ムーンライトシンドローム

【むーんらいとしんどろーむ】
ジャンル アドベンチャー
機種 プレイステーション
発売元 ヒューマン
発売日 1997年10月9日
メディア CD-ROM2枚
プレイ状況 途中で放棄
総合評価 評価不能

90年代的超電波サイコホラー

都市開発の波に押され近代化し変貌を遂げる「雛代町」。雛代高校もまた、新たな校長によって進学校に変化、老朽化の進んだ木造の旧校舎に代わって近代的な校舎が増築された。
全てはうつろっていく。
岸井ミカもまた、受験生のユカリやチサトと疎遠になっていた。ミカは、急激な変化と呼応するかのように、町に不穏な気配が漂い始めたのを感じていた。
そしてある日、自分を呼ぶ男の声に振り向いたことから日常は歪み始める。
…月の光に魅せられて、 人の心は狂気に満ちる。


「トワイライトシンドローム」の後に発売された外伝作品。
登場人物はトワイライトから引き継がれているものの主人公が異なり、ユカリからミカへと変更されている。
ジャンルはオカルトホラーではなくサイコホラー。
ちなみにパッケージも説明書もトワイライトについて触れていない。
様々な理由により賛否両論真っ二つとなった。



操作

トワイライトに引き続き自由にセーブできない。一章読み終わるまで不可。こんなところは引き継がなくてよかったのに。
説明書は「これ説明書?探索用雛代高校内マップとかじゃなくて?」と目を疑う薄さ。内容はポエミーで電波ゆんゆん。しつこく「展開は1本道」「マルチエンディングではない」「ゲームオーバーがない」と予防線を張って説明してくれる親切さ。この時点で嫌な予感が的中したことを悟った人はいい勘してる。
説明書が説明書の役割を放棄している為、プレイヤーは始まって早々、自室から出ることもできず混乱すること間違いなし。普通チュートリアル的にキャラクターが説明してくれたりするだろう?ノーヒントなんだなこれが。
ミカ(プレイヤー)が部屋を出ようとすると母親に気づかれて外出できないのだが、これは「ゆっくり歩いてこっそり外出」が正解。ここでいきなり詰まりやすい。そんなんヒント無しでわからんわ!!始まっていきなりこれ。わくわくしながらゲームを起動したプレイヤーの心を開始直後から容赦無くポッキリ折りに来る。いや、もしかしたらこれはプレイヤーをふるいにかけているのかも知れない。この理不尽さに付いて来られるプレイヤーだけがゲームを続けろ!という…荘厳なお告げ…いやそんなわけないか。

しかもその後も横スクロールで移動して会話するだけなので自由度は皆無。
前作は選択や行動の如何で結末や展開に影響があったが、なにしろ今作はエンディングまで「一本道」なので、当然選択も行動も影響しない。アドベンチャーなのに「誰がどうなっても」何をどうしても、誰も助けようがないのだ。プレイヤーは固唾を飲んで見守ることしかできない。果たしてそれはゲームなのか?

更にキャラがポリゴンになったことにより、なぜかより道に迷いやすくなった。一本道だから行き先は一つなのにね!おかしいね!
しかしほとんどの登場人物は走って移動可能になったのはうれしい進歩(トワイライトは基本歩くことしか出来なかった)である。

ほとんどボイスのなかったトワイライトに比べ、ボイスが豊富でよく喋る。

シナリオ

このゲーム最大の問題点。このストーリーのアレさ加減の前では、この問題以外のクソ操作性や意味不明の説明書などは全て些細なものとして片付けることが可能。
何を表現したいのか、何を語りたいのか分からない、サイコホラーという名の電波。
伏線や意味深なシーンやセリフはあるけど全部ぶん投げてるところも含めて、実にエヴァの最後の方っぽい感じ。
作り手が表現したいことだけを押し付けがましく並べ立てているだけ、のような感じをプレイしていて受けたのは、きっと物語に干渉できないせい。一本道なせい。気のせい。きっとそう。多分。

アドベンチャーだから台詞中心で話が進むのに、その台詞が凝りすぎてて日本語崩壊が酷い。
「私がシンボルからサブスタンスになる瞬間、リアルを取り戻すの!」は迷台詞として有名か。他には「二頭の禁欲な馬がどうのこうの~全てを許せる人に」とかあった気が。わけがわからないよ。

ネタバレになるが、伏せない方がいい事実なのでハッキリ書くと
終盤において、トワイライトのメイン登場人物が意味も無く惨殺される。せめてそれに意味があればいいのだが…。いやあるのか?少なくとも今の僕には理解できない。

ケース裏を見た時点で嫌な予感がするゲームってそうそう多くないと思うのだが、このゲームはスゴイ。登場人物のショットが散りばめられ「静かな狂気」「癒しの刹那」というキャッチフレーズが書かれているだけ。一応あらすじと言うかゲーム中で起きる事件は書かれているが、「オムニバスストーリー」のゲームなんだと言うこと以外、何をするゲームなのかさっぱり読み取れない。
そもそも「10篇のオムニバスストーリー」ってどこにそんなもんあったのでしょう?10にブツ切れになってる1本道のストーリーならあったけどね!

キャラクター

トワイライトから引き継がれている主要登場人物は、皆なぜか嫌らしい部分をクローズアップして描写されている。トワイライトで強まった絆は否定され、成長したはずのキャラクターは絶対に友だちになりたくない性格に変化。感情移入できない。性格改変された怒りばかりが積もるばかり。最初から新作でやればよかったのに。
ちなみにトワイライトに影も形もなかったのに、何故か突然現れた「チサトの妹、ヤヨイ」も含めて新キャラは殆どキチ…おっとっとイっちゃってる人間ばかり。っていうか人間じゃないのもいる。アレな人だせばサイコでホラーだって?そんな馬鹿な。

そして一本道のアドベンチャーなものだから、キャラクターはプレイヤー置き去りで勝手に悩んで勝手に結論を出す。プレイヤーは干渉できない。しかも思考も言動も意味不明で、どうしてその結論に至るのかまったく理解できない。

グラフィック

グラフィックが2DからポリゴンとCGに進化した。
移動画面のキャラクターは、ファッションセンスからして最低で、どいつもこいつもポリゴン不細工。
しかしムービーなどのグラフィックは今から見てもまあまあ綺麗(時代を考慮すればかなり綺麗な方)。その気怠げでどこか影のある登場人物は、陰鬱な世界観を構成する手助けになるだろう。


総評

トワイライトのファンならおすすめしない。
総合評価は評価不能とした。
しかし個人的にはFランク以下にしてやりたい。
しかし某四八のように「ゲーム以前の問題」とかそういうわけでもない(バグなど)ので、Fをつけるのは躊躇われる。
好きな人にはたまらないらしいのが理解できないし理解したくも無いのだが、好きな人は極一部だが確かにいるゲームでもある。
確かに世紀末感というか、90年代末期の、あの時代の「もう後がない」雰囲気、空気が結晶化したような希有なゲームではあるとは思う。
一本道なのでアドベンチャーと言うよりはむしろムービーやドラマだが、作品としての完成度は高い。それが現代アートみたいに万人に理解できるものかどうかは置いておいて。
万人に勧められるゲームでないことだけは確かである。合う合わないが激しい。少なくとも自分は人に勧めない。

トワイライトの隠しシナリオ(という名の前振り)「Prank」を見てしまってげっそりしているなら絶対にプレイしない方がいい。それを見て逆に興味が沸いたという人はやってみるといいと思う。
また、同一の世界観の「シルバー事件」「花と雨と太陽と」が好きなら肌に合うと思われる。保証はしないが。

トワイライトファンからどういう反応が帰ってくるか予想の出来そうなものなのに、「シンドローム」という続編を匂わせるタイトルにしたこと、前作の舞台や人物を借りてきたことについては弁護の余地がない。人気作である前作のファンに購入させるあざとい策のように取られても仕方のないところだろう。正直、舞台と名前だけ借りてきた別のゲームとしか言いようがない作品なのだから、全く別の完全新作として作ればよかったのである。それならば純粋に惹かれて購入した人間に、今頃ひっそりと正当な評価をされて崇められていたと思われる(事実、トワイライトファンの怒り補正でまともに評価されていないような気もする)。
色々と残念な作品である。

ちなみに本作の位置付けは、トワイライトの「続編」というより、「パラレルワールド」とされることが多い。
理由はいくつかあるが、有力なのは舞台となる町名が「雛城町」ではなく本作では「雛”代”町」であるということである。
「雛城町」という名前は、前作ではシナリオに関連し、ちゃんとした意味があってこの名前であった。それがあえて変えられているというのがその根拠だ。
それに加え、ムーンライトで迎える惨殺という結末は、プレミアムディスク「トワイライトシンドローム~The Memorize~」の「チサトの回想」というエピローグ内容と矛盾する。
よって、町の名前もパラレルワールドだということを暗に示したものなのではないか?という考え方があるのである。
個人的にはやっぱパラレルでいいと思う。それが双方のファンの平和のためというものです。
ちなみに「トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説」の公式サイトのシリーズ年表に本作は記されていない。やはり公式的にも「トワイライト」の続編ではないようだ。
(それにこのソフトはどちらかというと、本作の監督、須田剛一の作品で世界観を同じにする「シルバー事件」「花と雨と太陽と」のシリーズに組み込まれる方が相応しい)。
最終更新:2012年03月28日 16:10