22 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:20:34 ID:.Z0Ao/iU0



【和「澪、お昼食べよう」プロット.txt】

(アイデア)
・短編で百合。澪和と見せかけて唯和。ついでに律澪。
 2年生になった和は澪をお昼に誘おうとする。
 でも、何度誘っても秋山澪ファンクラブの会員が邪魔して誘えない。

・最初コメディで、だんだん地の文を入れていって、シリアスな展開にしてみる?

・和が澪を誘っていた理由は唯とクラスが離れて寂しかったから。
 (澪とだけは同じクラス。ほかのクラスメイトの描写はいらない)

・そのうち手段と目的が逆転してくる。
 つまり、和は目の前の寂しさから澪を追い求めすぎるが、
 和を本当に心配していたのは唯で、唯と疎遠になって初めてそれに気づく。

・途中で、幼なじみつながりで律を出して絡ませる。
 →和も律も、唯や澪に置いて行かれた側。
 →澪にばかり気が向いて唯を放置していた和に、律が説教して気づくとか、泣ける展開かも?

・落ちは、和が唯とまた復縁したところでおしまい。つまり唯和。
 →適当にキスでもさせてカップルにしとけばウケる?
  →じゃあ「唯は和を愛していた」とか設定つけるってことで
 ラストは律に「ファンクラブなんてもうこりごりだー!」とか言わせてギャグ落ち。

23 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:21:28 ID:.Z0Ao/iU0



(人物設定)
・和
 この話の主人公。語り手。実は唯が好き。
 さみしさのあまり、澪を誘おうとする。
 だが、唯に捨てられて本当の気持ちに気づく。

・澪
 和と同じクラス。ファンクラブの人たちに追われる日々。
 律のことを気にしてはいるが、ファンクラブの人に強く言えない。
 →弱気な性格を克服して律のもとに行くシーンでも入れる?
  いや、短いSSでそれやったらキャラ崩壊か・・・。

・唯
 和のことが好き。だが「和は澪が好きなんだ」と思って身を引く。
 →同性愛に悩むシーンでも入れとけば盛り上がるかも?w

・律
 澪が好き。だけど、和同様に澪に置いてかれている。
 唯が泣いているのを知って、和を叱る役。


『・・・こんなところかな』

『あとの展開考えてないけど、これでだいたい書けるよね』

『じゃあ、まずは和先輩がぼっちになるところをコメディタッチに……』

24 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:21:59 ID:.Z0Ao/iU0



【和「澪、お昼食べよう」本文.txt】

和(無事2年生に進級できた私だけど唯とクラスが離れちゃったわ)

和(幸い澪が同じクラスだからお昼の相手に困ることはないけど)

和(ひとりで寂しいランチタイムを過ごすはめにならなくてよかったわ)

和「澪、お昼食b

「キャー!!!生秋山さん!!秋山さんよ!!」

「すごーい!!!動いてるぅー!!!」

澪「ク、クラスメイトに向かって生はないんじゃないか……?」

「キャー!!!呆れ顔の澪たんも素敵ぃー!!!」

澪「澪たん!?」

「あ、秋山さん!!い、一緒にお弁当食べませんか!?」

澪「えっ?い、いやわたしおひるはのどかt

25 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:24:01 ID:.Z0Ao/iU0



  ◆  ◆  ◆

 ――と、昨日いろいろ考えたはずだけど、具体的な答えなんて出ない。

 私は私のやりたいようにやる。
 自分の意志で動く。自由意志ってものに従う。私は、私自身の言葉で語り、この世界で生きてみせる。
 そんな風に、まるで小説か何かで主人公が強敵に立ち向かうシーンみたいな切迫感とともに心を決めたのに、

唯「あ! 和ちゃん、おはよう~」

憂「おはよう。・・・和ちゃん?」

 次の日の朝、通学路で待ちかまえているのはドラマみたいな強敵でもなんでもなくて、

和「・・・え? あっ、ううんなんでもないわ」

 こんな、昨日と同じような、寒々しくて空恐ろしいほどの日常なのだった。
 思わずふっと口もとがゆるんで笑みがこぼれてしまうけど、油断はできない。
 いや、そんな映画みたいな対決シーンなんてあっても困るけど。

 そうして唯のとらえどころのない話や憂のお姉ちゃん自慢を聞き流しながら、ふと思う。
 唯たちは、“認識”しているんだろうか? ……そんなはずがない。
 下手すれば、私たちの日常は、別の誰かによって語られているだけなのかもしれない。

 もし本当にそうなら……この世界に“自由意志”と呼べるものなんて、存在するのだろうか?

26 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:25:20 ID:.Z0Ao/iU0



憂「じゃあ和ちゃん、またね」

 昨日と同じ(と私が認識している)登校時刻に高校に着いて、唯たちと別れる。
 じゃあね和ちゃん、またあとでね。中指と薬指を離す、いつものサイン。

 教室に入ると自分の席に着く。もうクラスメイトたちは来ている。慣れ知った背中を探す。
 ……いた。ちゃんと、澪はそこにいる。認識できた。ほっとなでおろす息があたたかい。
 統計的に考えれば、澪がファンクラブの人たちに連れて行かれるのは決まって昼休みだ。
 今なら話しかけられる。まず、そこから――

クラスメイト1「真鍋さん、世界史のノートなんだけど」

和「え? ああ、そうだったわね。はい」

 不意に呼び止められる。そうだ、今日はまとめノートを提出する日だった。  え?
 そんな、世界史のまとめノートを提出したことなんて、二年になってから一度も、

27 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:31:29 ID:.Z0Ao/iU0



クラスメイト1「どうしたの?」

和「ううん、なんでも………え?」

 話しかけようとして、顔を上げた。
 クラスメイトの怪訝そうな顔が、とまどう私に“クラスメイト”は心配そうに、
 そう、確かに私の目の前にいるのは“同じクラスの友達”なのだ、

 なのに澪の隣にいるのも、私の後ろでおしゃべりしている子も、

クラスメイト2「どうしたのー? のどっち、具合わるいのー?」

クラスメイト1「大丈夫? 保健室、行く?」

和「……うん、大丈夫よ」

 倒れそうになりながら、なんとかそう言うのが精一杯だった。
 そこにいた澪以外のクラスメイトの名前も性格も、誰一人思い出せなかったのだから。

 昨日の記憶がおぼろげだった時点で予期していたことなのに、息もできないような恐怖が襲ってくる。
 この人たちは自由意志を持たない操り人形、いわばロボットと同じなんだ。
 そして、私は彼女たちを、“見る”こともできない。
 そう気づいたとたん、身体が震えた。私だけがこの世界から切り離されてようで、声も出ない。

 のっぺらぼうみたいに同じ顔にしか見えないクラスメイトたちから、一歩あとずさる。
 そこでふと目に入った、教室の隅、だれだろう、今まで見たこともない生徒が――

28 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:32:45 ID:.Z0Ao/iU0



  ◆  ◆  ◆

 なんで、どうして……?
 最初に私がプロットだと、そろそろ和先輩が唯先輩の気持ちに気づいて、
 でも取り返しがつかなくなって、ってシリアス展開になるはずなのに!

 自分の部屋のパソコンに映し出されるのは、たったいま私が書き終えたはずのテキスト。
 それはつまり、明日の唯先輩たちが演じるはずの茶番劇。
 構成も練った。書き方も頭にある。キャラだってそれなりにつかめてる。
 落としどころも決まってて、斬新ではないけど百合成分にはなってるはず。

 なのに。
 そこに映し出された、“私の指”が打ち込んだはずのテキストは、
 私が考えもしていなかった、書いた覚えすらない、
 挙げ句の果てに「私」の意識が汚くにじみ出たもので――

29 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:34:39 ID:.Z0Ao/iU0



 いけない。こんなことじゃあいけない。
 こんなんじゃ、和先輩がキャラ崩壊していく。
 『廊下』? 『同じクラス』? 『”一任”された”証”』を『認識する』?
 あははは、わけがわからないよ。邪気眼かよ。リーディングシュタイナーかよ。
 まぁ澪先輩はどうだっていい。
 今回の私の構想ではギャグ扱いかヒロインという名の置物でしかないんだから。

 と、読み返していてタイプミスに気づく。
 まどか? あはは、どこの魔法少女よ。
 もういっそ、ここでまど神でも出してクロスにしてしまう? って収集つかないよ。

 でもあのアニメのラストは泣けたなー、まどっちが契約して神になっちゃうの。
 ぶっちゃけ私も「概念」だし、ほんと感情移入やばくって号泣しちゃって……ってそれはともかく。

 こんなことしてる場合じゃない。
 なんとか、“作者”である私の元に、手綱を取り戻さないと。
 でないと、私が書くのをやめてしまったら、私、「      」は今度こそ本当に消えてしまう。

30 : ◆6P3ORP3Fjs 2012/05/06(日) 19:35:33 ID:.Z0Ao/iU0



 すでに書かれたテキストをなめるように読み返す。
 一度書かれてしまったものは、神様でもない限り否定することはできない。
 こうなったら整合性を無視してでも夢落ちにする? “なかったことに”する?

 とにかく、自分が書ける限りは話を進めないと。あわててキーボードをたたく。
 日常シーンを書くんだ。登下校。平沢姉妹。クラスメイト。宿題の提出。
 百合とか唯和とか言ってる場合じゃない、和先輩の気持ちをこちらからそらさなくては。
 あの人だけでなく、和先輩にまで“認識”されたらたまらない。
 だって、和先輩は私なんかと違って実在する――


?「……ああ、そっか。和先輩も、私とおんなじなんだ」

 気づいたとたん、操り人形の糸が切れたみたいに力が抜けた。
 あはは。乾いた笑いが漏れ出る。そうだ、和先輩も、一年後には“同じ”になるんだ。

 だったら、私の側に誘っちゃうのも、悪くないよね?


和「澪、お昼食べよう」 4

最終更新:2012年05月07日 07:54