伝わらない
自覚してからは、境界線がどこまでなのか分からなくなってしまった。
学校帰りにコンビニ寄るのは友達。
そこで買ったアイスを一口交換するのは、
16年来の幼なじみとしては、まあ、アリだろう。
だけど、
俺のガリガリ君に近づくその唇を思わず目で追ってしまうのは、
唇からちらっと覗く赤い舌に反応してしまうのは、
汗ではりつくシャツに何故かこっちが汗をかいてくるのは、
最近目を合わせられないのは、
「和田、溶けてる!」
「あ!?うわ!」
「バッカ、何ぼうっとしてんだよ」
「何って、」
お前の事考えてんだよ
とは言えないから、溶けたアイスでベタベタになった手を
佐野の腕になすりつけた。
「何すんだバカ!」
「うるせ、バカって言う奴がバカなんですぅ」
「ガキか!お前はほんと昔から変わんねぇな!」
昔と同じようなやりとりをしながら、昔と同じように笑いながら
俺は思う。
変わらないのはお前だけだ。
俺は変わってしまったよ、佐野。
今と違う関係を望むようになった。
その手に触れたいと思うけど、
お前が望むのは幼なじみとしての俺だから、
伝えない。
伝わらない境界線を探して、
明日も幼なじみの顔でお前の肩を叩くよ。
最終更新:2009年08月30日 19:02