年上の余裕
「子供だ」と、いつも見下してくるあの人の余裕を剥いでやろうと、色々画策してみた。
こっちから迫ってみたり。
下戸だって言って余り飲まない酒をすすめてみたり。
普段は恥ずかしくて言えない言葉を言ってみたり。
手は尽くしたのに、あの人は額を弾いてこう言うのだ。
「だから子供だってんだ」
しかも、鼻で笑うオプションまで付けられたら、こっちだって引き下がれない。
「よし。襲うぞ」と奮起し、あの人が帰って来るのを今か今かと待ち伏せた。
パチリとつけた室内灯。
視線の先には、無防備にもソファーの上で眠りこける子猫が一匹。
ため息をつきながら、柔らかな髪をかき混ぜる。
たまに、鼻にかかった甘い声が耳に届き、手に頭を擦り付ける仕草は、まさに猫。
引き取った時は警戒心も強く、体もガリガリだった。
今はどうだ。
あれから幾ばくか成長し、今ではすっかり血色もよくなり、程よい肉付きをしている。
だが、まだ早い。
まだ、まだ駄目だ。
気分はお菓子の家の魔女。食べ頃まで太らせて、美味しくなった頃合いで……
だから、まだ誘いには乗れない。
魅力的だが、お楽しみは最後にとっておくものだ。
「安心しろ、あと4年は待ってやる」
最終更新:2014年12月01日 22:34