刀と鞘の関係
「お主も難儀な男だな」
周りの人間はあいつについて俺によくそう言う。
「幼馴染とはいえ、あのような付き合い難い男も珍しいだろう」
時代遅れの剣の道しか知らぬ、そう、まるで抜き身の刃のような俺の幼馴染。
出世にも何も興味がないから上のご機嫌取りなどすることもなく、口から出る言葉身振り態度の全てが白刃の切っ先の如き男。
周囲と関係が拗れたり対立するのはしょっちゅうで、その仲裁に駆り出されるのは幼馴染の俺であって。
――いつもすまんな
――すまんと思うのならどうして同じようなことを繰返す
――分かってはいるつもりなんだが、どうしても駄目なんだ
抜き身の刃のような鋭さが内に煌く眼差し。ああそうだ、俺は、こいつの――
「俺はあいつの鞘のようなものですから」
そんな時俺は決まって周りの人間にこう答える。
「鋭すぎる刀にはそれを収める鞘が必要だから」
最終更新:2010年03月15日 00:57