へたれな君が好き ---- えーと、こんな時って何言えば良いんだ? 頭の中をぐるぐると意味の無い言葉ばっかり回ってる。 あーっと、えー、うーん……。 ぱくぱくと、口だけが言葉を発しないまま動く。 多分、顔も赤いし金魚みたいになってるんじゃないか? おれ。 アイツは、なんか困ったみたいに笑ってる。 ゆっくりと近付いて頬に触れた手に、少しだけ体が跳ねた。 「、ごめん」 直ぐに離れた手。俯いて、ポツリと呟かれた。 そうじゃないんだ。言おうとしても相変わらず空回りする唇。 代わりに手を延ばして、おずおずとそいつの腰に腕を回した。 顔を見られないように胸に顔を押し付ける。 「ちがくて、さ」 やっと言葉が出せた。 伝えなくちゃ、伝えなくちゃ。気持ちだけが急いてしまう。 こんな土壇場で怖がって、へたれなおれだけど。 「おまえが嫌なんじゃない。ただ、ちょっと怖くて……」 言うと、そいつはふわりと笑った。 「大丈夫。そんなとこも好きだから」 ぎゅう、と抱きしめられてアイツの体に包まれる。 さっき押し倒された時とは違う、優しい腕の感覚に少しだけ笑えた。 「もうちょい、待ってて」 顔を上げて、小さな声で言ってからそいつにそっとキスしてみた。 あー、ダメだ。やっぱ無理。絶対、顔赤い。 耐えられなくて、直ぐに顔を埋め直す。 さらさらと髪を撫でる指の感覚は気持ちいいけど……。 おれのへたれが直る時は、いつか来るのかなぁ。 少しだけ不安になった。 ---- [[マゾ×サド>17-039]] ----