| リポーター | はい、こちらはポート・エドワーズ上空まで |
| 数キロを飛んでいるところで…… | |
| ご覧になれますでしょうか? | |
| ポート・エドワーズから | |
| 黒煙がいくつもあがっています。 | |
| その上空では、 | |
| ニューコム、ゼネラルリソース | |
| 両企業の基地より出撃した | |
| 多数の戦闘機の姿が……あっ! | |
| また爆発です! | |
| もの凄い音がしました! | |
| みなさんには、わたしの声が届いて……。 | |
| アナウンサー | はい、スタジオです。 |
| ここでもう一度、今までの情報を整理し、 | |
| 繰り返しお伝えする事にしましょう。 | |
| 本日午後、USEAのポート・エドワーズで | |
| ゼネラルリソースとニューコムが、 | |
| 交戦状態に突入しました。 | |
| そしてその戦いは現在も続いています。 | |
| NUN──新国際連合では、 | |
| 事態を解決する為、 | |
| UPEOの治安維持部隊の派遣を決定……。 |
| 緊急事態だ! |
| ゼネラルリソースとニューコムが全面戦争に突入した。 |
| 都市防衛のため、侵攻するすべての勢力を撃退せよ。 |
| 現在、戦闘空域は非常に混乱しており |
| 報道ヘリなども飛行している。 |
| 任務遂行に際し、これら民間機には十分注意する事。 |
| なお、今回の任務より |
| 最新鋭機『ベルクト』に搭乗してもらう。 |
| 諸君の働きに期待する。 |
| ……以上。 |
| ERICH | こりゃ、本物の戦争だ! |
| RENA | でも、戦うしか……。 |
| ERICH | 何がUPEOだ……! |
| 人殺し以外に、 | |
| 何が出来るっていうんだ。 |
| ENGAGE |
| RENA | もらった。 |
| ERICH | 後ろに気をつけろ! |
| RENA | 後ろ、気をつけて! |
| ERICH | あちゃー、なーにやってんの。 |
| COMMANDER | レーダーが新たな機影をキャッチ! |
| 総数不明、警戒せよっ! |
| UPDATE TARGET |
| ※二次ターゲット出現 |
| MISSION ACCOMPLISHED |
| ゼネラルリソースとニューコム…… |
| 両軍事勢力の大幅な弱体化に成功した! |
| 気象予報士 | メリトン地域の今後1時間以内の |
| 降水確率は76.5%です。 | |
| 予想最高気温は20℃、 | |
| 予想最低気温は15℃……。 | |
| レポーター | 始まりはキャッシュディスペンサーでした。 |
| 電脳空間(エレクトロスフィア)の基幹ルートの制御システムに | |
| 大量の割り込み(インターラップト)が発生し、 | |
| 電脳空間(スフィア)を流れるすべての情報が | |
| 混乱している模様です。 | |
| このためゼネラルリソース、ニューコムの | |
| 両社に関連する銀行など多くの施設が | |
| 機能停止に至ったのです。 | |
| 原理的に電脳空間(スフィア)でこのような事故は | |
| 起こり得ないはずですが、 | |
| 原因の究明を待ちたいと思います。 | |
| キャスター | これは事故ではありません。 |
| たった今、入った情報によりますと、 | |
| ウロボロスと名乗る集団から、 | |
| この一連のパニックを | |
| 仕掛けたとの犯行声明が、 | |
| ゼネラルリソース本社に届いたとの事です。 | |
| ただし……同社の広報では、 | |
| この件についての | |
| 情報公開を拒否しています。 |
| (ウロボロス) | 我々にとって、この攻撃は必然である。 |
| 肉体という呪縛にしがみついた | |
| 物欲の支配する世界。 | |
| 合弁型巨大多国籍企業の経済力が、 | |
| 政治や司法制度といった | |
| 旧世代の権力構造を凌駕していった時点で、 | |
| 我々は目覚めるべきだった。 | |
| しかし、我々に肉体がある限り | |
| 物欲からの支配を拒絶するのは、 | |
| 難しいのも、また事実である。 | |
| そう……肉体という越えがたい境界によって | |
| 維持される我々の生命は、 | |
| 常に欲によって縛られているからだ。 | |
| ──食欲、性欲、睡眠への欲! | |
| これら生命を維持する為に | |
| 必要な最低限のモノですら、 | |
| 貨幣によって手に入れねばならない。 | |
| 我々人類は、未だかつて一度も | |
| この呪縛から完全に解放された事は | |
| ない事からもわかるはずだ。 | |
| 人類の限界とは、 | |
| あまたの欲望に縛られた肉体なのだっ! |
| リポーター | はい、空港です。 |
| こちらでは、各地区を結ぶエア・ラインが | |
| 全便欠航となっています。 | |
| その理由についての発表はまだありません。 | |
| 一部地区でゼネラルリソースの制空権が | |
| 完全に略奪されたとの噂もあり、 | |
| 空港は混乱の極みを見せています。 | |
| レポーター | みなさん。 |
| 私はジオフロントから | |
| 50キロほど離れた場所から | |
| お送りしています。 | |
| ご覧いただけるでしょうか? | |
| 私の上空では、多数の戦闘機の編隊が、 | |
| ジオフロント方面に向かっていく姿を | |
| 何度もカメラで捉えています。 |
| (ウロボロス) | 我々の決起を……多くの人々は、 |
| まだ誤解している事だろう。 | |
| 確かに現時点で人々が目にしているモノは、 | |
| 人類にとってお馴染みの | |
| 殺し合いに過ぎないからだ。 | |
| ただ……これだけは言っておこう。 | |
| ゼネラルリソース、ニューコム、 | |
| UPEOといった組織が保持している軍隊と | |
| たった今も行われている交戦は、 | |
| 我々が望む革命にとって入口。 | |
| ……そう。 | |
| 我々にとって真実の敵とは、 | |
| ゼネラルリソース、ニューコム、 | |
| ましてUPEOなどといった権力ではない。 | |
| この革命が完成する時、 | |
| 我々が──いや、人類全体が掴むモノは | |
| このような権力ではない! |
| キャスター | ゼネラルリソース系列の報道機関では、 |
| 現在、放送内容について | |
| キーワード検閲が配信システムに | |
| 組み込まれたとの発表がありました。 | |
| このような大規模な報道規制が、 | |
| 施行されるのは初めての事です。 | |
| 現在この番組は、独立系パーソナル・ | |
| ベースの放送局からお送りしています。 | |
| それではここで、我々が独自に傍受した | |
| 映像を無検閲でご覧いただきます。 |
| (ウロボロス) | 既に我々は、全ての人類に |
| 限界を超えてもらう為の技術を持ち、 | |
| その準備も出来ている。 | |
| ──肉体を捨てよ! | |
| これは、生命を解放する為に行われる | |
| 革命である。 | |
| 今こそここに、我々は宣言しよう。 | |
| 全人類の電脳化(サブリメーション)──それこそが | |
| 我々の生命を次世代に進化させる | |
| 唯一無二の真実である! | |
| この技術は夢ではない。 | |
| その証拠に一つの例を | |
| ご覧いただく事にしよう。 | |
| ──ディジョン! | |
| この男は、10年前にゼネラルリソースの | |
| 謀略によって完全に肉体を失っている。 | |
| ……にもかかわらず電脳空間(エレクトロスフィア)で生命として、 | |
| 今も確かに存在している。 | |
| そう、もともと我々全てが平等に秘めている | |
| 『生命』『精神』『意識』という名で | |
| 呼ばれてきた力で構成される『意志』は、 | |
| 肉体などといった脆弱な存在を | |
| 限界とはしていなかったのだ。 | |
| そして、この事実を我々は、 | |
| 有史以前から知識として伝承してきた。 | |
| 歴史を振りかえってみるまでもない──。 | |
| 肉体の限界を持たない生命の存在について、 | |
| 我々はこう変換していた。 | |
| それこそは『新たな人類の姿』である、と。 | |
| そして、人類史上、 | |
| 最初に肉体を持たない生命として | |
| 生まれ変わったディジョン。 | |
| 我々は彼を『始まりの指導者』として迎え、 | |
| この革命を実行する! |
| パーク | さて、キミたちSARFが心血を注いできた |
| 活躍には感謝している。 | |
| 今までの我々は平和などという | |
| 曖昧で見えない心の報酬を求めていた為、 | |
| 無益な血を流した者も多く、 | |
| 苦しいときもあったはずだ。 | |
| しかし、今日……そんな時代は | |
| あっけなく幕を閉じた。 | |
| そして、ここからは、私から個人的に | |
| SARF所属のエース諸君に言葉を贈ろう。 | |
| 今こそ立ち上がり、 | |
| 我々の革命に参加したまえ。 | |
| 本日をもってSARFは解散。 | |
| ウロボロスの革命家であり、 | |
| 指導者アビサル・ディジョンの | |
| 指揮下にでも……。 |
| レナ | 嘘……。 |
| あの男がクーデターの指導者ですって!? | |
| 嘘でしょ? | |
| この戦い、すべての元凶が……ディジョン。 | |
| みんな……ごめん。 | |
| わたし、この目で確かめてくる。 |
| BROKEN WINGSへ |