へたれな君が好き
えーと、こんな時って何言えば良いんだ?
頭の中をぐるぐると意味の無い言葉ばっかり回ってる。
あーっと、えー、うーん……。
ぱくぱくと、口だけが言葉を発しないまま動く。
多分、顔も赤いし金魚みたいになってるんじゃないか? おれ。
アイツは、なんか困ったみたいに笑ってる。
ゆっくりと近付いて頬に触れた手に、少しだけ体が跳ねた。
「、ごめん」
直ぐに離れた手。俯いて、ポツリと呟かれた。
そうじゃないんだ。言おうとしても相変わらず空回りする唇。
代わりに手を延ばして、おずおずとそいつの腰に腕を回した。
顔を見られないように胸に顔を押し付ける。
「ちがくて、さ」
やっと言葉が出せた。
伝えなくちゃ、伝えなくちゃ。気持ちだけが急いてしまう。
こんな土壇場で怖がって、へたれなおれだけど。
「おまえが嫌なんじゃない。ただ、ちょっと怖くて……」
言うと、そいつはふわりと笑った。
「大丈夫。そんなとこも好きだから」
ぎゅう、と抱きしめられてアイツの体に包まれる。
さっき押し倒された時とは違う、優しい腕の感覚に少しだけ笑えた。
「もうちょい、待ってて」
顔を上げて、小さな声で言ってからそいつにそっとキスしてみた。
あー、ダメだ。やっぱ無理。絶対、顔赤い。
耐えられなくて、直ぐに顔を埋め直す。
さらさらと髪を撫でる指の感覚は気持ちいいけど……。
おれのへたれが直る時は、いつか来るのかなぁ。
少しだけ不安になった。
最終更新:2009年08月30日 18:42