[AL作戦]
・アリューシャン方面に関しては作戦資料が乏しく、予め水上機母艦を派遣して、
列島西部の攻略予定地の飛行偵察を行うことになった。
・また作戦開始に先立ち、潜水艦により列島及びアラスカ要地を偵察監視することにした。
・敵兵力は列島東部とアラスカ南部を拠点にしていると判断されていた。
・聯合艦隊は、北方部隊進撃中は北千島からの飛行哨戒(飛行艇)で警戒に当たらせること
にしたが、航続距離の関係から届かず、霧により哨戒が十分に行えないことが予想された。
すなわち攻略作戦期間中の知敵警戒は、水上部隊自体で行うしかなかった。
・キスカ攻略後は直ちに飛行艇を進出させ東方海面の哨戒を開始させることになっていた。
[アリューシャン要地攻略要領]
・アリューシャン列島の東部に敵の軍事施設、兵力配置されており、西部には兵力配置はない
とみなされていた。
・そこでまず、強力な根拠地であるダッチハーバーに、空母基幹部隊をもって奇襲し、その
蠢動をを押さえ、空母と潜水艦で東方を警戒しながら、西部要地の攻略を行う。
・攻略日(N日)には、海軍部隊がキスカ島を占領、
陸軍部隊はまずアダック島に上陸して軍事施設を破壊後に撤退、アッツ島に上陸占領する。
・この間、空母部隊(第二機動部隊)と戦艦部隊(第一艦隊)はこれを支援する。
・アリューシャン方面は、キスカ島の防備に重点を置き、飛行艇や水上偵察機を
進出させ、防備を急ぐ。輸送は北方部隊(第五艦隊)に担任させる。
<立案上の主な問題点>p81
(1)敵艦隊出現の可能性とその時期
・ミッドウェー島を攻略すれば、まず間違いなく米艦隊は反撃に出てくるだろう。
その時期は同島攻略後の公算が大きい。
・ただし、我が作戦部隊の出現が敵潜水艦に発見されれば、攻略作戦中に敵艦隊が
出現する可能性も有り得る。
・米艦隊が燃料補給等をしてから真珠湾を出撃し、ミッドウェー海域に到着するまで
約三昼夜かかるであろう。
例えば、5月28日の攻略船団サイパン出撃を発見通報した場合、6月2日頃までに
ミッドウェー海域に到着すると予想できる。
・我が方がミッドウェーを攻略しても、米艦隊が反撃に出ない公算も皆無ではないが、
有効な誘出手段は考えつかなかった。しかし、米艦隊誘出のために、わざと企図を
暴露するようなことは考えなかった。
(2)ミッドウェー攻略船団の発進点
・攻略船団とその護衛兵力は隻数が多いため、集合行動中に敵潜水艦に発見される懸念が
大きい。その場合、我が作戦の企図を察知されることは間違いない。
・そのため、最初は攻略船団の集合地をトラックに選んだ。仮に敵潜水艦に発見されても、
目的地が東方か南方かは判断が難しいから。
・しかし作戦準備が間に合わず、トラックまで移動する時間が確保できないため、
より本土に近いサイパンに変更された。
(3)山本長官の出撃
・聯合艦隊司令長官が出撃すれば、出撃後旗艦は無線封止の必要があるので、作戦指揮に
大きな制約を受ける。その理由については、
「聯合艦隊決戦兵力のほとんど全部を使うので、最高指揮官である山本長官が自ら進出して、
士気を鼓舞できるばかりでなく、戦場近くに占位することにより戦場の状況が明らかとなり、
適切な作戦指導ができると考えた」
「もちろん出撃後の旗艦の無線封止という不利な点も考慮したが、長官が出撃する方が有利
であるとの結論に達した」
・当時の無線通信兵器の能力から見て、空母部隊から400浬離れて航行する旗艦大和と
内地の陸上無線電信所とは、その受信能力に大差はなかった。
・日本海軍には「指揮官先頭」という言葉がある。山本長官が内地から指導するよりも、
現場に進出する方が、確かに士気の鼓舞にはなったと言える。
(4)低速戦艦の作戦参加
低速戦艦を参加させた理由を、黒島参謀は
・空母部隊の約一昼夜航程(約300浬)後方に占位させ、水上戦闘が起こった場合、
急行して戦闘に参加させる。
・空母が損傷して行動不能となった場合、戦艦を使って曳航する。
・開戦以来内地で無聊をかこっていた低速戦艦部隊乗員の士気振作のためではないかと
言われる。
・なぜ戦艦部隊を空母部隊の直接護衛に使わなかったとの批判もあるが、低速戦艦は
速力不足のため空母と行動を共にできない。第二次ソロモン海戦でも陸奥が機動部隊
に編入されたが、後方に取り残されて、駆逐艦への燃料補給しか出来なかった。
<補足>当時の聯合艦隊司令部の戦艦に対する評価
・山本五十六GF長官
「昭和12年頃、すでに戦艦は”金持ちの床の間の置物のようなもの”実用的価値は少ない」
「開戦前には(艦隊旗艦用に)戦艦は2隻あればよい」
・宇垣纏GF参謀長
「大艦巨砲主義者として知られる」
「航空主兵論に対して、なお研究の余地があり、海軍の大勢はまだ戦艦主兵であろう」
・福留繁軍令部第一部長
「真珠湾での活躍があったが、なおこれは有力な補助兵力で、海軍の主兵は依然として
戦艦であると考えている」
・佐薙毅軍令部作戦班長(佐薙メモ)
「マル五計画(昭和17年度軍備補充計画)に関する会議の中で、航空母艦の必要性には
異議はないが、主力艦の存在が価値を失うという田口太郎大佐(軍令部第二課長)の意見は
あまりに飛躍的とたしなめられた」
・藤田正路中佐(第二艦隊砲術参謀)
「既に今日の状況にては、戦艦は有用なる兵種に非ずして、今日重んぜられつつあるは、
唯従来の惰性にて、偶像的信仰を得つつあるに過ぎざるものの如く思はる」
[飛行機隊の攻撃]
一、ミッドウェーに対する第一撃
攻撃目標:空地の敵機、地上軍事施設
攻撃隊の編制:当部隊戦策による第五編制(指揮官:飛龍飛行隊長=友永丈市大尉)
(註)第五編制とは、陸上基地攻撃編制のひとつ
第一集団 第二群 第三攻撃隊(蒼龍艦攻18-爆装)
第四攻撃隊(飛龍艦攻18-爆装)
第二集団 第五群 第十一攻撃隊(赤城艦爆18)
第十二攻撃隊(加賀艦爆18)
第三集団 第八群 第一制空隊(赤城艦戦9)
第二制空隊(加賀艦戦9)
第九群 第三制空隊(蒼龍艦戦9)
第四制空隊(飛龍艦戦9)
二、対敵艦隊攻撃待機
当部隊戦策による第一?編制(指揮官:赤城飛行隊長)
(註)第一編制とは、艦船攻撃の編制のひとつ(推定)
雷装 赤城艦攻17、加賀艦攻26
爆装 蒼龍艦爆18、飛龍艦爆18
戦闘機 各艦6(計24機)
三、爾後の攻撃は追って令する。
四、敵艦隊出現の場合は、当部隊戦策に基づき作戦する。
索敵偵察:追って令する。
アリューシャン方面
アダック島
・無線電信所、兵力は十数名常駐
・本島のアイランズ湾は大艦隊を収容する能力があり、潜水艦基地および水上航空基地建設中
のようである。
キスカ島
・無線電信所、気象観測所あり
・海兵隊200~300名(確実ではない)
・良港あり、海軍根拠地建設に適している。
・水上航空基地および潜水艦基地の建設の疑いが濃厚
アッツ島
・無線電信所、気象観測所あり
・守備兵力は若干配備
・水上航空基地の適地あり
・セミチ島には大型陸上飛行場建設が可能な平坦地あり
・東京までは1800浬、米試作超大型爆撃機なら、東京空襲可能と判断される
アリューシャン方面の兵力
・陸軍地上部隊:約7300名
・陸軍航空部隊:約100機
・海兵隊:1500名
・海軍航空部隊:飛行艇42機
[アリューシャン列島]
ウニマク
ウムナック ■
アッツ ■ ■
■ キスカ アダック ウナラスカ
■ ■ ■ ■ (ダッチハーバー)
セミチ アムチトカ