雨格子の館
【あまごうしのやかた】
ジャンル |
本格推理アドベンチャー |
機種 |
プレイステーション2(PSPに移植あり) |
発売元 |
日本一ソフトウェア |
発売日 |
2007/03/08 |
メディア |
DVD-ROM1枚 |
プレイ状況 |
全エンディングクリア(ゲームオーバー全種は未見) |
総合評価 |
A |
大人は推理する
主人公の一柳和は、嵐の夜に山で迷ってしまった。明かりを頼りに洋館にたどり着くが、その庭先で男の死体を発見。直後に何者かに殴られ気絶してしまう。目を覚ますと和は館の中で介抱されていた。正体不明の人気脚本家「帽子屋」に集められ、館に集った8人の役者たち。彼らは自分は庭で倒れていたと言う。そして死体はなどなかったと言うのだ。
自分が見た死体は?自分は誰に殴られたのか?疑問符が頭に浮かぶ。
そして嵐の夜、殺人事件が起きる。しかしそれは惨劇の始まりに過ぎなかったのだ。
システム
「見立て殺人」
予告を見て対象の人物と「どの本に見立てられて殺されるのか」を正しく推理、警告・妨害などで殺人を未然に食い止めることに成功すれば、展開が変化し事件を未遂に終わらせることが可能。
「好感度」
冒頭で各キャラクターと会話する機会があり、その会話の結果(つまり第一印象)によって、一度の自由行動で「会話」出来る回数が変化する。好感度最高で10回、普通で5回、最低で2回。好感度が低くなると、立ち絵もバストアップから全身と距離感のあるものになり、台詞も突き放したものに変化。必然的に得られる情報量も減る。下手をすると会話不能にも。
「アクションゲージ」
自由時間に移動、会話、調べるなどの行動をすると「アクションゲージ」が消費される。ゲージが無くなると自由行動が終了し、ストーリーが進む。
移動は、見取り図から行き先を指定する「MAP移動」と、3Dマップ上を自分視点で移動する方式2種類。
調べる行為については、画面上のカーソルを動かして箇所を指定する方式。
「キーワード会話」
キャラクターとキーワードを選択して会話、情報を引き出すことができる。キーワードは展開や調査などで入手できる。キャラクターが教えてくれる情報は和への好感度によって左右される。
「情報整理」
調査や会話などで入手した情報は、日織の部屋のPCに入っている「日織メモ」に登録されていく。また、自室での情報整理では「アリバイ表」に情報を記入できる。証言を基に各キャラクターの行動を記入。正しく記入すれば犯人の特定はもちろん、証拠として使用できるようになる。
評価点
「アクションゲージ」システムのため、ある程度計算して調べまわらなければいけない。しかし登場人物はほぼ自室にいる。クローズドサークルで殺人が起きているので理にかなっていると言える。限られた時間でキーワードで証言・証拠を集めなければならないので、ちょうどいい。自室にいなくてもいかにも、な場所にいるからリアル。
キーワード会話は聞き込み調査をうまく再現している。キーワードは場所、人、事柄など分類されているので選択しやすい。同時にやりこみ要素・遊び要素でもあり「脚立」「マリモ」などくだらないキーワードは、明らかに捜査に関係ないのに限られた会話回数を消費してまで聞いてしまいたくなる魔力がある。そしてその会話が雑談過ぎて面白いから困る。
見立てのために読む小説が、あらすじだけでもおもしろい。小説じゃない本も豆知識などが得られて、どれも読んでみたいと思わせるものばかり。また、見立ての小説以外のある特定の小説を見立てに選ぶと、専用の台詞が用意されているお遊びは最高に笑わせてくれる。
そしてこのくだらない会話が、結果キャラへの親近感の発生源となる。どうしても助けたいんだ、というモチベーションとなるのである。そして救うことに成功した場合の一枚絵は達成感を感じさせてくれる。
このシステムはクローズドサークルが前提のこのゲームにうまくマッチしている。
全ルートクリアで劇中に登場、かつ鍵でもある「北速水」シリーズという探偵小説シナリオがプレイできる。これは推理はなくノベル形式。けっこうなボリュームがありクオリティが高い。
問題点
一日ごとの殺人阻止がまず前提にある。それと並行作業で、アリバイ表の完成、キーワードの聞き込み、迷路探索など最高ランククリアはやらなくてはいけないことが多すぎる。完璧なクリアを目指す場合は作業ゲーと化す。
見立て元の本はただ書斎に置いてあるだけ。しかも一度クリックしないとどの棚にどの種類の本があるのか分からない。雑学系なのか雑誌なのか小説なのかわからないということだ。
で、なんとかそれっぽい本棚を見つけたところで、推理小説数十冊の中から見立て本を確定しなくてはならない。タイトルだけでは当然ほとんど確定出来ない。
アクションゲージを更に使ってクリックして、あらすじを読んでやっと…と言ったところ。手当たり次第過ぎる。
強制的にセーブとロードを繰り返さねばならないところがストレス倍増。
フラグ管理が甘い。エンディングで一番好感度が高く、かつ生存したキャラから手紙が来るが、死んだ奴についてのことが普通に手紙に書かれてた時はどうしたことかと思った。何のホラーかと。そいつもう死んだよ…こいつ現実を認められないのかよ、と、欝になる。まあ単なるミスなんだけども。
総評
総評A。
良作。ただでさえ少ない恋愛以外&原作なしのPS2アドベンチャーゲーム中で、推理ものとなるとかなり少ないわけだが、これはかなり真剣に推理小説をやっている。
嵐の中、館に閉じ込められる役者。まねかれざる訪問者の主人公。そこで起こる連続見立て殺人。誰も逃げられない…っていかにも!という感じであろう。
自分で推理してる!自分が探偵なんだうおおおおお!的な気分になれることは間違いなし。
ただ主人公が異常に臆病というか、要するにヘタレで泣き虫の童顔男子(成人)という非常に個性的なキャラクター造形をされているので、主人公のようなタイプが苦手な人は拒否反応を起こす可能あり。探偵はカッコよく推理を披露して、びしっとキメなければいけない!とかいう人には受け入れられないだろう。
人の痛みをわかってあげられる優しすぎる青年という設定なのだが、煮え切らないとも言い換えられるのも確か。自分はなんというか新鮮で(推理もの主人公がこれとは)好きだけども。
後に出たベスト版では整合の合わない箇所やバグは解消された模様。またシリーズのプラットフォーム変更に伴いPSP版(とダウンロード版)も追加要素ありで発売されている(追加シナリオ2本と細部に追加テキストがある)。PSP版はゲームシステムも親切になっているので、プレイするならこちらがおすすめ。
最終更新:2012年02月26日 20:42