アレからアタシはシンジと一緒に料理を作ることとなった。
一通りの料理の作り方を伝授して貰ったが、どうもアタシはチャーハンや野菜炒め、
揚げ物といった類の料理を作るのが好きな様だ。そのことをシンジに言ったら
などと、のたまってくれたので意味はわからないが、なんか腹立ったので一発小突く。
しかし、どうも煮物や蒸し物などといったチマチマした料理はどうもアタシの性に合わないらしい。
あっ! そうか、そういう事か!
焼く・炒める・揚げるといった料理は攻め、煮る・蒸すといった料理は受けという事か!
シンジの発言の意味が分かったので、もう一発小突いてやった。
ま、それは置いといて、
今日はシンジが料理を作る番。献立はカレー。シンジはカレーを作るのに2時間以上かけて作る。
今は玉葱を弱火でコテコテと炒めている。あまりにもゆっくりしているので苛々して
「何で、そんな事やってんのよ」 と聞いてみたら
「アスカ、料理は手間と愛情をかけて作るんだよ。食べてくれる人が『美味しい』って
言ってくれることを想像しながらね」
なんて抜かしやがったから
「ふん! なにキザったらしい事言ってんの! アンタには似合わないのよ、バカ!」
って言ってやったわ。 すぐに後悔したけど・・・
何でか?っていうと、ふと料理をしているシンジの手元から視線を変えてコイツの顔を覗いたら
すっごく、優しい顔をしてたの・・・
そう、アタシはこの顔、この表情が好き。
キスしてくれるとき、抱き締めてくれるとき、アタシを愛してくれるとき
シンジはこの顔を見せてくれる。とても優しい表情。
そうか・・・ シンジはアタシに『美味しい』って言わせたくて料理してるんだ。
失敗したわ、みすみすこの顔を今まで見逃していたなんて!
「何か僕の顔に付いてる?」
じぃ~~っとみてるアタシに、シンジは声をかけてきた。キョトンとした顔が無性に腹が立つ。
「バカ! アンタはちゃんと料理に集中してなさい!」
「何だよ、それ・・・」
「いいから、早く!」
そうそう、その顔その顔!
この表情を見て、ちょっとだけアタシの黒い部分が出てきたわ。それは独占欲。
「シンジ、一つ約束して! アタシ以外の人と一緒に料理しないで! 特に女と!」
「何で?」
「いいから、約束して!」
「??? 分かったよ」
そう、この優しい表情はアタシだけのものにしたいから・・・
そんなこんなで出来上がったカレーはいつも通り美味しかった。
いつもならどんなに美味い料理が出来ても「まぁまぁね」としか言わないんだけど
ちょっと魔が差したのね、今日は特別に言ってやったわ。
「美味しいわね、このカレー」
極上の笑顔がアタシを襲う。
駄目! そんな顔見せられたら、もう『美味しい』としか言えないじゃない! バカシンジ!!
おしまい
最終更新:2007年05月07日 11:58