今夜もひとり生け贄になる
手足も口も動かぬままに

外はもう日が暮れたのだろうか。この部屋には窓がないので分からない。
夜の訪れと共に父さんがこの部屋にやってくる、その時だけ、廊下の明かりが僕をわずかに照らす。
『あぁ、ジャック。私の愛しい息子よ』
父さんのしわがれた声が聞こえ、父さんのかさついた指が僕の頬に触れる。
僕は動くことも声を出すこともできず、ただじっとこの儀式めいた淫靡な時が過ぎるのを待つ。
『この陶器のようにすべらかな肌、絹のようになめらかなブロンド、サファイヤよりも透き通った瞳。
おぉジャック、お前は私の最高傑作だ!』
父さんは近頃、仕事をしていない。昼間は酒ばかり飲み、夜には僕と淫らな行為をする、その繰り返しだ。
僕は、父さんが生きるための贄なのだ。
『ジャック、ジャック……』
父さんの舌が全身を這い回り、父さんの手が肌をまさぐる。
それらは全て、僕にえも言われぬ快感をもたらす。あぁ、僕が父さんの贄であるなら、父さんこそが僕の糧だ。
やがて父さんは僕の顔に吐精すると、後始末のために一度部屋を後にした。
温かな白濁液が僕の頬を伝って、それはまるで流すことのできない僕の涙の代わりのようだった。


人形の僕には繋がるための楔も蕾もないけれど、身内に潜む父さんへの愛だけは本物なんだ。



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最終更新:2011年04月18日 01:17