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待ち望んでいた瞬間にたどりついた
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カズヒコはにっこりと笑って僕の右手を取った。
「ずっと想っていたよ。夢に見るほどに。ずっと、ずーっとね」
カズヒコは僕の右手に頬ずりしてから軽く接吻する。
「貴方は気付いてくれていた?俺が貴方を想っていたことに」
僕は首を振る。驚きが首の隙間からこぼれて行く。
「俺は貴方を心の底から想っていた。だから貴方を全て肯定する」
僕は首を振る。首の隙間からは空虚な音しかしなかった。
「貴方が誰を想おうと、俺をどう思おうと、そのままで良かった」
カズヒコは僕の左手も取って両手をぎゅうっと握り締めた。
「貴方が幸せに笑っているのなら、俺は良かったんだ。でも」
カズヒコは一瞬だけ泣きそうな顔になる。
「でも、最近の貴方は泣いてばかり、あいつの所為で貴方は泣いてばかりだから」
僕は思い返す。
「泣かされているのに、貴方はあいつの傍を離れなくて、俺にはそれだけが理解できなかった」
僕は彼のことを思い返す。僕は泣いていただろうか?
「ずっと想ってたんだよ。貴方が幸せに笑う夢に見るほどに、貴方のことだけを」
カズヒコは僕の腕をひき、僕を抱き締める。
「けど、最近は貴方の笑顔を思い出せなくなっていた。夢の貴方も泣いていて」
カズヒコは僕の頬を撫でてそのまま僕の髪を梳いた。
「だから、今夜は貴方をつけてた。貴方があいつの家に入るのも見た」
僕を抱き締めている所為で、カズヒコのシャツは赤く染まっていく。
「大丈夫だよ。貴方が飛び出して行った後、あいつの部屋に入った。証拠になりそうな物は全部持ち出した」
僕はそこでようやく、このナイフの出所について合点がいく。
「急いで追いかけてきたら、貴方は笑っていた。嬉しそうに楽しそうに幸せそうに」
カズヒコは笑っている。
「その瞬間を逃したくなかった。今しかないって思ったよ。ずっと待っていたんだ」
カズヒコの腕は暖かいが、僕の身体は冷たくなっていくばかりだ。
「俺は貴方を責めない。貴方の全てを肯定するんだ。ただ貴方が笑ってさえいてくれればそれで」
僕はもう眼を閉じる。カズヒコの言葉はもう聞きたくなかった。
暗闇の中で僕は彼のことを思い返す。結局のところ、僕はこの瞬間を待っていたのかもしれない。
(待っていて。すぐに君の傍に行くから)
(君にはもう、僕だけしか居ない。誰にも邪魔されない、邪魔させない)
(ずっと二人きりだ。ずっと、ずっと―――)
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[[どうしてお前あんなのと友達なの?>20-069]]
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