流行り神 PORTABLE 警視庁怪異事件ファイル

【はやりがみ ぽーだぶる けいしちょうかいいじけんふぁいる】
ジャンル ホラーアドベンチャー
機種 プレイステーションポーダブル
発売元 日本一ソフトウェア
発売日 2005/12/15
メディア UMD&DL
プレイ状況 既読率100%・データベース100%
総合評価 S

ねぇ、知ってる?友達の友達から聞いたんだけど…

警視庁の警部補である「風海純也」となって都市伝説関連の怪事件を解決していく。
同僚の“小暮宗一郎”巡査部長とコンビを組み、義兄で民俗学者の「霧崎水明」や教え子の「間宮ゆうか」霧崎の友人で監察医の「式部人見」らの力を借り、不可解な事件の真相究明に挑む。

  • 序章
    • コンクリートに囲まれた地下室で目覚めた自分は記憶を失っている。どこからか聞こえる声は失踪した「風海純也」が遭遇した事件を語る。
  • 第零話 チェーンメール
    • 風海の元に届いた一通のチェーンメール。連続殺人犯を目撃したという内容だったが。
  • 第一話 コックリさん
    • 風海初めての事件。高校で女子生徒の連続自殺事件が発生し、所轄の小暮と捜査に当たることに。
  • 第二話 鬼
    • 謎の男から誘拐事件の捜査の指示を電話で受けた風海と小暮。現場から追い出された2人の前に、道明寺と名乗る刑事が現れた。
  • 最終話 名前の無い駅
    • ゆうかと一緒に「名前の無い駅」に行っていた風海。しかしゆうかは行方不明になってしまい…。

  • 霧崎編 さとるくん
    • 霧崎水明が中学時代の体験。電話ボックスで未来を教えてくれる「さとるくん」の噂を聞いた水明と友人たちはさっそく実行することに。
  • 人見編 カシマレイコ
    • 式部人見が医者になりたての頃の体験。とあるカリスマモデルが病院へと搬送され死んだ。それがきっかけかのように周囲に異変が。
  • ゆうか編 神隠し
    • 間宮ゆうかが高校時代の体験。先輩と友人たちと肝試しで冬季休暇で閉鎖された校舎に忍び込むゆうか。

  • 退魔師 犬童蘭子
    • 読むだけの一本道のシナリオ。第一話「コックリさん」の裏で暗躍する蘭子視点の物語。

概要

2004年にPS2で発売され、その後廉価版改良作「Revenge」が発売されている。
本作PORTABLEは、「Revenge」を移植、操作系の改良や新規グラフィック追加をしたもの。
おまけに本編とは関係ない都市伝説オーディオドラマも収録されている。

システム

選択肢を選択して事件の謎を解いていく典型的アドベンチャーだが、特異なのがシナリオ方式。捜査方針如何で、常識に則った「科学的」な捜査、「オカルト」を前提とした捜査へと大きく分岐する。

「セルフ・クエスチョン」
要するに自問自答。ゲーム中要所要所で何度か出現。
ここでの推理がEDランクや、シナリオの「科学」「オカルト」捜査方針決定に影響する。
これまでの状況を無視したトンでも推理も可能だが、間違えた選択肢を選ぶとランク(評価)が下がってしまう。
またあまりに見当違いな推理ばかりしていると、最後に推理ロジックで必要なキーワードが入手出来ておらずバッドED突入ということもありうる。
また、導き出した結論によっては主人公が迷走して速攻ゲームオーバーになることも。
不正解の選択肢を選んだ場合、文章やエフェクト画面の波紋エフェクトで認識できる。

「カリッジ・ポイント」
シナリオごとに定数があり、行動を決断する際に表示される。要するに勇気。
勇気を必要とするような言動を選択するとポイントを1つ消費する。
ポイントを使い切ってしまうと、それから後はポイントを消費する選択肢を選べなくなってしまう。
使いきっても進行不可能にはならないが、ベストエンディングを逃す可能性が出てくる為、使いどころを考えねばならない。

「推理ロジック」
解決直前に自分で作る人物相関図を作るシステム。ゲーム中で得たキーワードを当てはめていく。
一つの空欄に対して複数のキーワードが表示される為、真相を把握していないと完成出来ない。
完成度で可か否かの判定が下り、否ならバッドエンドへ、可で真エンドへ分岐する。
当てずっぽうでは三角の判定かバツの判定を食らい、ランクが下がるか、バッド直行になる。また、セルフ・クエスチョンでミスりすぎていると必要なキーワードが無いことも。

「データベース」
ゲーム中に話題にのぼる都市伝説やオカルト用語を解説してくれる書庫。
なかなかの情報量で、これを収集するのもゲームの楽しみ方。
また、収集度が隠しシナリオ出現条件にも関連している。

問題点

セーブ&ロードが不便。セーブする度にいちいちシステムデータをロードしてセーブしなくてはならない。めんどくさい。
セーブとロードがとなりのボタンに割り振られてるからややこしくてミスることも。ミスった時の怒りときたらもう…。

フローチャートがない。分岐多数かつ既読率が表示されるゲームでこの仕様は鬼。

隠しシナリオがあるが、条件がイマイチよく分からない上に、最後の蘭子編の出現難易度が高すぎる。

既読スキップがやや遅い。次の選択肢まで飛ばせるならともかく、スキップのみでこれのスピードはちょっと。

科学、オカルトに分岐と謳っておきながら、全体の流れがオカルト寄り。人見のようにオカルト絶対許せない!派や、オカルト現象を完全に科学で解明したい、と思った人はイラっと来そう。特に隠しシナリオの蘭子編はオカルト全肯定完全オカルト路線。その上選択肢が存在しないので、ただ読んでいくことも相まって苦労した割に微妙。

良い点

推理ロジックというシステムは画期的。
これまでの推理もののように適当、または総当たりで解くことを封じている。
自分で本当に頭を使って事件の全貌を整理し推理する必要があるというのは、プレイヤーを満足させてくれる。

シナリオ冒頭に入る「引き」の物語がよい。
「風海刑事」の話を語って聞かせる人物は誰か?ここはどこなのか?そして自分は誰なのか?ということが気になり、次の話を読み始めてしまう魅力がある。

シナリオが面白い。
ホラーと言うと日本の怪談や洋風怪人&人外がバーン!系が多いが、これは都市伝説がモチーフ。そしてどんなオカルト事件でも、事件の裏には人間の悲しみや憎しみ、時には愛情が絡み合っている。これまでなかった切り口だと思う。第一話「鬼」をはじめ、シナリオを通して描かれる人間の悲哀をうまく描いている。
展開も科学、オカルトだけで違った展開となるのは、自然に繰り返しプレイをしたくなる面白さ。もう片方のルートを通ることで明らかになる真実なども新鮮で良い。
題材も、こっくりさんはじめメジャーな都市伝説が扱われていたが、科学的な見方や、民俗学としての歴史など、読んでいて非常に興味をひかれる。

キャラがいい。主人公が比較的プレーンな感じなのに比べ、他の人物がだれもかれも個性的。一話ごとのゲストキャラすら濃い。メイン登場人物たちの濃さや推して知るべし。キャラが濃いからか会話などやりとりが面白い。決して明るくはない話を楽しく読まさせてくれる。
またオカルトに対して肯定的な霧崎やゆうかでも、妄信的にオカルトを掲げるのではない。ここが驚きだった。起きた事象に対し、科学的な見地などあらゆる可能性を考慮してから、まだ説明出来ない時に未知の力が働いている可能性を考慮するといった風。こういうゲームに出てくる人物というのは大抵オカルトマニアで、色々と可哀想なキャラであることが多いのに…(隠しシナリオの田井野みたいに)

音楽がいい。心に残るBGMとかそういう感じではないのだが、場面場面によくマッチしている。恐怖を煽り、緊迫感を演出し、日常の安寧を丁寧に表現している。タイトルが全て漢字1文字なのもいい雰囲気。
ネタバレになるが、劇中で鍵となったある音楽が、スタッフロールで流れていることに気がついたときは本当に感動した。
やられたな、と。

特筆すべきはグラフィックス。近年アニメタッチの絵が多いサウンドノベルだが、本作品は絵的にかなりリアル。ゲームオーバー画面の中には夢に出てくるほど印象が強烈なのも。死体とか幽霊とかまあそんなんが。

既読スキップが搭載されており、繰り返しプレイに便利。一度選んだ選択肢にチェックがつくのも良心的。

総評

間違いなく良作。
今でもまあまあメジャーだが、もっともっと有名になってもいいくらいであろう。
PS2での最初の発売からやや経っているがまったく気にならない。古くない、というか。題材が都市伝説であるからかもしれない。システムも特徴的で他に類を見ない面白さであり、スキップなど繰り返しプレイにも優しい。

ただ、このシリーズは「都市伝説」は「真偽が明らかではない、怪奇で魅力的な噂話」だという前提があり、その上話が進んでいくので、Sランクでクリアしたとしても事件の全てが明らかになるわけではない。
科学・オカルト両方をクリアすればある程度把握はできる。が、なんとなくわかる程度で、はっきり確定はできない。それが都市伝説なんだ、オカルト事象は全部分からないからオカルトなんだ、と納得できないと言うか、なんでもはっきりさせないとイライラするタイプには向かないゲームだと思う。

DSでシナリオの隙間を埋める「隙間録」収録の移植版が発売されているが、画質音質はPSPの方が良い。
第零話全部が体験版としてプレイステーションストアで配信中。データも製品版に引き継げる。
是非やってみてはいかがだろうか。
最終更新:2012年02月26日 20:46