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海馬VS闇バクラ 後編 - (2008/05/29 (木) 16:40:42) のソース
[[中編へ戻る。>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/79.html]] [[展示室へ戻る。>http://www13.atwiki.jp/zisyo84g/20.html]][[トップに戻る。>http://www13.atwiki.jp/zisyo84g/1.html]] モクバが意識不明となってから30分、ジェット機で到着した海馬は地底コースターの前に居た。 即座に立ち入り禁止にした地底コースターは、アトラクションとして楽しむには短いが、 周囲を警戒しつつ歩くには、いささか長すぎる距離だと感じながらも、海馬は今回の犯人について考えていた。 『モクバといっしょにかえりたければ ちていコースターに一人でこい。』 残されていた文面と状況から察するにこれはモクバの友人、亜紋を拉致しようとしていた者が亜紋に宛てて書いたと見るのが常意。 「おのれえええええ! どこの会社のスパイかは知らんが、海馬コーポレーションを敵に回したことを後悔させてくれるわ!」 「ヤァ! 海馬君! 僕はガジェソルくんだよ!」 沸いて出たかのように……おそらく、システムにハッキングして海馬社長専用の出現装置を使ったのだろう……海馬ランドの40人のマスコットキャラの1人、ガジェソルくんが立っていた。 「その名は誇り高き海馬ランドの一員にのみ許された名……キサマでは名乗ることも許さん…本当の名を名乗れぇッ!」 キグルミで顔を隠しているということは、正体を隠そうとしている証拠。 問われた程度で答えはしないだろうことは予想していたが、海馬がデザイン・製作まで手掛けた『ガジェソル君』を名乗らせるのは海馬のプライドが許さなかった。 「……伊藤です、エスパー伊藤と呼んでください。」 今まで作っていたキャピキャピとした声から一転し、げんなりと力の抜けた声で名乗った伊藤。 「便所のネズミのクソにも劣る下郎が! モクバに使った薬剤の名称・入手経路をただちに教えるならば、命だけは助けてやろう!」 「ハハ! それなら僕とゲームしようよ! 君が勝てたら教えても良いよ!」 こんな状況で、マトモな神経の持ち主ならばデュエルなんか受けるはずも無いが、この人物の神経がマトモでないのは万人万知! 「ふ、面白い、貴様程度の下郎に使わせるには惜しいが、このデュエルディスクを使うがいい!」 海馬はアタッシュケースを素早く開き、次回大会で使う予定のデュエルディスクを伊藤に向かって投げた。 「ワァ! ゲーム=デュエルモンスターズってところが真のデュエリストの海馬様っぽいね!」 念のため言っておくと、喋ってるのは間違い無くバクラ君です。 「行くぞ!」 『デュエル!』 エスパー伊藤(バクラ) LP4000VSLP4000 海馬瀬人 使用ルール:スーパーエキスパートルール エキスパートルールとの主だった差異。 1:ライフポイントの初期値が4000ポイント。 2:魔法・罠は1ターンに1枚ずつしか手札からプレイできない。 3:魔法カードは全てスペルスピード2として扱う。 4:チェーンとか攻撃対象の巻き戻しとかが面倒くさい、それ以上に説明が面倒くさい。 デュエルを始めた瞬間、辺りを包み込む異様な雰囲気……この感覚は以前にも…。 「このデュエルは闇のゲームだよぉおお! 僕が勝てば君の魂を貰うよぉおおお 僕の先攻! 僕は〔怨念集合体〕を守備表示! そしてリバース・カードを2枚セットするよ! ターンエンドだよ!(手札3・伏せ2)」 &html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>怨念集合体</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK900</Td><Td>DEF200</Td></Tr><Td ColSpan="6">恨みを持って死んでいった人の意識が集まってできた悪霊。 人を襲いその意識をとりこんで巨大化していく。</Td></Table>) 伊藤の出したモンスターは、炎のように揺らめく幽霊の集まりだ。 「フン、効果も持たないザコモンスター……数万枚のカードから選び抜かれたオレのしもべの敵ではないわぁ! オレのターン ドロー!(手札6) 〔ブレイドナイト〕を攻撃表示で召喚! ザコモンスターを切り裂けぇッ!」 &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ブレイドナイト</Td><Td>光属性</Td><Td>戦士族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1600</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分の手札が1枚以下の場合、フィールド上のこのカードの攻撃力は400ポイントアップする。<BR>また、自分のフィールド上モンスターがこのカードしか存在しない時、このカードが戦闘で破壊したリバース効果モンスターの効果は無効化される。 </Td></Table>) ブレイドナイトは、独特の構えで突撃し、一閃で怨霊たちを霧散させた。 「ふ、2枚のリバースカードが有りながらモンスターも守れんとはな! リバースカードをセットして、ターン・エンドだ(手札4・伏せ1)!」 「アハ! 海馬くんがターンを終了するより先に〔人海戦術〕を発動するよ!」 &html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>人海戦術</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">各ターンのエンドフェイズ時、そのターンの戦闘によって破壊された自分のレベル2以下の通常モンスターの数だけ、<BR>デッキからレベル2以下の通常モンスターを選択して自分フィールド上に特殊召喚する。<BR>その後デッキをシャッフルする。 </Td></Table>) 「何!?」 「ハハッ! まだまだだよ! 伏せられた速攻魔法カード〔繰り返される悪夢〕を発動! このカードはチェーンした罠カードと同名カード1枚をデッキから発動させる! このカードの効果で〔人海戦術〕は2枚! よって2体のモンスターをデッキから特殊召喚するよ!」 &html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>繰り返される悪夢</Td><Td>速攻魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">罠カード発動時に発動する事ができる。<BR>自分のデッキから、その罠カードと同名カード1枚を発動する。<BR>(発動条件を無視する事はできない。)(オリカ) </Td></Table>) なぞの手:デッキ→伊藤のフィールド 怨念集合体:デッキ→伊藤のフィールド &html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>なぞの手</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK500</Td><Td>DEF500</Td></Tr><Td ColSpan="6">空間をゆがませ、次元のはざまから腕をのばし攻撃をしかけてくる。</Td></Table>) 「っく…所詮はザコモンスター! オレの〔ブレイドナイト〕の敵ではない!」 「僕のターンだよ(手札4)! 〔怨念集合体〕と〔なぞの手〕でブレイドナイトくんを攻撃ィー!」 「んな…!? 攻撃力900や攻撃力500のザコで自滅攻撃だと!?」 オレのブレイドナイトは警戒の心も無く、ただ光の属性を持つ刃によって、ふた塊の霊魂を切り払う。 伊藤LP4000→LP3300→LP2200 「アハっ いちいち驚くな♪ 器が知れるよ♪ 墓地に漂う怨念を糧に……手札からダーク・ネクロフィアを守備表示で召喚するよ!」 怨念集合体:墓地→ゲームから除外。 怨念集合体:墓地→ゲームから除外。 なぞの手:墓地→ゲームから除外。 &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ダーク・ネクロフィア</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK00</Td><Td>DEF00</Td></Tr><Td ColSpan="6">敵モンスターに魂を潜ませる、憑依能力を持つ。</Td></Table>) 「アハっ! 当然バトルフェイズで攻撃してから召喚してるから攻撃はできないからね、終了するよ(手札3・発動中2・伏せ0)。」 終了宣言をトリガーとして、2枚の人海戦術の効果によって、2体の怨念集合体の破壊を補うべく、伊藤のデッキから4体のモンスターが守備表示で召喚された。 なぞの手→伊藤のフィールド なぞの手→伊藤のフィールド 手招きする墓場→伊藤のフィールド 手招きする墓場→伊藤のフィールド &html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>手招きする墓場</Td><Td>闇属性</Td><Td>アンデット族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK00</Td><Td>DEF00</Td></Tr><Td ColSpan="6"></Td></Table>) 「っく…オレのターン!(手札5) 〔ブレイドナイト〕を守備表示に変更! リバースカードを2枚追加し、ターン終了だ!(手札3・伏せ3) 「アハッ♪(手札4) 僕のタァアアアンん! 〔ダーク・ネクロフィア〕で〔ブレイドナイト〕くんを攻撃ぃー! 念眼殺!」 〔ダーク・ネクロフィア〕(攻撃力2200)VS(守備力1000)〔ブレイドナイト〕、ブレイドナイト破壊、墓地へ。 「ターンエンド♪(手札4・発動中2・伏せ0)」 「オレのターン! ドロー(手札4)!」 ドローしたカードに、ニィっと一笑する海馬。 「オレは伏せカード〔古のルール〕を発動!」 &html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>古のルール</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分の手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。 </Td></Table>) 「レベル5以上の通常モンスターカード……!?」 この世界に海馬の上級通常モンスター、と聞いて次に出てくるカードが何か想像できないデュエリストはいない。 「古より続く我が力の象徴よ! その青い威光で蛆虫を蹴散らせぇ! 出でよ! ブルーアイズのッ! ホワイトドラゴォンッ!」 想像に反せず、海馬の命に従い、手札から現れし最強のしもべ、ブルーアイズ! 「……フフッ、オレの勝利の方程式は……常に完成へと直進している!」 &html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)</Td><Td>光属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル</Td><Td>ATK3000</Td><Td>DEF2500</Td></Tr><Td ColSpan="6">攻撃・守備が最高の、なかなか手に入らない超レアカード。</Td></Table>) 「アハッ! 無駄だよ! 守備表示のザコモンスターを破壊しても〔人海戦術〕によって補充される。 それとも、〔ダーク・ネクロフィア〕を攻撃するかい?」 「ふっ、その手は食わん。 ネクロフィリアとは死体・殺人に欲情する異常性欲のこと。 どんなタイプの効果かは分からんが、カードテキストから見てもセメタリーで発動するタイプ、だろう?」 &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ダーク・ネクロフィア</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK00</Td><Td>DEF00</Td></Tr><Td ColSpan="6">敵モンスターに魂を潜ませる、憑依能力を持つ。</Td></Table>) 「アハッ! それじゃあ攻撃しないのかい!? 宝の持ち腐れだよ~!」 「ならば……強大な破壊力を以って、魂も残さず消し去ってくれる! このターンのドローカード、〔滅びの爆裂疾風弾〕を発動する!」 &html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>滅びの爆裂疾風弾</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">「青眼の白龍」が自分フィールド上に表側表示で存在している時のみ発動する事ができる。<BR>相手フィールド上のモンスター全てを破壊する。このカードを発動したターン「青眼の白龍」は攻撃できない。</Td></Table>) 「あ…アハッ?」 「このカード効果による攻撃は当然魔法攻撃! バトルによる破壊をトリガーとして発動する〔人海戦術〕では発動できん! さらには〔ダーク・ネクロフィア〕も所詮は闇属性! 光の極点であるバーストストリームの前では無力!」 &html(<font size="10"><font color="#000099">滅びの呪文</font>)&html(<font size="10"><font color="#000099"><ruby><rb>爆裂疾風弾<rt>バーストストリーム</font>) 衝撃波から生みだされたシンプルな破壊力は敵全体を弾き飛ばし、一瞬にして焦土と化した。 なぞの手:フィールド→墓地へ なぞの手:フィールド→墓地へ ダーク・ネクロフィア:フィールド→墓地へ 魔界植物:フィールド→墓地へ 魔界植物:フィールド→墓地へ 「このカードを発動したターンは攻撃宣言はできんが、次のターンこそ、ブルーアイズのバーストストリームがキサマを焼き尽くすわ!」 「っく…しゃは……ヒャーハハハハハハハハハハハファっハァ!」 突如、狂気…否、狂喜するようにキグルミの中から高らかと笑い声が響いた。 「身の丈に合わんデュエル相手に気でも狂ったか?」 「アハッ! 君はボクの罠にハマったぁ! カードが纏めて5枚破壊されたことで、手札のモンスターの発動条件を満たすよ!」 伊藤の発動宣言とともにどこからともなく、蹄鉄(ていてつ)を下駄のように鳴らしながら何者かがやってくる。 「〔デストロ~~~イ、ウッドゥォォオンン、ホォ~~~ス〕。」 &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-</Td><Td>地属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードの攻守は自軍が破壊された時、その破壊によって攻撃力を上げる。<BR>自分または相手のフィールドに小木馬を設置する事もできる。(オリカ)</Td></Table>) 「ヒャハハハハハ! このカードはオレ様のモンスターの怨念を引き継ぐカードでねぇ… 破壊されたモンスター×600の攻撃力・守備力を得るぜ!」 被っていた猫を剥ぎ取り、狂喜乱舞する伊藤。 デストロイ・ウッドホース -破壊木馬- 攻撃力0→攻撃力3000 守備力0→3000 「オレのブルーアイズと攻撃力が並んだ…!?」 しかし、それよりも海馬は、始めて見たあのカードをどこかで見た気がしていた。 「気付いてるかもしれねえが、このカード、お前の弟のモクバの魂が封印されてるぜ。」 今までのテンションとは打って変わって、何の感慨もなく、淡々と伊藤は告げた。 「なんだと……!?」 魂…魂だと!? ペガサスの使っていた魂の牢獄と似た様なトリックか? 「海馬、お前が負けたら弟と同じく、魂をカードにさせててもらうぜ?」 「フン、そんな知恵遅れのデカブツモンスターでオレに勝ったつもりとはな……。 オレはトラップカードを1枚セット! ターン終了だ!(手札1・伏せ2)」 ちなみに原作ルールこと、スーパーエキスパートルルーでは魔法・罠カードは1ターンに1枚ずつしか手札からプレイできない。 このターン、海馬は手札から魔法カードである〔滅びの爆裂疾風弾〕を使っているので、セットできるのは罠だけだ。 「オレのターン! ドロー!(手札4) ここでオレは〔デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-〕の効果を発動! 手札1枚を墓地に送り、お前のフィールドに〔トロイトークン〕を攻撃表示で出現させるぜ!」 オレのデュエルディスクのモンスターゾーンが歪み、小さな木の塊のようなモンスターが出現する。 ノーブル・ド・ノワール:手札→墓地へ(手札コスト)。 トロイトークン:無→海馬のフィールド。 &html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>トロイトークン</Td><Td>地属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK00</Td><Td>DEF00</Td></Tr><Td ColSpan="6">(トークン)</Td></Table>) 「ザコトークンがオレのフィールドに…!?」 「ぶちのめせ! 〔ウッドホース〕!」 ウッドホースは躊躇いの色も見せずにトークンを蹴り飛ばし、勢い余ってオレも轢いた。 「ぐううう……。」 海馬LP4000→LP1500 「次のターン、もう一度、〔デストロイ・ウッドホース〕で攻撃すれば、お前のライフポイントは尽きるぜ? オレ様はカードを2枚セットして、ターンエンドだ!(手札1・伏せ2・発動中2)」 伊藤は気付いているのかいないのか、海馬のフィールドの〔青眼の白龍〕の攻撃力は〔デストロイ・シーホース〕と同じく3000。 つまり、ブルーアイズさえ犠牲にすれば、伊藤のコンボを止めることはできる。 いかに思い入れのあるブルーアイズとえども所詮は敵を倒すためのピース、勝利のためなら躊躇いも無く切り捨てられる。 だがしかし、海馬は伊藤の言うようにあのモンスターにモクバを重ねて見ていた。 「……確かにモクバを診たKC専門医は……意識が『どこかに消えうせたようだ』…と言っていたが……。」 バカバカしい! オカルトじみているどころか、そのままオカルトではないか! ……が、海馬は過去に似たような体験をしている。 かつて、ペガサスという男が瀬人とモクバの魂を抜き取り、そして遊戯に助け出されるまでは魂だけの感覚を味わった。 今度もそれと同じ事が起きているのではないか? 弟の魂が入ったカードとブルーアイズを相殺させ、墓地に置いてもいいのか? かつて、遊戯との最初の決闘で闇の力の罰ゲーム、『死の体感』を味わった海馬にすれば、モクバの可能性のあるあのカードを墓地に置くことは決してできない。 故に、海馬はあのカードを墓地におかず、かつデュエルで勝つことが必要となる。 果たしてそんなことが可能か?……可能である! 海馬は自身の2枚の伏せカードに目をやる。 もう1枚のキーカードさえあれば、次のターンにでもこの状況を打破できる。 「(幸運の女神よ、初めてキサマに頼んでやろう……あのカードを引かせろ!) ドロー!(手札3)」 海馬のドローしたカードを見て、海馬は心の中でこう呟いた。 『良しッ!』と。 「オレはこのターンのドローカード、〔スピリット・ドラゴン〕を召喚する!」 &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>スピリット・ドラゴン</Td><Td>風属性</Td><Td>ドラゴン族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1000</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが自分のターンに戦闘を行う場合、そのバトルステップ時に発動する事ができる。<BR>手札のドラゴン族モンスター1枚を墓地に捨てる度に、エンドステップまでこのカードの攻撃力と守備力は1000ポイントアップする。</Td></Table>) 「テメーの手札はあと1枚。手札コストが足りないぜ?」 言うまでも無いが、海馬はそんな方法でウッドホースを倒すつもりは無い。 そもそも、海馬の手札にあるのは前のターンでドローした死者蘇生のみ。ドラゴン族なんて1枚も無い。 「フ、キサマにイマジネーションで追いつけるようなプレイングをこのオレがすると思っているのか! 〔スピリット・ドラゴン〕を生贄に捧げ、伏せカード発動、〔風霊術-「雅」〕!」 そのカードの発動によってフィールドに大風が巻き起こる。 大風は海馬のコートの裾を持ち上げて……例によって例のごとく、海馬の裾は帆船の帆のように風を受け、バタバタとはためく! スピリット・ドラゴン:フィールド→墓地 &html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>風霊術-「雅」</Td><Td>永続罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">自分フィールド上に存在する風属性モンスター1体を生け贄に捧げる。<BR>相手フィールド上に存在するカード1枚を選択し、持ち主のデッキの一番下に戻す。</Td></Table>) 「〔風霊術〕だとッ!?」 「ワーッハッハッハッハ! このカードの効果で伊藤ォッ! 〔ウッド・ホース〕はデッキの1番下に戻る!」 デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-:フィールド→デッキボトム 「っち……。」 「さらに伏せカード発動! 〔天声の服従〕で〔デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-〕を指定する! さあ、〔デストロイ・ウッドホース 〕を渡せ!」 &html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>天声の服従</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">レベル8以上のモンスターのカード名を1つ宣言する。<BR>そのカードが相手のデッキにある場合、1000ライフポイントを払い自分の手札に加える事ができる。 </Td></Table>) 海馬:LP1500→LP500 バクラは、今デッキの1番下に戻したカードを引きずり出し、カード手裏剣の要領で海馬に投げ渡した。 デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-:デッキボトム→海馬の手札 伊藤ことバクラも海馬がこのカードを破壊できないであろうことは予想し、ウッド・ホースは鉄壁の守りだとすら思っていた。 だがしかし! 海馬は瞬く間に破壊以外で除去できるカードを引き揃え、それを実行した! &html(<font size="4">恐るべし海馬瀬人! </font>) &html(<font size="5">恐るべしっ 闇遊戯人生最大のライバル!</font>) &html(<font size="6">恐るべし! オデン嫌いのカードの貴公子!</font>) &html(<font size="8">恐るべしッ! KC2代目社長ォオッ!</font>) 「さあて、そいつはどうかな……?」 「(何!?)」 瞬間、海馬の手札からウッドホースが抜き取られ、バクラのフィールドに引き戻された。 「リバースカード発動ッ! 〔デジャヴー〕!」 &html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>デジャヴー</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">プレイヤー1人を指定し、そのプレイヤーのフィールドを1ターン前の状態に戻す。<BR>(魔法・罠カードは戻らない。)</Td></Table>) 「こいつの効果で1ターン前の状況……つまり、〔デストロイ・ウッドホース〕はオレのフィールドに戻ってくるぜ!」 デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-:海馬の手札→バクラのフィールド 「なに……!?」 「残念だったなぁ、海馬! テメーの弟はこのカードの効果でオレのフィールドに戻ってきたぜ!」 「っち……! オレはカードを1枚セット! ターン終了だ!(手札0・伏せ1)」 これで海馬のフィールドにはブルーアイズが1体に伏せカードが1枚、ライフポイントがたった500……。完全に追い詰められていた。 「オレのターン、ドロー!(手札2)」 バクラのドローカードはレベル5の上級モンスター、死霊伯爵。 そして、ずっと手札に持っていたのは、出すタイミングを完全に逸脱した3枚目の怨念集合体。 海馬のライフはたった500ポイント、怨念集合体を召喚し、ブルーアイズとデストロイ・ウッドホースを相打ちで破壊し、怨念集合体で直接攻撃をすれば勝てるが……。 しかし、そこで不安になるのが海馬の伏せカード。 仮にあの伏せカードが、かつて海馬が王国のデュエルで見せた闇の呪縛や催眠術などの攻撃妨害系カードだった場合、 返しのターンで攻撃表示の怨念集合体にバーストストリームを叩き込まれてバクラのライフはゼロになる。 しかし、幸いな事にバクラの伏せカードはといえば、そんな防御型罠カードを無効にするカウンター罠カードだった。 &html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>闇の幻影</Td><Td>カウンター罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">フィールド上に表側表示で存在する闇属性モンスターを対象にする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。</Td></Table>) これなら闇の呪縛だろうが催眠術だろうが無効化できる……が、致命的なことにモクバの魂をコピーしている〔ウッドホース〕は地属性! &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-</Td><Td>地属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分フィールド上のモンスターが相手プレイヤーがコントロールするカードの効果で破壊された時、手札から特殊召喚できる。<BR>このカードの攻撃力と守備力は、特殊召喚時に破壊されたモンスターの数×600ポイントの数値になる。<BR>また、手札1枚を墓地に送る事で、自分または相手フィールド上に「トロイトークン」(獣族・地・星3・攻/守500)1体を相手のフィールド上に攻撃表示で特殊召喚する。<BR>(この効果は1ターンに1度しか使用できない。)(オリカ)</Td></Table>) かといって、敵はあの海馬瀬人である。 このターンを流せば、次のドローでまたもや逆転の可能性も十二分。 バクラはその辺りの駆引きを見抜き、そして最も確率の高い勝ちパターンを考案した。 「いくぜ! 〔怨念集合体〕を墓地に送り、お前のフィールドに〔トロイトークン〕を特殊召喚する!」 怨念集合体:手札→墓地へ。 トロイトークン:無→海馬のフィールド。 &html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>トロイトークン</Td><Td>地属性</Td><Td>獣族</Td><Td>レベル2</Td><Td>ATK00</Td><Td>DEF00</Td></Tr><Td ColSpan="6">(トークン)</Td></Table>) このトークンをウッドホースで攻撃しても勝てる可能性はあるが……催眠術や闇の呪縛のリスクを最大に減らすなら――。 「〔ウッド・ホース〕を生贄に捧げ、手札から〔死霊伯爵〕を召喚!」 デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-:フィールド→墓地 死霊伯爵:手札→フィールド &html(<Table Border BorderColor="#ccb028" Border="2"><Tr><Td>名前</Td><Td>闇属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK2000</Td><Td>DEF700</Td></Tr><Td ColSpan="6">魔界の伯爵。紳士を装ってはいるが、本性は邪悪そのもの。<BR>人間だけでなく、低級悪魔たちにも恐れられている。</Td></Table>) 「〔ウッド・ホース〕を……モクバを墓地に置いただと……!?」 セメタリースペースに差し込まれたウッドホースを見て、ミノタウルスかムカムカのように激昂する海馬。 世界で最も大事な弟が! 自分の唯一にして絶対の保護の対象であるモクバが! 地獄か冥府かもしれない墓地に差し込まれた! 「お、おのれえええええ!」 バクラにしてみれば、そんあことよりも勝利を優先し、最も罠に掛かり難いプレイングをしただけだった。 すなわち、〔闇の幻影〕で守る事ができる闇属性の死霊伯爵で、攻撃表示の〔トロイトークン〕を攻撃して海馬のライフを0にする。 攻撃力900の怨念集合体では、攻撃力500のトロイトークンを攻撃しても、ダメージは400で削りきれないので、このターンで決着をつけるにはこれが最も合理的と思えた。 「〔死霊伯爵〕で、〔トロイトークン〕を攻撃だ!」 フラフラとした体つきで、ただ立っているだけの木馬にズバっと切りかかる死霊伯爵! 「伏せカード発動、〔死者蘇生〕!」 &html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>死者蘇生</Td><Td>通常魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">敵味方を問わずモンスターの魂をも復活させ、味方にすることができる。</Td></Table>) 「〔死者蘇生〕……!?」 バクラは、自身の墓地にさきほどウッド・ホースの効果で墓地に送った〔ノーブル・ド・ノワール〕があることに気が付いた! &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>ノーブル・ド・ノワール</Td><Td>闇属性</Td><Td>アンデット族</Td><Td>レベル5</Td><Td>ATK2000</Td><Td>DEF1400</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが表側表示でフィールド上に存在する限り、相手モンスターの攻撃対象はこのカードのコントローラーが選択する。</Td></Table>) あのカードを蘇生し、死霊伯爵の攻撃対象をブルーアイズに向ければ……負ける! このデュエル、負ける! ……が。 「……オレが蘇生させるカードは、〔デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-〕、守備表示だ。」 デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-:墓地→海馬フィールド 「……な!?」 「キサマの手札には数パターンの攻撃方法があったようだが……その中で唯一、オレの首をかき切れるパターンだった、というわけだな。」 「チッ、こういう勝ち方はオレの好みじゃねぇんだが……。」 バトルフェイズ中にモンスターを召喚すれば、海馬はその新しく召喚されたモンスターに攻撃対象を変更する事ができる権利がある。 (原作ルール) しかし海馬はそれを行使せず、そのままトロイトークンで攻撃を受けた。 〔死霊伯爵〕(攻撃力2000)VS(攻撃力500)〔トロイトークン〕、トロイトークン破壊、消滅。 海馬:LP500→LP0 「ぐ、うおおおおおお!」 「罰ゲーム! ソウル・カード『―魂の肖像―』!」 海馬の肉体から、何らかのエネルギーが汗のように流れ出していく。 「く、モクバぁ! 「(瀬人さん! モクバを投げろ!)」 絶望の中、海馬の耳には幻聴のように虚ろな希望が垂れ届いた。 〔デストロイ・ウッドホース -破壊木馬-〕のセットされたデュエルディスクを製作者らしく手早く取り外し、『声』へと向けて投げ出した。 海馬がデュエルディスクを投げつけた方向にバクラが目をやれば……。 「亜紋!? テメェ、いつからそこに居やがった!?」 その言葉を耳にして、海馬の意識は途切れた。 「ブルーアイズがバーストストリームを放ったあたりから、だな。」 状況と声から察し、亜門はすぐにガジェソル君のキグルミの中にいるのが伊藤=バクラだと察した。 「逃げ切れると思ってるのか? 亜紋?」 「無理だろうな、ペンタクルスはもうほとんど残ってないしな。 だから俺はこの瀬人さんのデッキで戦う!」 亜門が海馬のデュエルディスクを付けた途端、ガジェソル君が笑い始めた。 「ヒャーハハハハハ! 勝てる気かよ!? お前はあくまでもカプモンチャンピオンでデュエルモンスターズは専門外! 内容も分からないデッキで戦うって勝てるほど、このゲームは浅くはねぇぜ?」 「むしろ――伊藤、てめぇはどうする? デッキは39枚しかないんだろ?」 さっきまでデッキに有ったデストロイ・ウッドホースは今、亜門のデュエルディスクの中だ。 「あ? 今手に入れた海馬のカードがあるだろうが。」 言いながら伊藤は、『海馬のカード』と墓地や除外置き場のカードと一緒にデッキに混ぜ、シャッフルする。 「――まさか、デッキ39枚しかないからデュエルできない、ってのが勝算だったのか?」 「……まあな。」 冷や汗タラリ、の亜門くん。 ダメだコイツ。 『デュエル!』 エスパー伊藤(バクラ) LP4000VSLP4000 亜門 「ここまでは随分とテマを取らされたが……―。 あとはテメェのライフを4000ポイント削るだけかと思えば最後の力を振り絞る気もするぜ。 オレの先攻! ドロー(手札6)! 〔ゲルニア〕を守備表示で召喚! カードを2枚セット、ターン・エンド!(手札3・伏せ2)」 ゲルニア 攻撃力1300 守備力1200 星4 闇属性 アンデット族 フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手のカードの効果によって破壊され墓地に送られた場合、 次の自分のスタンバイフェイズ時に自分フィールド上に特殊召喚する。 「俺のターン、ドロー。(手札6) 〔デスグレムリン〕を守備表示! ターン・エンド(手札5・伏せ0)。」 &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>デス・グレムリン</Td><Td>闇属性</Td><Td>爬虫類族</Td><Td>レベル4</Td><Td>ATK1600</Td><Td>DEF1800</Td></Tr><Td ColSpan="6">リバース:自分の墓地のカード1枚を選択し、自分のデッキに加えてシャッフルする。</Td></Table>) ……? 攻撃しない? ゲルニアは効果による破壊には何度でも再生する能力を持つが、裏を返せば戦闘ではただのザコモンスターと言わざるをえない。 デスグレムリンはどちらかといえば守備型のモンスターではあるが、攻撃力も1600と決して低くない。 「ッハ、遠慮なんざしねーで、オレのモンスターをジャンジャン墓地に送れよ! 亜門!」 「聞こえなかったか? ターン終了だ。 伊藤!」 「……ドロー(手札4)! 〔手招きをする墓場〕を守備表示、終了だ!(手札3・伏せ2)」 バクラのターンは、前のデュエルでも使ったザコカードを壁として展開するだけに留まった。 「〔激昂のミノタウルス〕を守備表示で召喚して、カードを1枚セット、終了。(手札4・伏せ1)」 &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>激昂のミノタウルス</Td><Td>地属性</Td><Td>獣戦士族</Td><Td>レベル</Td><Td>ATK1700</Td><Td>DEF1000</Td></Tr><Td ColSpan="6">このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスターは、<BR>守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。</Td></Table>) !? ?! 言うまでも無く、激昂のミノタウルスは攻撃表示でこそ真価を発揮するカードであり、守備表示では大したことの無いカードだ。 素人だから、とかそういう次元のプレイングではない。 むしろ、初心者というのは応用技術に乏しく、カードそのものの性能で勝負したがるものであり、守備表示での召喚なんてしない。 「(何かを企んでるのは間違いねえ。 亜門のヤツが使ってるデッキは、海馬のデッキ……あのデッキには………)」 先ほどの海馬とのデュエルから、亜門の戦術を推古するバクラ。 そして、最もシンプルな、かつ最も合理的な亜門の戦術パターンが読み取れた。 「(……そういうことか?) オレのターン、ドロー(手札4)! トラップカード発動! 〔死なばもろとも〕!」 &html(<Table Border BorderColor="#b21162" Border="2"><Tr><Td>死なばもろとも</Td><Td>通常罠</Td></Tr><Td ColSpan="4">互いの手札が3枚以上の時に発動。<BR>互いの手札を全て墓地に置く。 このカードを発動したプレイヤーは自ら捨てた枚数×100ポイントをライフから削る。<BR>その後、互いに手札を5枚ドローする。 </Td></Table>) 「ゲッ!?」 「墓場でスタンバってな! 死霊ども!」 死霊伯爵:バクラの手札→墓地 カオス・ネクロマンサー:バクラの手札→墓地 絵画に潜む者:バクラの手札→墓地 ダーク・ネクロフィア:バクラの手札→墓地 青眼の白龍:亜門の手札→墓地 マジック・ランプ:亜門の手札→墓地 融合:亜門の手札→墓地 魔剣士 デュオス:亜門の手札→墓地 バクラ:手札0→手札5 亜門:手札0→手札5 「生贄を守備表示で揃えて、〔青眼の白龍〕を召喚……ルールもうろ覚えのお前にしては上出来な戦術だったぜ。」 「っち……ところで、エスパー伊藤! 今引いた中に瀬人さんを封印したカードは無いよな!? 手札に引かれると、〔天声の服従〕ができないからな!」 その言葉に、ピラっと今引いた5枚のカードを確認するバクラ。 その中の1枚には、しっかりと『デストロイ・シーホース』のカード。 「……喜びな亜門! オレの手札にはそんなカードは有りはしないからよ!」 イジワルに手札内容を欺くバクラ。 と、バクラもそこで初めて、海馬の魂を封印したカード、『デストロイ・シーホース』の効果を確認した。 ……。 ……。 ……。 「……はい?」 瞬間、バクラが手に持ったカードイラストの悪魔が……威圧するように、見下すようにバクラを見た気がした。 デュエルディスクがアラームでエラーを告げる。 『効果を処理せよ』と。 手札のカードをデュエルディスクにセットせよ、と。 「で、〔デストロイ・シーホース〕の効果発動。 手札から……〔デストロイ・シーホース〕を……海馬瀬人の魂を封印されたカードの効果を発動するッ……。」 奥歯をかみ締め、バクラがカードを表示させた。 &html(<Table Border BorderColor="#cc7a28" Border="2"><Tr><Td>デストロイ・シーホース -破海馬-</Td><Td>地属性</Td><Td>悪魔族</Td><Td>レベル8</Td><Td>ATK0</Td><Td>DEF0</Td></Tr><Td ColSpan="6">自分のメインフェイズにこのカードが手札に存在する場合、自分の手札・フィールド上に存在する全てのカードを破壊し、このカードを特殊召喚する。<BR>お互いのプレイヤーはデッキ・手札・墓地からそれぞれドラゴン族モンスターを1枚ずつ特殊召喚し、ターンを終了する。(オリカ)</Td></Table>) ゲルニア:フィールド→墓地へ 手招きする墓場:フィールド→墓地へ ガジェット・ソルジャー:フィールド→墓地へ 激昂のミノタウルス:フィールド→墓地へ デストロイ・シーホース -破海馬-:手札→フィールド その効果に、亜門も目を見張る。 プレイヤー(バクラ)の意思に従わない誇り高すぎる効果。 ブルーアイズデッキ以外ではマイナス以外の何物でもない効果……。 「せ、瀬人さん!?」 「オレのデッキにも、手札にも、墓地にもドラゴンはねぇ……!」 さすが海馬瀬人、己が封じ込められたカードとなった時点で、決着は付いていた。 「……やっぱり、エスパーに対抗できるのはアンタしかいないぜ! 瀬人さん!」 デストロイ・シーホースの号令で召喚されたモンスターは、数千のモンスター中でも最も気高く、最も名が知れ、そして最も強いモンスター。 ……皆さんご存知! 海馬率いるブルーアイズ・ホワイトドラゴン×3! 青眼の白龍:デッキ→亜門のフィールド 青眼の白龍:墓地→亜門のフィールド 青眼の白龍:手札→亜門のフィールド 「な、っがぁっ!?」 「俺のターン(手札5)! 手札から〔強奪〕を発動して瀬人さんを俺のフィールドに!」 &html(<Table Border BorderColor="#0f9926" Border="2"><Tr><Td>強奪</Td><Td>装備魔法</Td></Tr><Td ColSpan="4">このカードを装備した相手モンスターのコントロールを得る。<BR>相手のスタンバイフェイズ毎に、相手は1000ライフポイント回復する。 </Td></Table>) デストロイ・シーホース -破海馬-:バクラのフィールド→亜門のフィールド 「行くぜ瀬人さん! 滅びの呪文 バースト・ストリーム!」 3体のブルーアイズが、それぞれに鎌首をうねらせ、口々に爆裂疾風弾をチャージする! &html(<font size="6">フンサァアアアィ!</font>) &html(<font size="8">ギョクサァアアアィ!</font>) &html(<font size="6">ダイ</font>)…カッ! &html(<font size="8">サァアアアィ!</font>) 「ッガァ……!」 バクラの絶叫すら飲み込み、大口から放たれた三条の爆光と爆音は地下コースター内に延々と木霊した。 そして、デストロイ・シーホースは、その爆音に負けじと大声で『ワーッハハハハハハ!』と高らかに笑って見せた。 間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間 間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間間 エピローグ 「亜紋、結局今回の事件はなんだったんだ? 犯人のキグルミの中に入ってたのも、ただのマネキン人形だったしよ。」 あのデュエルから数刻過ぎ、モクバと瀬人(と黒スーツの人達)の意識が戻ってから、海馬ランド内の『XYZドラゴンカフェ』で一息ついたところで、モクバはそう口にした。 ……闇の力については詳しくは分からないが、どうやらあの追跡劇の途中から、伊藤は何時の間にか魂の一部を植え付けたマネキンに追跡をさせていたらしかった。 ……道理で車で轢いても何しても復活したわけだ。 その辺の事情は千年アイテムの所持者である亜門にとっても薄っすらと分かってはいたが、上手く説明できる自信が無かったのであえて言わなかった。 「さあな。 どうも俺の……このコインを狙ってきたみたいなんだけどよ。」 俺が差し出したコインを受け取った瞬間、瀬人さんが難色を示した。 「アンティーク・コインか……オレには理解できんが、希少価値の高いコインならば、ブルーアイズ以上の値が付くこともある。 ……だが、このコインにそれほどの価値が有るとは思えん。」 「兄サマ、どうして?」 「アハッ♪ ジェノサイド握り寿司のおデュエリスト様は誰です全弾発射か?」 「俺だ。」 中にエスパーなんて入っていない本物のガジェソル君キグルミのウェイトレスがジュースを置くのを待ってから、海馬は話を再開した。 ……ってか、本物は語尾に『全弾発射』が付くのか、なるほど。 「デザインこそ遊戯の持つ宗教ペンダントと同じ意匠が施されているが、 このコインに使われている金属は、ナチスドイツで研究・開発されていた特殊合金だ。 珍しい物では有るが、強度や性質においてはゴミ同然だ。」 すなわち『千年ペンタクルス』が古代エジプトどころか、まだ100年と経ってない第二次世界大戦頃に作られたことを意味していた。 イレギュラーな千年アイテム、ペンタクルス――その正体・作られた真意は誰も知らず、この戦いは幕を下ろした。 [[中編へ戻る。>http://www11.atwiki.jp/84gzatu/79.html]] [[展示室へ戻る。>http://www13.atwiki.jp/zisyo84g/20.html]][[トップに戻る。>http://www13.atwiki.jp/zisyo84g/1.html]]