お前の方がかわいいよ
ぎゅう、と正面から抱きつかれ、俺はのけぞった。
「ゆーすけ君マジかわいい」
抱き潰すつもりかと思うほどにぎゅうぎゅうと締められる。痛い痛い。マジで痛い。
「あっ、ご、ごめんね」
抗議の声を上げればあっさりと腕は離れていった。
それでも顔は近いままで、その表情はといえばまるで飼い主に叱られた犬を連想させる、哀れっぽい感じのものだ。
「痛えよ」
「うん……ごめんね、ゆーすけ君」
幼馴染みのコイツは、同い年にも関わらず俺より20cmも背が高い。
どこで差がついたのか分からないが、多分、遺伝だろう。
そういう事にでもしておかないと理不尽な怒りがふつふつとこう、頭を擡げてくるので仕方ない。
なんで俺はこいつより背が高くならなかったんだ、と。
「分かってんならいい」
「……うん!」
ほら、と腕を広げてやると、迷うことなく飛び込んでくる。
こっちがチビだから可愛いとか言ってんだろうなとは思うが、俺からすればお前の方がよっぽどかわいいよ、幸介。
最終更新:2012年09月10日 00:11