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「アイツ超早漏! 顔がよかったから付き合ってみたのに、マジありえないんですけど~」 「でも、お前アイツとまだ付き合い始めたばかりじゃ…」 「連れて歩くにはまあまあでしょ? クリスマス近いし、今狙ってる男落とせるまではキープしとくって感じ。 それにさー、早漏だけじゃなくて童貞だったし。なーんか一緒にいてつまんないんだもの」 俺に向けてくれた彼女の優しい微笑みが、たぶんどこかから演技だったと知ったある日の放課後。 下校時間が過ぎた廊下に響き渡る彼女の声は、まぎれもなく俺が好きになった彼女のそれ…… 不幸中の幸いか、廊下にも教室にも、彼女とその話し相手、そして俺の他には誰もいないようだった。 教室のドアをあけることどころか、微動だにできなかった。 ただ、その隙間から漏れる彼女の声と、それを諌めるような誰かの声を黙って聞いていた。 指の先から全身が冷たくなっていくような気がした。 それから、記憶がなかった。逃げるように走っていたのだけ覚えてる。 気づいたら家のそばの公園のベンチに座ってた。 朝の天気予報が今日の寒さは今年一番のものだと言っていたのに、コートは教室に置いてきていた。 心身ともにこのまま凍ってしまうんじゃないだろうか。 心が冷たい、体も冷たい…… 他人事みたいに考えていたそのとき。 「うわっ!!」 「……何してんの」 突然首筋に熱いなにかが触れ、思わず振り向いた。同じクラスの村上だ。 「コーヒー。寒いだろ?」 そのなにかは、ホットの缶コーヒーだった。 これ、俺の好きなヤツ。 文化祭の準備んとき、一緒に買い出し言ったとき話したの、村上、覚えてたんだ…… 村上が隣に座って、俺はコーヒー飲んでて。しばらく沈黙が流れてた。 「なあ」 ぼそぼそと、呟き始めた声に顔をあげた。 「ユミさ、俺の幼馴染なんだ」 ユミ。俺の付き合ってた彼女の名前。 「さっき、お前聞いてただろ?」 「な、なにが?」 咄嗟に誤魔化そうとしても、どうしても動揺が顔に出てしまう。 「教室で。ユミ、あいつ中学入ったころからあんな感じんなっちゃってさ。…気にすんなよ」 「気にしないとか、できるわけないだろ!」 怒鳴ってしまってすぐ後悔した、村上が悪いわけじゃないのにって。 でも、ユミは初カノだった。高校二年にもなって、ようやくできた彼女。頭がいっぱいだ。 確かに俺も、途中から年相応に「彼女」がほしかったのか、ユミが好きなのかわからなくなってた。 「くそっ」 舌打ちをしたのは俺じゃなかった。 「なんで俺黙ってたんだ。……知ってたのに!」 「……でも…俺早漏だって。一緒にいてつまんないって。自覚なかったわー…」 はは、と乾いた自嘲の笑みが漏れてしまった。ダサい。 「俺、お前と一緒にいて楽しいけど」 「そんな、フラれたばっかの俺にフォローとか逆にむなしくなるからやめろよ」 「緊張してたり、相手への気持ちが真摯だったりすれば、早くなんのだっておかしくないことだよ」 「だからやめろって」 「好きなんだって!」 「へ?」 「お前が好きなんだよ! 俺は! だから怒ってんの!」 ふわっと暖かい空気がうごいた。……村上に、抱きしめられてた。 なんだこれ、心臓がすごい速さなんだけど。こんなん、彼女と一緒にいてもなったことなかったのに。 俺、ヘンタイになったのか? で、村上は? ホモ? ?が頭んなかいっぱいに浮かんでは消えたけど、途中から何も考えられなくなった。 どうして、いつのまに…… 「……見せてよ」 「?」 「ユミに見せてないお前の顔、見せて。早いんなら、その分何度でもしてやるから」 「バカかお前!!」 後頭部を思いっきり張っ叩いてやった。 気づいた時には、もうどこも、冷たくなかった。
早漏 ---- 「アイツ超早漏! 顔がよかったから付き合ってみたのに、マジありえないんですけど~」 「でも、お前アイツとまだ付き合い始めたばかりじゃ…」 「連れて歩くにはまあまあでしょ? クリスマス近いし、今狙ってる男落とせるまではキープしとくって感じ。 それにさー、早漏だけじゃなくて童貞だったし。なーんか一緒にいてつまんないんだもの」 俺に向けてくれた彼女の優しい微笑みが、たぶんどこかから演技だったと知ったある日の放課後。 下校時間が過ぎた廊下に響き渡る彼女の声は、まぎれもなく俺が好きになった彼女のそれ…… 不幸中の幸いか、廊下にも教室にも、彼女とその話し相手、そして俺の他には誰もいないようだった。 教室のドアをあけることどころか、微動だにできなかった。 ただ、その隙間から漏れる彼女の声と、それを諌めるような誰かの声を黙って聞いていた。 指の先から全身が冷たくなっていくような気がした。 それから、記憶がなかった。逃げるように走っていたのだけ覚えてる。 気づいたら家のそばの公園のベンチに座ってた。 朝の天気予報が今日の寒さは今年一番のものだと言っていたのに、コートは教室に置いてきていた。 心身ともにこのまま凍ってしまうんじゃないだろうか。 心が冷たい、体も冷たい…… 他人事みたいに考えていたそのとき。 「うわっ!!」 「……何してんの」 突然首筋に熱いなにかが触れ、思わず振り向いた。同じクラスの村上だ。 「コーヒー。寒いだろ?」 そのなにかは、ホットの缶コーヒーだった。 これ、俺の好きなヤツ。 文化祭の準備んとき、一緒に買い出し言ったとき話したの、村上、覚えてたんだ…… 村上が隣に座って、俺はコーヒー飲んでて。しばらく沈黙が流れてた。 「なあ」 ぼそぼそと、呟き始めた声に顔をあげた。 「ユミさ、俺の幼馴染なんだ」 ユミ。俺の付き合ってた彼女の名前。 「さっき、お前聞いてただろ?」 「な、なにが?」 咄嗟に誤魔化そうとしても、どうしても動揺が顔に出てしまう。 「教室で。ユミ、あいつ中学入ったころからあんな感じんなっちゃってさ。…気にすんなよ」 「気にしないとか、できるわけないだろ!」 怒鳴ってしまってすぐ後悔した、村上が悪いわけじゃないのにって。 でも、ユミは初カノだった。高校二年にもなって、ようやくできた彼女。頭がいっぱいだ。 確かに俺も、途中から年相応に「彼女」がほしかったのか、ユミが好きなのかわからなくなってた。 「くそっ」 舌打ちをしたのは俺じゃなかった。 「なんで俺黙ってたんだ。……知ってたのに!」 「……でも…俺早漏だって。一緒にいてつまんないって。自覚なかったわー…」 はは、と乾いた自嘲の笑みが漏れてしまった。ダサい。 「俺、お前と一緒にいて楽しいけど」 「そんな、フラれたばっかの俺にフォローとか逆にむなしくなるからやめろよ」 「緊張してたり、相手への気持ちが真摯だったりすれば、早くなんのだっておかしくないことだよ」 「だからやめろって」 「好きなんだって!」 「へ?」 「お前が好きなんだよ! 俺は! だから怒ってんの!」 ふわっと暖かい空気がうごいた。……村上に、抱きしめられてた。 なんだこれ、心臓がすごい速さなんだけど。こんなん、彼女と一緒にいてもなったことなかったのに。 俺、ヘンタイになったのか? で、村上は? ホモ? ?が頭んなかいっぱいに浮かんでは消えたけど、途中から何も考えられなくなった。 どうして、いつのまに…… 「……見せてよ」 「?」 「ユミに見せてないお前の顔、見せて。早いんなら、その分何度でもしてやるから」 「バカかお前!!」 後頭部を思いっきり張っ叩いてやった。 気づいた時には、もうどこも、冷たくなかった。

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