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50代×30代 ---- 言葉足らずなあんたの世話係になってから、俺は苦労しっぱなしだったよ。 刺激物はダメだって言ってんのに勝手に食うし、どっか行くなら声掛けろって何度注意しても無断で出掛けるし。 俺、何度叱られたと思ってんの、周りの人にさ。 珍しいですね、手を焼くなんて…なんて仲間にも言われた。 そうだよ、普段はこんな入れ込んだりしなかったしな、失敗とは無縁の中堅の優秀な世話係…だったわけよ、あんたに会うまでは。 あの日。 あんた調子悪いとか言っといて、俺、心配で泊まり込んだら、俺の方が次の日、腰痛いは、熱出るは…って、あんた、俺にあん時、告白もしなかったこと、今思い出してもむかつく。 考えてみりゃ、あんた、一度も俺に告白してねぇじゃん。 日本男児はそんなことは口にせん、とか、あんた戦後生まれだろってつっこみどころ満載だったよ。 でもさ。 あんたが俺に内緒で最後に無断外出した日。 説教垂れる俺にいけしゃあしゃあと古びた手紙、差し出したよな。 思い出の手紙なんだって。 紙の色とか変わってんのに、皺一つない手紙は大事にされてきたんだろうなあって見た目でわかってさ。 知ってた?俺の生まれる前の消印だったんだよ。 思い出の手紙を渡されて、その手紙に嫉妬あらわに出来るほど若くはないし、けど、あんたにその思い出聞けるほど年食ってるわけでもないしさ。 でも、わざわざ取りにいくくらい大事なもんなんだって思ったら、正直涙腺ゆるんで、あんたの顔見られなかった。 「俺はその手紙をあの世にも持っていこうと思ってる」 そんなに大事なもんなら、俺に渡すなよ。 突っ返した俺から、あんた受け取らなかった。 …その後、掠れた声であんたがあの時言ったこと、俺、一言一句間違えないで覚えてる自信あるよ。 「俺が死んだらさ、その手紙をお棺に入れてくれるヤツが必要だろ?」 なあ、あんた、その時どんな顔してたんだろう。 なんで俺、見られなかったんだろう。 あんた、言った。 「だから、お前が持っててくんなきゃダメなんだよ」 ああ、俺を傍に置いてくれるんだなって、そん時、思ったんだよ。 あんたの痩せ細った腕ん中でさ、抱き寄せられて、ちょっとだけ、泣けたよ。 あんた、最後まで意地悪で言葉足らずだったな。 あんたの手紙、俺宛の。 あんたの使ってたベットの下から出てきたヤツ。 思い出の手紙の人ってあんたのカアチャンだったとか、どうしてこういうモンで告白すんの。 もっと早く教えろよ。 それに、こういう手紙には愛してるとか、好きだとか、書くもんで、あんたがいなくなった後の俺の行く末なんか気にしなくったっていいんだよ。 それに…手紙なんて。 今更、手紙なんて。 ずるいなあ、あんた。 俺は誰に入れてもらえばいいわけ、あんたの手紙をさ。 ずるいなあ、ホント、最後まで。 こんなに惚れさせて。 ----   [[50代×30代>4-069-1]] ----

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