605 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/04/30(月) 02:02:11.85 ID:gCOLagfm0


→D:「ひーめーちゃーん! 久しぶりに二人で帰らない?」
   保健室仲間の姫ちゃんと二人で帰宅。えへへっ。

 D:自分で取りにいく。


四人は窓の外の景色に視線を移しながら、どことなく急いた様子で動き始めた。
唯も椅子から立ち上がり、そっと患部を抑えながら養護の先生を見る。


唯「ありがとうございましたっ! またお願いしますっ」

「こらこら。またお願いされちゃ困るわよ……お大事にね」


唯の言葉に、和はたしなめるように笑い、姫子は小さく吹き出し、さわ子は眉をハの字にしながらも優しげに微笑んだ。
四人はドアに向かい、そろって保健室を出た。
校舎に人があまり残っていないのか、廊下はしんと静まり返っていた。
ジャージ姿の姫子は暑いのか、ぱたぱたと手であおいでいる。
唯が珍しそうにその様子を見ていると、ふいに横でさわ子が胸をそらせた。
声をしぼりだしながら、ゆったりと伸びをしている。
ふう、と息をついて伸びが終わると、唯の方に振り返った。


さわ子「ふうー……今日は疲れたわねえ、とんだハプニングがあったから……」

唯「うう……ご、ごめんなさいぃ……」

さわ子「なーんてね。せっかく手当してもらったんだから、早く帰って安静にしているのよ」

唯「うんっ、はい」

さわ子「……早く治すのよ、色々不便だと思うから」

唯「大丈夫だよぉ、もう全然平気!」

さわ子「さっきまで痛がってて何言ってんのよ、もう」


呆れ顔のさわ子に、和や姫子が小さく笑った。


さわ子「それじゃあね。あなたたちも今日はお疲れ様。暗くなる前に早く帰った方がいいわよ」

和「はい。今日はありがとうございました」

姫子「はい。また明日、先生」


二人の言葉にさわ子は笑みを返すと踵を返して歩き出し、職員室の方へと向かって行った。
次第に小さくなる背中に、唯が勢いよく一歩踏み出し、すうと大きく息を吸い込んだ。


唯「……さわちゃーん! 今日はありがとー! あとごめんねぇー!」


唯が叫ぶように言うと、ちらっとさわ子が振り向いた。
わずかに笑んでひらひらと手を振り、また歩き出して行った。

606 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/04/30(月) 02:02:49.45 ID:gCOLagfm0


しばらくさわ子の姿を見送ると、今度は和にくるりと振り返る。
視線を向ける和に、唯はどことなくもじもじとしながらぽつりと呟くように言う。


唯「……えへへ、あの、和ちゃんも、今日ありがとっ。あと、ごめんね」


唯らしからぬ弱気な様子にしばし目をぱちくりとさせる和。
少しして笑みをこぼし、眼鏡の奥の目が優しくなる。


和「……別にいいわよ、こんなのしょっちゅうだもの」

唯「の、和ちゃん……」

和「あまりひどくならなくてよかったじゃない。私はそれだけで十分だから」

唯「えへへ……ありがと」


和の心のこもった言葉に、唯は少し照れくさそうに肩をすくめた。
それを見た和も、口角を上げて優しげに微笑む。
ぽかぽかとするような温かい空気が流れ、どことなくくすぐったそうにする二人。
ふいに視線を感じ、和がちらとその方向を見る。


和「……なにかしら、立花さん」


見ると、姫子が抑えきれないようににんまりとし、わずかに白い歯を見せていた。


姫子「ううん別に。なんか、いいなって」

唯・和「「???」」

姫子「ふふふ、そう思っただけだから、気にしないで」


唯と和が首を傾げると、さらに姫子は笑みを深くし、嬉しそうな表情を見せた。

607 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/04/30(月) 02:03:46.31 ID:gCOLagfm0



和「ともかく、今日はもう遅いし早めに帰った方がいいわね。唯は安静の意味もこめて特にね」


その場の空気を引き締めるように和が促すと、唯も呼応するように頷く。


唯「うん、そうだね……。今日はさすがに疲れたから早いとこ鞄とってきて帰るよぉ」


唯が火傷をおさえながら、疲れたような笑みを浮かべて歩き出そうとすると、和の強い声が飛んだ。


和「唯、一人で大丈夫なの? ちゃんと帰れる?」

唯「大丈夫っ! ……っ、じゃない、かも……」


いまだに違和感のある右手を再び抑えて苦笑する唯。
和は眉をハの字にしながら心配そうにその様子を見つめる。


和「唯、もし何だったら……」

唯「ごめんね姫ちゃん、今日、一緒に帰ってもらっていーい?」


急に話を向けられた姫子は、目をぱちくりとさせる。
隣の和が静かに言いよどんだのを横目でちらりと見ながら、「いいよ、大丈夫」と頷いてみせた。


唯「えへへ、ありがとー! 助かりますっ!」

姫子「そんなに大したことはできないと思うけど、付き合うよ」

唯「なんのなんのっ。百人力だよぉ」


少しおどけてみせたあと、和の方を振り返る。


唯「ということで、姫ちゃんが一緒に帰ってくれることになったから、たぶん大丈夫だよー」

姫子「もう、たぶんって何ー?」

唯「えへへっ、ごめんごめん……」


軽くじゃれあう二人を見て、和がわずかにくすりとする。


和「……確かに、心配いらないみたいね」

唯「うんっ。大丈夫、大丈夫っ」

和「……それじゃ、立花さん。……唯のこと、よろしくね」

姫子「えっ、あ、うん。心配しないで」

和「ええ。……それじゃ、二人ともまた明日ね」


608 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/04/30(月) 02:04:15.49 ID:gCOLagfm0




いつもよりやや小さめの声で別れ、軽く手を振ってから和は歩き出した。
どこか気落ちしたような笑みが、二人の頭に残る。
和が廊下を曲がり、その背中が見えなくなると、ふとぽつりと姫子の声がした。


姫子「……ねえ唯」

唯「うん? なあに?」

姫子「あのー……よかったの?」

唯「ふえっ? なにが?」


要領を得ない問答に、唯が首を傾げる。


姫子「……真鍋さんも、一緒に帰らなくて大丈夫だった?」


唯は少し目を大きくしながらも、いつものようにゆったりとした口調で応える。


唯「うーん……たぶん和ちゃん、生徒会のお仕事があるから、邪魔しちゃいけないって思って……」


軽く頬をかきながら唯が続ける。


唯「それに、この前も一緒に帰ったし……何度も付き合ってもらったら大変じゃないかなって。ただでさえ今日の火傷で迷惑かけちゃったしね」

姫子「……ふーん……そっか」

唯「姫ちゃん?」

姫子「ううん、何でもない(そう、かなぁ……?)」


どこか納得のいっていない表情で顎に手を添える姫子を、唯は首を傾げながらしばし見つめていた。


610 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/04/30(月) 02:07:40.84 ID:gCOLagfm0




唯達と別れた後、和は数十分前と同じく生徒会室に向かっていた。
ふと、歩いている途中であるものを見つけ、方向を変えて歩を進める。
少し前に唯やさわ子を見かけたトイレに入り、洗面台に置いたままのペットボトルを手に取った。
中に入っていたミネラルウォーターで唯の手を処置した後、そのまま置き忘れていたようだ。


和「すっかり忘れていたわ……私もやっぱり気が動転していたのかしら」


呟くように言って、ペットボトルを近くのゴミ箱に捨て、トイレを出た。
それから生徒会室に到着し、いつもどおりに会長席につく。


和「(……これでいいのよね)」


中断していた作業を再び始めようと、ペンケースからペンをとった。


和(……唯には唯のやることがあるし、私には私のやることがあるんだから)

和(今までのように、”いざってときに頼りになる幼馴染”で)

和(……それで、いいんだから……)

和(……でも、あの子はもう、私以外にもちゃんと頼りになる人を見つけている)

和(…………)

和(…………今まで、あの子になんだかんだいってきたけれど)

和(本当に変わらなきゃいけないのは、私の方なのかもしれない……)


ペンをとった右手が止まってしまっていることに和はしばらく気付かなかった。


※和の心が、さらに曇ってきたようです。


611 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/04/30(月) 02:08:08.34 ID:gCOLagfm0




二人になった唯と姫子は、帰り道の計画を立てていた。
体操着の襟元をつまみ、風を送りながら姫子が言う。


姫子「とりあえずこのままじゃ帰れないし、私は部室で着替えてくるけど……唯はどうする?」

唯「うーん……どうしようかなぁ、教室で待っていようかなあ」

姫子「……唯、鞄は教室にあるの?」

唯「……あっ! そうだったっ!」


首を傾げる姫子に、唯がはっと顔を上げた。
えへへ、と照れくさそうに笑い、姫子に改めて向かい合う。


唯「そうそう、そういえば部室に置きっぱなしだったよう……じゃあ、私も部室に行って鞄とってきちゃうね」

姫子「一人で大丈夫? もしちょっと待っていてくれれば私が取りに行くよ?」


心配そうな姫子に、唯は安心させるように笑った。


唯「だいじょうぶっ! もう大分痛くなくなったし、取りにいくくらいは平気だよ!」


いった傍から、ぶんぶん手を振り回し顔をしかめる唯を訝しげに見る姫子。
少ししてからしょうがなさそうに息をつき、「じゃあ、そういうことにしようか」と答えた。


唯「大丈夫、大丈夫! ここから割と近いし一人で平気だよ」

姫子「ならいいけど……くれぐれも、急がなくていいからね、無理しないんだよ?」

唯「もー、大丈夫だよう……」


膨れる唯に小さく笑みを見せながら、姫子は早足で部室へと駆け戻って行った。
その背中を見送ると、唯も踵を返し、音楽室へと歩を進め始めた。

612 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/04/30(月) 02:08:40.21 ID:gCOLagfm0



音楽室に到着すると、蛍光灯が部室を出たときのまま部屋の中を煌々と照らしていた。
少しずれた椅子、机も出ていったときのままだ。


唯「……さわちゃんがすぐに連れて行ってくれたからね」


十数分前を思い出し、どことなくしんみりとしながら唯は鞄を探した。
見渡すと、ドアの近くに放り出されたまま置いてあった。
唯は、無事な左手で鞄をもち、左肩にかけると、ふうと一息つく。


唯「……早く戻った方がいいかな。ひょっとすると、姫ちゃんもう着替えちゃっているかもしれないし」


鞄をしっかりと持ち上げ、音楽室を後にしようとした。


*選択肢*

A:「うーん……もう、忘れ物ないよね?」
  念のために再確認。音楽室をぐるっと見渡してみようっと。

B:「……なんか色々あって疲れちゃったよ……ちょっと休もうっと」
  少しくらいなら休憩していいかな? 椅子に座ってぼーっとする。

C:「早く姫ちゃんに会わなくちゃね! もう、部室はでているかも……」
  着替え終わって、鞄をとりにいっているかも。教室へと向かう。

D:「手のことが心配だし、先に下駄箱で待っていようかな?」
  もう今日は遅いし、早めに下駄箱で姫ちゃんを待っていよう。


613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) 2012/04/30(月) 02:09:40.41 ID:LQcxPt56o


A

617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/30(月) 06:53:07.13 ID:S1WcWtj70


本物キター!!相変わらず忙しそうだなあ
一ヶ月単位でいなくなられると少し不安になるけど、更新してくれて良かったw

和ちゃんせつねぇ・・・
Aでお願いします

619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2012/04/30(月) 10:15:36.00 ID:fnI1+SYa0


待ってたよ、お帰り

Aで

621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) 2012/04/30(月) 13:58:10.49 ID:wePCrSzA0


おかえりなさい
待ってました!!

Aで

623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) 2012/04/30(月) 20:15:48.80 ID:PABRYhrOo


お帰り!これからもちょこちょこ頑張ってください。

aでお願いします!

624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/30(月) 22:07:48.47 ID:ubcCgO2d0


お帰り!
Aかな

625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/01(火) 00:30:40.50 ID:n7Eq7rfDO



俺もだけどやっぱり>>1さんのお帰りをみんな心待にしていたんだなぁ~

627 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/01(火) 01:33:39.76 ID:/KxG3kJB0



→A:「うーん……もう、忘れ物ないよね?」
  念のために再確認。音楽室をぐるっと見渡してみようっと。


いったんは帰り支度を整えた唯だが、なぜか後ろ髪を引かれ、くるりと体の向きを変える。
よく目を凝らして見渡したが、特に鞄以外の持ち物はないようだった。
左肩をちらりと見下ろし、鞄のファスナーが閉じていることも確認する。


唯「……うんっ、特にないよね。なーんか忘れている気がしたけど…………ああっ!!」


再び見渡した唯は、あるところに目を止め、思わず声をあげる。
部屋の中央、いつも軽音部の仲間たちと楽しげに話す五つの机の上にあるものを見つけた。


唯「忘れてたよぉ……目立つ所にあったのになんで気づかなかったんだろう……」


そこには、トレイの上で紅色の液体を滴らせながら転がっているティーカップがあった。
さわ子にお茶を運ぼうとして失敗した時のままである。
心なしかティーポットも傾いており、注ぎ口から濃くなり過ぎた紅茶がわずかにこぼれていた。
唯はすぐに机に駆けより、状態を確認する。


唯「……壊れていなくてよかったぁ……でも、このままにしておくわけにもいかないよね」

唯「うーん、どうしようかなぁ……」


*選択肢*

A:「ムギちゃんが使いやすいように、ちゃんと元に戻しておかなくちゃ!」
   ティーセットを元の場所に片づける。

B:「ちゃんと片付けられるか不安だし……とりあえず、トレイの上だけでも綺麗にしておこうかなぁ」
   こぼれた紅茶を拭き、ティーカップをトレイの上にしっかりと置く。

C:「あんまり手を触れても危ないかも……ムギちゃん、皆、ごめんね……」
   手を触れず、そのままにしておく。

D:「どうしよう……そうだ、手伝ってもらえばいいんじゃないかな? もしもし、姫ちゃん?」
   携帯で姫子を呼ぶ。


634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/01(火) 07:14:59.50 ID:QiRTguAm0


おっ、例え1レスでも頻繁に更新してくれると嬉しいな


648 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 01:25:33.33 ID:O7o2kws30



→A:「ムギちゃんが使いやすいように、ちゃんと元に戻しておかなくちゃ!」
   ティーセットを元の場所に片づける。


唯「勝手に出してきちゃったんだから、ちゃんとしまわないとね!」


一度は背負いかけた鞄を床に下ろし、唯は散乱したティーセットに近寄った。
手持ちのハンカチで軽く零れ散った紅茶を拭き、ティーポットも元通り立たせる。


唯「うーん、机はこれくらいでいいかな……あとはいつもムギちゃんがしまっているところにもっていくだけ……っと」


以前、紬に紅茶の淹れ方を教わった棚をちらりとみて、唯はふうと一息つく。


唯「よし、それじゃあ運ぼうっ。急いでやらないとね」


息を整えて意気込むと、唯は規則正しく並んだティーセットに手を触れた。


*選択肢*

A:先にティーセットをしまって、トレイは後でしまう。

B:ティーセットをトレイにのせて、一度にしまっちゃおうっと。


*選択肢A*

C:ティーカップ→ティーポットの順番で片付ける。

D:ティーポット→ティーカップの順番で片付ける。


*選択肢B*

E:右手が痛むので、左手だけで運ぶ。

F:しっかり両手で運ぶ。


649 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 01:26:59.62 ID:O7o2kws30


上記レスでは、>>4にあるとおり、
選択肢でAを選んだ人は、選択肢と選択肢Aから一つずつ、
Bを選んだ人は、選択肢と選択肢Bから一つずつ選んで頂きます。
なお、二つとも挙げているレスを有効とさせていただきますのでご注意ください。

分かり辛かったら申し訳ないです。

650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) 2012/05/31(木) 01:28:12.31 ID:4IflQ+yBo


乙~
AC


唯「私は、誰と恋をする?」 【百合シミュレーションSS】 Part4 10

最終更新:2012年09月27日 21:52