敵情判断1

こちらは士官用テンプレ。過去スレの内容をまとめたものです。

<攻撃前日の敵情判断>
Q.6月4日に輸送船団が攻撃を受けながら、なお奇襲が成立すると見込んでいた南雲司令部
    の判断は甘かったのではないか。
A.攻撃前日の経過は以下の通り。
 

6月4日0040 第二機動部隊、ダッチハーバー空襲
     0520 第十六掃海隊、敵飛行艇と交戦
     0615 輸送船団、敵飛行艇に発見される
     1215 特務艦宗谷、敵味方不明の中型陸上機1機を発見
     1330 B-17、輸送船団を攻撃
     1510 赤城敵信班、敵哨戒らしき電波を傍受?
     1532 日没
     1630 第一機動部隊、敵飛行艇の触接を受ける
     2350 第一機動部隊、敵飛行艇の触接を受ける
     2354 PBY、輸送船団を攻撃

6月5日0130 第一次攻撃隊、索敵機、対潜哨戒機発進
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/259

 

この中で以下の3点に注目する。

(A)第二機動部隊による、ダッチハーバー空襲(0040時)

(B)攻略船団の被発見(0615時)と被攻撃(1330・2354時)

日米双方に記載があるのは、リード少尉機(PBY)による輸送船団発見。
「次いで船団部隊は、0615頃敵飛行艇に発見され、計5機による約1時間にわたる
執拗な触接を受けた」

この情報をもとに、船団は二度にわたる攻撃を受けた。
1330 B-17 9機(被害なし)
2354 PBY  4機(油槽船あけぼの丸に魚雷一本命中するも、航行に支障なし)
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/258

(C)南雲機動部隊が、敵哨戒艇による触接を受ける(1630・2354時)

 ①敵信傍受(『炎の海』牧島貞一/著)

こうなれば早く日が暮れたほうがよい。
「これで夕方まで敵に見つからなければしめたものだ」。千早大尉が言った。

あと20分もすれば日没というころ、タカタッター(対空戦闘ラッパ)
「総員配置につけ、対空戦闘!」
外に飛び出すと、甲板では兵隊がワイワイ騒いでいた。
「どこだ、どこだ」「あの雲の間から飛行機が見えた」「いや、あれは鳥だったよ」

白根大尉率いる戦闘機3機がすぐ飛び出して行った。
30分以上も待った。もう真っ暗になった頃、戦闘機は帰ってきた。
「はるかに敵機を見つけて追いかけましたが、雲に逃げ込んで見失いました」
「たしかに敵機か」。艦長は問いただした。
「敵機に間違いありません」。
 

しばらくすると、千早大尉が「おい、敵は今さかんに緊急無電を打っているぞ」
「なんと打っていますか」
「わかるものか、暗号だもの」
彼は今まで無電室に入って、これを聞いていたのだ。
「とうとう見つかってしまったか。昼間こっちが無電を打ったのがまずかったんだ」

私は、はるか西南方を進んでくる足の遅い輸送船団はどうしているかと心配だった
ので、山田大尉に聞いてみた。
「輸送船団はもう敵に見つかってしまったよ。B17が爆撃に来たそうだ」
「被害は?」
「一発も命中しなかったそうだ」
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1268653116/230-231
 

 ②1630時(『戦史叢書(43)ミッドウェー海戦』)

『一航艦戦闘詳報』によれば、南雲機動部隊は6月4日に2度触接を受けている。

1630「敵飛行機発見、利根発砲」
1631「赤城戦闘機3機発進」
1640「敵飛行機260度方向ニ見失フ、約10機」(利根発、機動部隊指揮官宛)
1654「赤城戦闘機収容」

日没は1543時(>>6)なので、薄暮の時間帯に相当する。

「24節の高速で南東方に突進中、1630(薄暮)利根は敵機約10機の発見を報じた。
赤城は甲板待機中の艦戦3機をもってこれを追跡させたが、敵機は260度方向に
見えなくなり、これを捕捉できず、1654艦戦を収容した」     (『戦史叢書』)

結局、南雲長官はこれを「誤認」と判断しています。
見張が不自由な時間帯だったのが、その理由を思われます。
ミッドウェー島の日施哨戒は、0100出発→1600帰着が標準なので、
誤認であったことは、ほぼ間違いないでしょう。
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/251-252

 

 ③2350時(『ミッドウェー』淵田・奥宮/共著)

続いては、
2350「敵飛行機ラシキモノ二回発見、間モナク見失フ」

当然夜間なので、飛行機ではなく、その灯火を発見したという意味です。
前掲『ミッドウェー』には詳細に記されているので、長くなりますが引用しておきます。

午後11時30分、赤城の対空見張員は報じた。
「敵触接機の灯りらしきもの、右90度方向・高角70度・雲の上近寄ります」

艦橋には、南雲長官・草鹿参謀長・各幕僚が姿を現していた。
皆の目は一斉に空を見上げている。だが見えない。
出撃以来、艦橋を離れたことのない青木艦長は直ちに「配置に就け」を下令した。
乗員はまたたく間に警戒配置に就いた。全員の目は光っている。だが見えない。
 

空には断雲が覆っている。切れ目から星がまたたいていた。艦は動揺している。
そのため星が動いているように映る。しばらくして艦長は見張所に問い返した。
「対空見張、先の触接機の灯りらしきものは、まだ見えるか」
「今のところ見失っております」
「星と間違ったのではないか。艦がかぶっているから星が動いて見えるのだ。
よく気をつけて見張れ」
「ハーイ」

しばらく様子を見ていたが異常はなかった。
「対空警戒を引かせましょうか」
哨戒長が艦長に諮っていた時、また見張から報告が入った。
「さっきと同じところにまた灯りが流れて消えました。流星にしては怪しい光芒です」

そこで今度は司令部から全艦隊に対空警戒が下令された。
そして確認に努めたが、その後異変はなかった。(引用終わり)
 

公刊戦史によれば、「南雲長官は測風気球の灯を誤認したものと断定した」。
その根拠は「このような誤認は、ハワイ奇襲作戦の際も攻撃隊発艦位置へ向け
突進中に経験していた」となっています。

いずれも、発見時の状況から鑑みて誤認の可能性が高いでしょう。
しかし「兆候」や「状況証拠」としてなら、十分な根拠に成り得ると思います。
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/254

http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/256-257



<以上から、南雲長官が下した敵情判断が以下の通り。>

これらに基づいて、6月5日0000時(第一次攻撃隊発進の1時間半前)における
南雲長官が下した情勢判断は以下の通り。

(1)敵艦隊は、我がミッドウェー攻略作戦が始まれば出動して反撃してくる算がある。
(2)敵の飛行索敵は西方・南方を主とし、北西方・北方は厳重でないと認める。
(3)敵の哨戒圏は約500浬と推定する。
(4)敵は我が企図を察知せず。少なくとも機動部隊は敵に発見されていないと認める。
(5)敵機動部隊が付近海面に行動中と推定する資料はない。
(6)我はまず、ミッドウェーを空襲し、敵の基地航空兵力を壊滅して上陸作戦に協力した後、
   敵機動部隊に対処し、これを撃滅することが可能である。
(7)敵基地航空兵力の反撃は、我が上空直衛戦闘機と対空砲火によって、撃退することが出来る。
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/260

 

<(A)~(C)を受けて米空母が出撃したとしても、ミッドウェー島空襲中に出現する恐れは少ない。>

「まずダッチハーバー空襲の急報に驚いて、米艦隊が出撃したとしても、北方に向かう
ので、南雲艦隊とは直接関係ない。

次に0615時のリード少尉機電により米空母が出撃しても、約1日後(6月5日0330頃)
にミッドウェー空襲が始まるので、それまでに出現するとも思えない。
せいぜい「中間海面をミッドウェーに向けて急行中」といったところか。

しかし、それでも米機動部隊が付近に所在しないとは断言できない。
この世の中に”絶対”ということはないですからね。例えば、ハワイへ帰投中の米艦隊が
偶然ミッドウェー近海に居合わせて、緊急電を聞き駆けつけて来るということも考えられる。
そうなると、ミッドウェー空襲中に米空母出現という事態は十分可能性のある話です。

その万が一の事態に対する保険として、「七線一段索敵」と「雷装待機」です。
ここまで米空母に対する備えをしていた南雲長官に対して、「作戦目的を理解していない」
という非難は当たらないのでは?」
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/274

 

<6月5日0130時に友永隊を発進させても、基地が空の公算大である。>

「問題はやはり、輸送船団被攻撃に対する対応でしょう。
仮に南雲機動部隊が発見されていなくても、攻略部隊が発見されたことは確実なのだから、
当然ミッドウェー基地航空隊は翌朝(6月5日黎明時)から出撃し、船団を攻撃することは必至。

となると、0130時に攻撃隊を発進させるという当初の計画では、「空っぽの基地」を叩くことに
なる(日出は0152時。>>6
>>53の通り、攻撃の主目標は「敵飛行機」だったはず。
これでは、最初から「第二次攻撃ノ要アリ」確定ではないか!

「さらに4日船団部隊が敵機に発見攻撃された報を受けたが、南雲長官は情勢を安易に
判断していたためか、攻撃要領を改めなかった。
この要領によると、ミッドウェーの攻撃時刻は日の出後約1時間半(0330頃)となる。
従って同島攻撃時、敵の攻撃兵力は我が船団攻撃に発進後のことで、同長官が企図して
いた”奇襲により敵機を捕捉撃滅する”ことは、出来なくなる虞れが大きいのである」(『戦史叢書』)

明らかにこれは、南雲長官の油断であり失策と言わざるを得ない。 」
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/275
 

 

<故に、奇襲成功の見込み大と判断していた南雲長官の判断は甘かったと評価できる。

 しかし発進時間の変更や攻撃隊の編制変更は、現実的に困難である。>

「では、どうすべきだったかと言うと、これまた難しいんですよねぇ。
考えられるのは、
(甲)第一次攻撃隊の発進時刻を早めて、黎明時(ミッドウェー基地隊の発進前)に叩く
(乙)第一次攻撃隊の編成を艦攻全力にして、目標を「敵飛行機」から「滑走路破壊」に変更する。

まず、(甲)について。
計画では0130時発進のため、それに合わせて6月4日2345時に「搭乗員起し」、
また機体の整備等が行われている。
仮に1330時の船団被攻撃の報を受けて、計画変更を司令部で検討し、発進時刻を
2時間早めることに決定したとして、準備が間に合うのでしょうか。
混乱が予想されます。

(乙)については、米空母に備えての「雷装待機」(しかもGFからの厳命)を変更するのは、
よほどの決心が必要ですね。GF司令部に対する言い訳を考えとかないと・・・ 」
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/276

「当日・同海域の日の出は、0152です。
史実の第一次攻撃隊の発進の0130前後がまさに黎明時でミ島到着が0315前後、
それを0130にミ島到達に変更するというのは、1時間半以上早い発進させることに。
これは準備の問題もさることながら、攻撃隊に夜間発進・夜間侵攻を強いることになりますから、
攻撃隊の規模を考えると、実施はかなり困難ではないでしょうか?

また発進時間の前倒しは、進出距離の増大を意味します。
史実で攻撃隊の発進はミ島から250浬、黎明時攻撃を実施するためには2時間は早く発進させるとすると、
ミ島から300浬弱の位置から発進することになり、攻撃隊の航続距離的にかなり厳しいことになります。

進出距離だけなら機動部隊の侵攻速度を上げることで対応は可能ですが、
今度は母艦側の燃料消費の増大を意味し、後の航空戦を考えるとこれまた悪影響がでかねません。
以上を以て、(甲)案は実現困難と考えます。

(乙)案も、実現性は(甲)案よりも勝るものの、雷装待機の問題に加え、
MI作戦で想定された占領後の速やかなる航空隊進出を考えると、
機動部隊単独でそれを覆すような攻撃を実施するのは、些か問題ありではないでしょうか?」
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/306

 

<有効な対案が無い以上、南雲長官の作戦指導もやむを得なかったのではなかろうか。>

最後に、淵田評で締めくくっておきましょう。

「この状況判断(>>260)はどうであろうか。
後日の批判はともかく、当時実際に敵情はその片鱗さえも得ていない。
しかし戦闘において、敵情不明はありがちのことであってみれば、当面の敵情が
分からないと言っても仕方のないことである。

しかしそうなれば尚更、起こり得るかもしれないあらゆる事態に対応する万全の
構えがなければならないのであるが、わが戦力にかけた自信は強かった。
むしろ強すぎた。

それは思い上がっているのではなかったか。
否、南雲中将の信頼は必ずしも自惚れではなかった。
まことに駒は見事に動くのであった。
しかし条件がつく-使い方さえ誤らなければ-」

自信と見るか、慢心と見るか、評価者の見方によって変わるものであり、
断定すべきものではないのかもしれません。
 

この「あらゆる事態に対応する万全の構え」に関して、
「米空母出現に対する備え」については問題なし。
「企図漏洩に対する備え」については問題あり。
これが現段階での本職の見解です。
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1263203379/279-280
 

 

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