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<p><span style="font-size:large;">フィギュアスケート日本女子ファンブック 2013(2013.03.12
発行)</span></p>
<p>安藤美姫〜華やぐ美姫、再び<br />
安藤美姫が競技の第一線を離れてからもうすぐ2年<br />
1年の充電期間を経ても、試合の氷に戻らなかった彼女の事をしびれを切らしながら<br />
待っている人は多いだろう。シーズンたけなわの今、この人がいないと日本女子は少しさびしい、と…。<br />
ソチ五輪シーズンに向けて安藤美姫は再び戦う姿を見せてくれるのか、どうか。<br />
そして再び彼女が動き出したとき、彼女が見せるのはどんな表情、どんなスケートだろうか。<br /><br />
たくさんのファンが衝撃を受けた安藤美姫のGPS欠場の一報。<br />
世界チャンピオンになった10-11シーズンの後、彼女は国内外のアイスショーに出演し<br />
スケート教室、ボランティアなど様々な活動に勤しみ、充実した日々を送ってきた。<br />
その充電の成果を今シーズンこそ見せてくれるのではないか。人々が期待していた矢先の残念な発表。<br />
今年も試合に出ない、その決断の影で世界チャンピオンは自らの進むべき道を探していた。</p>
<p>インタ前半は10月、アイスショーの行われた長岡にて<br />
安藤:<br />
「何の為に試合に出るのか今はなんだか、その目標が見つけられないんです」<br />
例え話をすると10ー11、モスクワの世界選手権があった時は1年を通していいシーズンでした。<br />
五輪が終わった次のシーズン。実は1年オフを取るつもりだったのに、ニコライに無理矢理試合に出させられたんですよ(笑)<br />
震災前は東京で行われる予定だった。<br />
「地元で開催される世界選手権、美姫にとって凄く思い入れのある場所なんだから、もう一度世界選手権を目指して頑張りなさい」<br />
でも私はすっかりオフと決めていてたから試合に出るのが凄くイヤだったんです。<br />
その春はリンクにも乗りたいと思うまで乗らなかったぐらい。とにかく気持ちが全く試合に向かなかった。<br />
だけど夏の間はいくつかのショーに呼ばれてる。<br />
「じゃあ、いい機会だからいくつかのショーナンバーを沢山作ろうとニコライは言いました」<br />
「色んなジャンルに挑戦して色々なミキをショーで見せられるようになりなさい」って。<br />
それでまずエキシビ用の曲を3曲も用意したんです。<br />
そのプログラムを持って6月のDOIに出たら、みんなが試合用のSPを滑っていました。<br />
そんな姿を見ていると「あ、自分も試合のプロやりたいかも…」って…どんどん試合で滑るイメージが湧いてきてしまった。<br />
ショーナンバーを滑りながらも「試合ではこんな曲を滑りたい」「早く試合に出たいな」って気持ちが生まれてきました。</p>
<p>夏のショーが終わってアメリカに帰る頃には、もうちゃんと目標も持てていたんです。<br />
この数年の自分はジャンプはちょっと簡単なものを跳んで、フリーの成績を安定させてきました。<br />
トータルな完成度も求めようと頑張って表現も磨いてきた。<br />
でも、ちっちゃい頃の私はジャンプの安藤美姫でした。ジャンプはミキ、表現は由希奈ちゃんって感じで<br />
2人で大きく取り上げて頂いたりもした。じゃあ、ここでもう1回、自分のジャンプをみんなに印象づけたいな、<br />
そう思ったんです。<br />
そこから2A-3Tとか、それまでやらなかったジャンプの練習も始めました。<br />
FSでは後半2分以降に加点がつく、体力的に大変なその時間にジャンプを5本跳んでみよう、そんなチャレンジすることも決めた。<br />
後半5本なんて最初のうちは全然跳べなかったんですよ!でも自分で決めた目標があって<br />
前に進む為の力があったから、練習はキツくても毎日、すごく楽しかったんですよ。<br />
試合が始まってからも一戦目のSPから3ー3を入れて、回転不足だったけれど認定はされた。<br />
FSで後半5本っていう大変なことに挑戦するのは楽しかった。<br />
ちゃんと目標があって、そのひとつひとつに挑戦して、失敗したら次はどう取り戻すべきかも考えて。<br />
やるべきことが明確に見えて、少しずつ自信が付いてきて…そんなふうに毎日を過ごしたんです。</p>
<p>もちろん、毎年毎年、気持ちは違うからその年みたいに上手くいくシーズンばかりじゃない。<br />
時には「滑るのイヤだ」と思う年もありました。<br />
でも最終的には試合に出たい気持ちにもなれたし、試合に出る事の自分なりの意味を何かしら見つけていた。<br />
そんな目標、試合に出る意味、いちばん大事なものが今年はまだ見つからないんですよ…。<br />
試合に出ない、彼女なりの理由。それを聞いて人はどう思うのだろうか?<br />
ただ、我が儘を通しているだけと思う人入るかもいれない。だが、彼女が彼女なりのやり方で気持ちを持ち上げた<br />
シーズンには世界の頂点で多くの人を魅了する演技を見せている。<br />
それが安藤美姫のスタイルだということを皆、知っているから。<br />
たくさんのファンが辛抱強く、彼女の復帰を待っているのだ。そして彼女自身もなんとか試合に気持ちを傾けるべく<br />
ひとり葛藤を続けていた。</p>
<p>今シーズンのGPSはちょっとルールが変わってしまってエントリーするには<br />
絶対出場しますというサインをする義務があったんですね。<br />
それが5月ぐらいの時点で考える期間が凄く短かった。<br />
自分としてはDOIの後くらいにフィーリングを見ながら試合に出るか出ないかきちんと判断したかったんです。<br />
本当はプログラムをゆっくり作って9月くらいに決められたらいいのにな、と思っていた。<br />
それが出来ないうちにサインだけすることになってしまって…そこからはちょっと辛かったですね。<br />
試合に出るのだったら、やっぱりちゃんと目標を見つけたかったから、色々と考えもしたんです。<br /><br />
アイスショーでは今季用に作ったSPを滑ってみました。<br />
人前で滑れば自分もお客さんも「今季のSPだ!」って眼で見るから、そこから気持ちが動くかもしれない、と。<br />
でも駄目でした。自分でもびっくりするくらい、プログラムに集中できなかったんです。<br />
このプロが嫌いなわけじゃなくて、曲も好きだし、たぶんステファンの振り付けもちゃんと滑ったら<br />
すごくいいものになったと思う。なのに滑っていても不思議なくらい楽しくなくて気持ちがチーンって落ち込んでいって…。<br />
こんなこといつものショーでは全くないんですよ。今日はあまり良くない滑りだったということはあっても<br />
意識が上の空になってしまう事なんてない。そのくらい、試合のプロに集中できなかったんです。<br />
これはSPだと考えないでエキシだと思って滑ろうとしました、でも、やっぱり無理だった。<br />
人はどうしても「新しいSPだ!」って期待してくれる。<br />
それが何だか辛くて、急遽、SPの「You must〜」に変更してしまった。</p>
<p>そんな状態だから応援してくれる人たちに「今年、頑張ってね」「試合、楽しみにしてるわ」って<br />
言われる事も…ちょっと辛かったですね。<br />
もちろん、応援してくれる方がこんなに沢山いることはすごく幸せです。<br />
でも、その言葉を言われた瞬間はちょっと辛くて涙も出てきた。<br />
プロもSPは作ってみたけれど、FSは滑りたい曲も見つからなくて、まだ何も出来ていないんですよ。<br />
ショーナンバーならいくらでも作れて、賢二先生に「こんな曲どうですか?」って提案もできた。<br />
でも試合で滑りたい曲はどうしても出てこなくて「ミキはどんな曲がいいの?」って<br />
ステファンに聞かれても「うーん」って(笑)<br />
やっぱり今はまだ、どうしても…試合に気持ちが向かないのかな。<br /><br />
そんな風に思ってしまったのは…昨シーズン1年、現役を続けていたら見えない角度からスケートの報道を見た。<br />
そのことも影響しているかもしれません。<br />
ショーに出ながらもニュースを見れば、スケートの試合結果は知ることが出来る。<br />
その報道のされ方を見て「スケートってこんなに小さい世界なんだ…」って少し驚いたんです。<br />
選手として中にいた時は「たくさん報道されてるんだな」って思ってた。<br />
でも外から報道を見たり、話題性を感じたりすると<br />
「スケートに比べたら野球やサッカーのポピュラリティは本当にすごいな」と思ったんです。<br />
野球というスポーツ、サッカーというスポーツそのものに人気があって、みんながどんなスポーツか知っている。<br />
報道もちゃんとスポーツの報道をしています。でもスケートはフィギュアがポピュラーなのではなく<br />
競技者個々が有名なだけ。だから、一般の方は結果しか見ないし、報道のされ方もスポーツではなく<br />
アイドルを扱うような形になってしまう。アイドル扱いされて変なカメラに追いかけられたりする一方で<br />
「試合に出ない」と言えば「アスリートなのに」って批判されてしまう。</p>
<p>もちろん、仕方ないことだとわかっています。<br />
日本ではアスリートイコール結果を出さなくちゃいけない。目標を立て、休み暇もなく練習しなくちゃいけない。<br />
でも私にとって大事なのは結果じゃなかったんです。それよりも目標に向かって毎日、どう過ごしたか。<br />
どんな時間を過ごして試合まで調整していったか。24時間氷の上に乗ってるわけではないから<br />
プライベートの時間も大切に出来たか。そんなことが全て大事でそれが出来た10-11シーズンは<br />
丸ごと一年365日が充実していました。だから「すごく充実したいいシーズンでした」と自分では言うけれど…。<br />
報道では「6戦5勝」とだけ言われてしまう。一般の方は5勝という結果を見ていい年だったねと言う。<br />
そう言われることが多いとやっぱり試合って、アスリートって結果だけなのかなあと思ってしまいました。<br />
振り返れば、自分は本当に小さい頃からスケートに結果を求めてこなかった。<br />
それよりもお客さんの前でどれだけの人の心に残る演技が出来るかを、ずっとずっと目指してやってきました。<br />
だから、例えば、演技に納得が行かないのに、結果だけついてきてしまうと、すごく落ち込むんです。<br />
あんな演技だったのにメダルを貰ってしまった自分が恥ずかしくなっちゃう。<br />
それなら逆に演技が凄く良くて最下位の方がずっといい…。<br />
そんなところがアスリートとして自分の弱いところなんでしょうね。<br />
現役中はアスリートとして扱われること、そうあることを期待されるのは仕方がない、<br />
それならばもう試合ではなく、これからはアイスショーでオファーが貰えるように頑張っていけばいい…<br />
そんな気持ちの方が強くなってしまったんです。<br /><br />
試合よりもショーへ ー<br />
一年の充電期間が彼女にそんな気持ちを抱かせることを予想していた人はいたかもしれない。<br />
それくらい、世界中のアイスショーに出演していた安藤美姫は自分を表現していたから。</p>
<p>一年休みを取って現役選手としての生活から離れて、ショーにも沢山出させて頂いて<br />
特にアメリカのショーで生歌で滑らせて頂いた時、アイスショーの素晴らしさを感じたんです。<br />
大人も沢山観に来るショーでみんなちょっとオシャレをして、おしゃれなショーを楽しんで、<br />
それほどお客さんの数は多くないのに、すごく盛り上がってる…。<br />
日本にはまだ、そこまでショーの文化は浸透してないですよね。<br />
じゃあ、これからショーの世界をどんどん盛り上げていくこともできるかなって。<br />
そちらに夢を持つようになったんです。<br />
人生を考えると現役はほんの短い、ここからここまでの間だけ。その後プロになったとき、自分がどう生きたいのか<br />
何をしたいのかすごく考えちゃったんですね。そしたらショーの方に気持ちが向いたら<br />
もう全然試合が恋しくなくなってしまった。<br />
競技を離れたら少しは寂しいと思うかな。またすごく出たくなるのかな。とも思ったのにもう全然なんです(笑)<br /><br />
もちろん、やってみたいことはショーだけじゃない。<br />
スケート靴を履いて初めて持った夢「コーチになりたい」って気持ちは今でもしっかりあります。<br />
さらに新しい目標としてスケートを野球やサッカーのように、気軽に手を出せるスポーツにしたいな。<br />
その為に何かしたいなという気持ちもあるんですよ。</p>
<p>今年は北海道でスケート教室のイベントをさせて頂いたんですが(8月、フィギュアスケートフェスタ2012in札幌)<br />
そこに参加した方からも「意外に簡単に始められるものなんですね!」って声を沢山聞けました。<br />
今まではなかなか滑る機会がなかったけれど、美姫を応援して下さる方達が<br />
「いい機会だから」と思って参加してくれた。このイベントがすごく楽しかったんですよ!<br />
スケート靴を始めて履くような方もいれば、5級を持ってる選手もいたし、小さい子もいれば、お年寄りもいた。<br />
最後にはみんなで「くるみ割り人形」の曲に振りつけして、プチエキシビジョンもしたんです。<br />
クラスごとに振り付けは違っていて、ちっちゃい子には可愛らしい振り付け。<br />
級を持ってる子たちには、ちょっとバレエっぽい動きも入れたりして。<br />
同じ曲でも上手になればこんな表現も出来るんだよってことも見せられたりし<br />
みんなで作り上げる楽しさも、人前で滑るちょっとした緊張も、少しずつ体験してもらえた。<br /><br />
そんなふうにテレビで見るのとは全然違うってこと、気軽に始められるスポーツだってことを<br />
自分なりに広めていきたいんです。アイスショーもそうですよね。<br />
スポンサーがつかなくても、小さな町でもいい、誰でも来やすい雰囲気のアイスショーをどんどん開いて<br />
スケートのショーってすごくいいなって思う人が増えてくれたらいい。<br />
野球、サッカー、テニス、水泳のように家族で観に行けるスポーツに。<br />
休みだからスケートに行こうよとその気軽に、遊びでスケートに行けるように、ミキがスケートを始めた時は<br />
まさにそんな感じだったから、自分にできることは限られていて、まだまだ難しいことも沢山あります。<br />
でも今は、試合に出るよりも、そっちの活動をどんどんしたい…そんな気持ちになっているんです。<br /><br />
これほどやりがいを感じるものを見出したのなら、安藤が競技に戻ることがなくても<br />
彼女の進むべき道を応援するべきかもしれない。彼女の歩んできた道の複雑さを考えても<br />
無理して試合に出なくていいんだよ…などという気持ちになってしまうほどだ、<br />
それでも彼女は来シーズンー再び競技に戻ってくるという。</p>
<p>これまでのことを考えると…私が試合に出ようとする理由…それは「誰かのために」だったことが多いような気がします。<br />
例えば初めてニコライに習った年は、ニコライという凄い先生の名声を自分が壊さないように<br />
頑張らないといけない。そう思ってたら世界選手権で優勝しちゃったんです(笑)<br />
バンクーバー五輪の時はトリノからずっと応援してくれた人たちを、絶対もう1度、オリンピックに連れて行きたい<br />
と思った、トリノの時に一緒に泣いてくれた人たち、そこからずっと応援してくれた人に感謝の気持ちを込めて<br />
一生懸命やろう、と。ファンの皆さんに自分が滑ってるところを見て、絶対泣いてもらうんだ!<br />
その位の勢いで頑張ったから、あの年はファイナルで2番になれたんです。<br />
そう考えると応援してくれる人のパワーはすごく大きいな、こんなにたくさんの人のパワーを借りて<br />
自分は試合をしてるんだなと思いました。<br />
ロシアの世界選手権の年は、一通の手紙に背中を押されて練習が出来るようになったんですよ。<br />
それは被災された方からの手紙。震災が起きて被災した方の悲しみ、昨日までいた人が急にいなくなってしまう辛さ<br />
普通の生活が出来なくなってしまう大変さ…そんなことを考えると練習に身が入らなくなってしまったんです。<br />
自分も父を亡くしてスケートから離れてしまった時期があったから、被災された方のことを考えると<br />
リンクにいてもモヤモヤしてしまった。<br />
「傷ついてる方が沢山いるのに私は安全な場所で練習をしているなんて…」って…。<br />
でもお手紙には「こんな時だからこそ美姫ちゃんには頑張って欲しいです」って書かれてたんです。<br />
自分は今まで、お手紙をくれた人から応援のパワーを貰って滑ってきた。<br />
「じゃあ、今度は、時bんがそんな人たちの為のパワーに慣れるかもしれない」って、初めて思えた。<br />
自分のスケートが誰かの笑顔に繋がるかもしれないって、初めて意識したとき「じゃあ、頑張ろう」って<br />
もう1度ちゃんと練習を始めることが出来たんですね。</p>
<p>そんな皆さんにお礼をする為にも「このままもう選手を辞めます」ってことはしません。出来ればソチまで。<br />
気持ちがちゃんと戻ってきたら、B級試合からでも出せさてもらって<br />
世界ランキングやポイントもなんとか稼いで。オリンピックに出られるかどうかは<br />
その時の状況次第だけれど、でもどこかで必ず、引退試合はしたいと思っています。<br />
それもきちんと、気持ちを込めて。<br />
今まで応援してくれた皆さんにお礼をできるのは、やっぱり試合の場だと思うから。<br />
どこかで必ず、きちんとした演技を見せて、皆さんにご挨拶したいです。<br /><br />
でもそこまでの道のりでもう無理はしません<br />
「アスリートだからストイックに」って固定観念に縛られたくない。<br />
自分はモスクワの世界選手権のシーズンに、普通に自分らしく過ごして、一番いいシーズンが送れた。<br />
だからそのスタイルが一番合っていると思うんです。<br />
もう人に合わせたり、世間の眼に合わせたりはしない。<br />
無理はしないで、自分のペースできちんと。最後に皆さんにご挨拶するまで、そんなスケートをしていきたいと思っています。<br /><br />
GPS欠場が発表された昨年秋。世間では「引退」の報道ばかりが大きく流れてしまったが<br />
彼女はきちんと自分なりのやり方で、ソチ五輪のシーズンに向かう準備をしていた。<br />
何ものにも縛られずに、ただ応援する人々の前に安藤美姫の姿を見せて、そこから、新たな道を歩んで生きたい、と。</p>
<p>2-13シーズンー 安藤美姫のいないシーズンは進むものの、彼女の動向への人々の関心が薄れることはない。<br />
シーズン真っただ中の2月、しばらくはアイスショーも練習もお休み中だという彼女の話を、もう1度聞くことが出来た。<br />
「はい、大丈夫です。美姫はすごく元気です。(笑)」<br />
「休んでいる間はスケートの試合は…全然見てないんですよ」「GP始まったの?」「え?全日本今日から?」みたいな感じ。<br />
「みんな頑張っているなあ」くらいの気持ちですね。<br />
私がもし試合に出ていれば?それはみんなに言われるけれど、今は休憩中なんだから、そんなこと言われても困ります(笑)<br />
本当は今シーズンで…終わりにするつもりでした。<br />
モスクワのシーズンで達成感もあったし、後悔は何もない。充実した毎日を送れて、試合出も目標が達成できて…<br />
「あ、自分がずっと求めてきた選手人生はこれだったのか」って気持ちになれた。<br />
だからもうアマじゃなくっちゃダメ、という気持ちもなかったし、引退のご挨拶はショーでしっかり出来たら<br />
それでいいんじゃないかな、ってずっと思っていたんです。<br /><br />
でも色んな人と話をしたら応援してくれる皆さんの求めているものも「結果じゃない」って言う。<br />
結果じゃなくて「もう1度、試合で滑ってる姿を見て、応援で終わりたい」そう言ってくれる人が多かったんです。<br />
ファンの方もそうだし、周りで協力してくれる人もそう。<br />
じゃあ、最後にやっぱりご挨拶としてもう一年頑張ろうかな…そんな気持ちになったんです。</p>
<p>今は練習をしていないけど、SPはまた新しく作ったんですよ。<br />
FSはまだだけれどSPが出来ているだけで気が楽ですね。<br />
来シーズン、もしルールが変わっても、SPならちょっと手直したくらいで大丈夫だから。<br />
練習はいつ再開するかわからないけれど、春のショーに間に合うように調整はできると思っています。<br />
プログラムはひとつ出来たけれど、次のシーズンに何を見せたいか、何を目標に滑るのかは…今はまだ見つかっていません。<br />
バンクーバーの時は絶対、オリンピックに出る、そしてトリノと同じ失敗をしないように、試合運びをして<br />
納得の行く演技をしたい、そんなことを考えていました。<br />
でもそんな、自分の為のスケートはモスクワのシーズンに全部できたから。<br /><br />
だから最後の試合は中部ブロックでも、西日本選手権でもいい。<br />
できれば全日本まで行きたいなという感じです。<br />
オリンピックに行けるかどうか…確率は高くはないですよね(笑)<br />
でも行けるとしたらモーグルの伊藤ミキちゃんと3度目のオリンピックに一緒に出られることが楽しみかな!<br />
トリノの時はお互いに知らなかったけれど、中京大で同じクラスになって「絶対にバンクーバーに行こうね!」って約束した。<br />
バンクーバーの時は街歩きをしながら、色々な話をしたんですよ。<br />
私はそこで悔いが残らなかったけれど、ミキちゃんは「もうちょっと出来たんじゃないかな…」なんて気持ちがあったみたいで<br />
ソチを目標にしている。<br />
だからもし私もオリンピックに出られるとしたら、みきちゃんと一緒に出られるのが楽しみなんです。</p>
<p>でも、ソチオリンピックー それほど重く考えていません。<br />
「絶対、ソチがゴール」とは思っていないし、そこまで気持ちをひっつめてやったら、持たない気がするから。<br />
周りはみんな「最後のシーズン、ちゃんとやらないとダメだよ」って雰囲気で、そのことの大事さもわかっています。<br />
でもあまり重くは考えず、マイペースでやりたいな。<br />
もちろん、私の我が儘や状況をわかってくれる人、それでも協力してくれる人、一緒にやっていこう、と言ってくれる人たちは<br />
すごく沢山いてくれる。<br />
だから来シーズンは頑張らないといけないです。<br />
頑張らないといけないけれど、楽しみながらマイペースに頑張っていきたい。<br />
来シーズンの安藤美姫を…はい、ぜひ楽しみにしていて下さい。<br /><br />
安藤美姫のたった一年のアスリートとしての挑戦。<br />
それは勝つ為の戦いではない。これまで彼女がしてきたように、誰かの為の戦いであり、自分が自分らしくある為の戦いだ。<br />
アスリートが自分らしくあってはいけないの?ーずっと彼女が問いかけてきたもの、その集大成を見せる為に。<br />
彼女がどこまで行けるかはわからない。<br />
でも次のシーズン、私たちが目にするのは、これまでで一番、安藤美姫らしい、安藤美姫だ。<br /><br />
(企画&執筆:青嶋ひろの)</p>
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