだらいけんてヒナ先生言っとったでー…おーい」  ねばり強さは悪く言えばしつこいの別の名前だ。よくよく回る口を持って生まれた葉佩はぴったりくっついてそのまま皆守の気に入りの場所である、屋上にひとつでぱった浄水タンクの上までやってきた。 「はぶてとるん?」 「…」 「あ、キャラメル食う? やっちーがくれたんじゃ…ってやお!?ぶちやおくなっとる!」  ポケットにいれて動き回っていたのだから、当然キャラメルなど熱で溶けてぐにゃぐにゃになってしまっている。葉佩はそれを捨てようかどうしようか迷っていたようだが、元あった場所に…つまりポケットに戻した。  …捨てるか食うかどっちかにしろよ。  それらすべてを無言で返して...
  • 悪魔8
    オリジナル 悪魔8 【心、失せてしまった】 その昔、異界の秘術を用いてこの世のすべての真理を知った賢者がいた。 知りたいという欲から芽生えた願望は実を結び、彼は世界の成り立ちから悪魔の王の真実の名前、星の彼方に描かれているという運命の行く末すら全てを知った。 だがその瞬間から、彼は知りたいと思うものがなくなってしまった。 もはや彼にわからぬことはなく、それと同時に彼が人間である必要もなくなったのである。すべての答えを知った彼は人間という有限の肉体を永遠に保たせる方法まで知ってしまった。 そして彼は「答え」になったのだ。 「ナガガミ」 そこはどこにあるとも知れない荒野。生き物の気配のしない寂しい視界が広がる。唯一の色彩を持つのは、痩せた大地に巨大な根をはる紅い巨木だった。 本来の植物が持つ瑞々しさとは程遠く、枯れ果てた老人の肌のような地面に貼りつき、空にまで歪んだ悪意を押しつけてい...
  • ゼファミリー7
    ゼファミリー7 小さな愛情大きな横暴 安普請のボロ屋にはすきま風と雨漏りが常にお友達。わずかな雨でもあっちの廊下、こっちの畳、バケツやタライが家庭内でこれほど活用されることもないだろう。 「大丈夫だろ、前の台風にもウチは耐えたんだし」 「でも屋根瓦が半分くらい飛んでっちゃってたよね」 「あれは補強をやり損ねたキラーが悪ィ」 「!? ! !!」 やや高所恐怖症のケがあるキラーに屋根仕事ができるわけもない。のに家長と書いて俺様と読むリヒトはお構いなしに屋根仕事を手伝わせたのだ。むろんまともな補強ができようもなく瓦はかなりの数が飛んでいった。ちなみにこの時の台風被害は町内ではリヒトたちの家だけだったりした。 「屋根くらいでびびるんじゃねえよ。チョロ毛のアパートは平気で行ってるだろうが」 「…っ!!!!」 平気じゃない。オロロージョの住むアパートではキラーは目をつぶって最上階まで階...
  • 葉取5
    葉取5 目を開けて最初に君を見たい 「マミーズいこーぜ! かーま…ちっ?」 勢いよく、3年A組に飛び込んできた葉佩だったが、 目の前で真っ白く小さな指が一本立てられた。 「九サマ、おしずかに…ですの」 「え、え…リカちゃん? どしたの」 今日も目にも綾な完全ゴスロリ少女・椎名リカは口の前に指をたてて、しぃ…というポーズをとった。同い年であっても彼女がとるとその動きは少女めいていて、クラスのあちこちから溜息が漏れる。 「おやすみ中ですの」 「誰が?」 「お姫様」 くすくす笑ってみせるリカは、窓際の席を差した。 突っ伏しても尚余りある腕が、机の合板からだらりと垂れ、それでも昼下がりの光を暖かそうに受け止めている。 「…うお、めずらし…」 「ですわよねぇ? どこかのもじゃもじゃさんならともかく、取手君がお昼寝なさってるんですもの」 もじゃもじゃさんてもしかしてアイツのことか、と...
  • 識柚8
    識柚8 ノイズレイン   雨の夜ひとりで眠るのは煩わしい。精神的な意味でなく、かなり即物的な理由から。 「やかまし…」 家賃の安さは正比例する厄介事を抱えている。 ユーズの住むアパートの隣は古びた工場で日頃から何かと作業の音やアナウンスが丸聞こえだ。まあそれも夜型のユーズにはあまり関係はない。工場が回っている昼間はたいてい寝ているのだから。 問題は雨の夜だ。工場の安いトタン屋根は雨の音を病的なまでにうるさくする。ノイズどころの話ではなく、どうどうざあざあ、発狂させたいのかというほどの雨音をたてる。 珍しく夜に就寝しようとしたらこれだ。 けだるくサイドボードの上から携帯をたぐりよせ、のろのろとアドレスからひとつにコールする。 『…師匠?』 「今すぐ来い」 『…ああ、今日は一晩中雨でしたね』 スピーカーの向こうで苦笑の響きを感じ、ちり、と苛立ちが先立つ。 「来るんか、来ぃへんのかど...
  • デニク2
    デニク2 一万ヒットリクエストありがとうSS リクエスト匿名さま:デニク ※匿名さまのみ、ご自由にお持ち帰りください。 『タトゥー』 「ニ、クス……その腰の、なに?」 「ああ?」 がんがんに冷えるクーラーをかけながら、デュエルの部屋に居座るニクスの腰に変なものを見つけた。ジーンズと下着に隠れつつ、腰骨の近くに黒々と刻まれたトライバル風のタトゥー。それはほんの小さなものだったが、ローライズなものを穿くと見えてしまいそうだ。 「何だ、今まで気づかなかったのか」 「いやっ別にそんなんじゃなくて」 いっぱいいっぱいで見えてませんでしたとは言えない。 このヘタレめ、と視線で言いつつ、ニクスは懐かしそうに「これはな、」と話し始めた。 「パーティーで薬でキメててハイになってた時にやった奴がいれてくれた」 「…………はいぃぃぃ?」 『やんちゃ』をしていたのはデュエルも一緒だがニクスのほう...
  • エレグラアミ3
    エレグラアミ3 【不実な飼い主】 オレやアーミーの身上は至ってシンプルだ。なにせ、量産品のイレギュラーが勝手に自我を持って逃亡したっていうクチで。語ってしまえば10秒で終わってしまうストーリーだからだ。オレはそう。アーミーはもう少し違うかもしれない。 でもアイツは違う。オレは言葉にしたことはなかったけれど、アイツがオレ達とは違うことに気づいていた。 アーミーはまた別口でアイツの不自然さに気づいた。エレクトロという名前の量産品が、データの海のどこにも存在していないことに気づいたからだ。 「戦略兵器の一端であるグラビティやブレインタイプのオレのデータがあるのは、わかっている」 「所詮、オレらは替えの利く銃のタマみたいなもんだもんなーリロードすればオッケーって感じ?」 「もう少し金がかかっている」 「…否定ぐらいしろっての」 愛用のノートパソコンには、アーミーの調べ上げた文章がずらずらと...
  • エレシロ7
    エレシロ7 猫喫茶 「永久就職したい」 「はあ…」 「猫に囲まれた生活なんて俺にとっては天国だ」 「金もないくせに。あんなとこに勤めたら、あんた仕事どころじゃないのは目に見えてるぞ」 「う…」 「イヤなら自分で猫喫茶つくれば?」 「そうか!」 「資金繰りに何年かかるかな」 「……」 「せいぜい、猫屋敷がお似合いさ」 「…それでもいい…」 「…もういいよ…」 士朗が猫喫茶いったら廃人になりそう
  • さゆき3
    さゆき3 「佐助、狡いぞッ」 やけにご立腹だなあとのんびり構えていたら幸村にいきなり絡まれた。絡まれた、というか…一方的に詰られている、というか。 こりゃお館様関係かな、また目の前しか見えてないよとすごまれているのに佐助は心配になった。 「なぁにが」 「某の知らぬところでお館様の鍛錬のお相手をつとめたと聞いた!」 「あー…、そういえば」 なんかぼーっと木にぶらさがってたら突然あのでっかい斧を振るわれて、『弛んでおるぞ佐助ェエ!!』といきなり鍛錬とはとうていいえない殺し合いにもつれ込んだのは、つい先日。 「旦那、あれは鍛錬じゃないよ…お館様の暇つぶし」 「ぬぅ!それでもこの幸村、お相手仕りたかった!」 旦那にとっちゃお館様相手なら何でも喜んでやりそうだな。紙一重で庭石砕いた一撃を思い出す佐助はかすかにため息をついた。 「俺様繊細だからお館様みたいな豪快な相手の修練には向いてな...
  • 葉皆4
    葉皆4 【自虐にしかならない嫉妬】 立ちこめた安定を促す筈の香りが役に立たない。 どれほど火をつけてもささくれ立った精神が落ち着かない。 境界線をぼやかすように宥めるラベンダーの匂いに敵わぬほどの苛立ちを抱えることは、ついぞなかったのに。 口にすると騒ぎ立てる喧しい奴がいるから、余計に舌打ちを自分のなかに押しこめなくてはならない。 不快。不快。不快。 「あ、皆守君またサボる気!?」 「うっせぇ」 きんと高い声を背に裾を翻す。 まるで逃げるように無様じゃないか。 そう歯がみするのに脚が急く。 アロマも役立たないなら境の見えない空と何の意志のない風が吹く屋上に行きたい。  「こーたろ」 浄水タンクに凭れていたら、いきなり奴がひょっこりと顔を出した。 「サボり魔。もう5時間目終わったぞ」 いつでも笑みを絶やさない葉佩は隣にどっかりと座って、いい天気だなぁとまた口角をあげてみせ...
  • 学園たけとみ3
    学園たけとみ3 「被服の授業で秀吉の浴衣をつくったんだよ」 「て、半兵衛それ、手縫いじゃねえか?」 「もちろん。一針一針心血を注ぐことが大事なんだよ」 「…被服の授業の目的はミシンが扱えるようになることって前ねねが言ってたぞ」 「そうだったかな」 「しかもそれ、授業で配られてる浴衣の布地じゃないだろ」 「秀吉にあんな安っぽいものは似合わないよ。これは今度の校内花火大会で着てもらうのさ」 「もうさ…おまえ秀吉の嫁になっちまえよ」 校内花火大会で着られるかもしれない浴衣を見せられながらも、当日それを秀吉が着ている時間は短いだろうなと慶次はげんなりしながら推測した。
  • 悪魔6
    オリジナル 悪魔6 【君は人魚】 人魚姫は愚かであるとセイレーンは嗤う。 「喰っちまえば良かったんだよ」 性欲と食欲が極端に近い人魚種は愛情は欲情であり食欲だ。食欲に支配されているというとヤジフーもそうであるが、暴食のヤジフーと人魚種は違う。 「綺麗な鰭も綺麗な声も失うことはなかったんだよ。愛しい相手は喰う。これに限るね、我が身の血となり肉となり至上の交わりとなす、だ」 愛情が湧かない相手にはセイレーンは誘惑の美声どころかこうした擦れた娼婦のような口ぶりだが、ひとたびそれが意中の相手となれば麗しいオペレッタとなる。 「それで?アンタが来たのは何の御用だい」 「単に使いだ。我が主から海王殿へ」 セイレーンは海面より岩場に立つ血涙の悪魔を見あげる。両目を閉じ、頬を血で濡らす他にはこれといって平凡な悪魔である。蝙蝠の翼、黒衣。 「密書かい? アンタの主は炎魔様と仲がよろしいって...
  • 学園たけとみ4
    学園たけとみ4 一昔前は没収ものだったが今となっては高校生の必須アイテム携帯電話。 今まで必要がなくて持ち歩かなかったのだが「連絡に不便だから」と熱心に諭されて購入することになった。 「短縮番号0に僕のをいれておいたからね」 「あまり必要があるとも思えないが」 秀吉の言葉に一瞬ブリザードが吹き荒れ半兵衛の生命線が切れるかと思われた。 が、よくも悪くも半兵衛の命運を左右していることをしらない秀吉は小石のような機械を弄ぶ。 「連絡せずともおまえはいつもいるではないか」 「…ああ秀吉、そうだともその通りさ…」 やっぱり最高だよ秀吉…と呟く半兵衛を見ながら、そのうちGPSつき発信装置とか付けないと安心できなくなりそうだな、と慶次は遠くから生徒会ツートップを見守った。
  • 逃亡者2
    オリジナル 逃亡者2 【「…お悔やみを」】 根を張らないまま生活を続けていると、そのうちにどこかで行き倒れる可能性はあるだろうと思いつつも、今日も逃亡者の生活を続けている。 もはやそれはライフワーク。悲壮感もなにもありゃしない。 とある街で、ひっかかるように滞在していた時に派手な葬列に出会った。赤や黄色や金に銀、様々に鮮やかな衣装をつけて、一様に笑いさざめきながらガラスの箱に収めた死体を担いで街中を練り歩く。 「こりゃカーニバル?」 うっそり尋ねてみると、オレンジ売りの爺が涙型に刳りぬいたオレンジの皮を張り付けた帽子の影で首を振った。 「この街の伝統的な葬式だよ」 「ずいぶん賑やかだねい。楽しくなりそ」 「悲しみも憎しみも死ぬことへの喪失には勝てないさ」 「じいさんポエマー」 「これでも毎日日報の自由詩欄の常連じゃわい」 そいつは失礼しました。 義眼だと一目でわかる風体の彼にひ...
  • 部屋
    小ネタ 部屋 探索から一度戻って自室に帰った場合、一緒に連れてるバディの補正がかかっている=バディも葉佩の部屋に来ているということになりませんか?(特記事項:言いがかりです) あの部屋に。 ※取手・皆守(両手に花)バディの場合 葉「さ!とりあえずくつろいでて!」 皆「…帰る」 取「ま、まぁまぁ皆守君…」(というかあの武者鎧がこっち見てるような気がするのは気のせいだよねはっちゃん…!?←気弱です) ※真理野・ジェイド(無駄にジャパネスク)バディの場合 葉「ま、とりあえずくつろいでて!」 J「…この武者鎧…」 真「うむ、なかなかの一品だ」 J「わかるかい、この威しのすばらしさが…!」(←コレクターです) ※夷澤・響(色んな意味でかわいい後輩s)バディの場合 葉「さ、とりあえずくつろいでろよ」 響「おにいちゃんの部屋…」 夷「…落ち着かねぇ」 誰が来てもくつろいでくれそうに...
  • 郷愁2
    オリジナル 郷愁2 公園 「あー……」 缶コーヒー片手に休憩を楽しむため、ミシモは地下から地上にあがっていた。紙屋町西という電停を中心とした一角は繁華街というほどでもないが、八丁堀駅に並ぶ福屋、天満屋に続いて、天下の名店そごうがある。さらにはその近くに数年前、ハンズという日曜大工専門店みたいな大きな店ができたがミシモはまだ行ったことがない。 ビジネス街とショッピング街の顔を持つ市内でも賑わうところ。ここで休もうとするならば、市民球場の向かいで緑の豊かな原爆ドーム周辺のベンチがいい。整備されて観光の目を意識された公園はいささか人の出入りが多いものの、日の光をいっぱいに浴びる公園ではミシモが見たくないアレやソレやの気配が地下に比べて格段に少なかった。 「ミシモさんっ」 犬ころのような弾んだ声を出して飛びついてきたのはミシモの主なガード担当区シャレオの地縛霊ヨシタだった。シャレオの地上...
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    オリジナル 逃亡者1 【ナイフとフォークでなにが切れる?】 ※痛い表現アリ 「ナイフとフォークでなにが切れる?」 昼下がり。 軽食堂ツァラストゥラの自慢といえば、ランチタイムのシェフおすすめコース。 オードブルからデザートまでちょっとした高級感を与えながら、それでもお手頃価格。 中流から上流の連中が住まう住宅街にほど近いこの店の戦略はなかなか当たっているといえよう。 そのメインディッシュ。 仔牛のソテーを切り分け、ほとんどを腹におさめながら、赤い義眼をはめた男が呟いた。いや、呟くというよりは周りにさらりと聞こえる程度に。 「食器はなかなかに神聖な歴史を持っていると思うんだよ。今じゃお茶の間でも手に入る代物になっているけど、これだけ浸透してると聖書みたいだよな」 万人に扱えるその単純なシルバーを手にする彼の周りを、じりじりと輪を狭めてくる老若男女。異様な光景であったが咎める者もいな...
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