アパシー 流行り神

【アパシー はやりがみ】
ジャンル アドベンチャー
発売元 七転び八転び
プレイ状況 データコンバートが必要なED以外は全クリア
発売日 2009/12/30

総評

全体としてはいい方だと思う。同人ノベルゲーとしては完成度は高い。
値段の割にボリュームがけっこうあったからその点に不満はない。短編集でいくつもの物語が読めるのは嬉しい。

システム面も「次の選択肢まで飛ばす」があればより良いと思ったものの、既読スキップも早くかなり快適だった。
HPシステムはカリッジポイントシステムの劣化版だと感じた。またカリッジと違って、HPが必要とされる選択肢がほぼ正解ってわかるというのもどうかと。あまり斬新な感じではなかった。それにベストエンドや真エンドのために、経験値を貯めてゲームクリアという作業を相当数繰り返さなくてはならないのは苦痛。途中セーブをロードしてもそのセーブ時のレベルのままなのもどうかと…毎回必ず頭からやり直し。シナリオスタート時にいちいち「レベルを引き継ぎますか?」って聞かれるのもメンドくさい。引き継がないことはまず無い。

OPは怖くて雰囲気満点(パッチ当てるまで上下逆だったけど。VISTAェ…)。
不満といえば、シナリオ中で音ヘボイ箇所があったくらい。悲鳴とか恐怖音って重要だと思う。まぁ同人ゲーだしフリー音源とか使うから仕方ないのか。

で、肝心の内容はと言うと…ちょっと。
これがきっかけでアパシーシリーズに興味は持ったけれども、流行り神ファンから見た「流行り神」としては不満が残る出来だった。
編纂室のメンバーの話を新たに読むことが出来ただけでも幸せなんだと思いたい。

感想に愚痴が多くなっちゃったので誤解のないように言っておくけれど、この作品は嫌いじゃない(ネタバレ避けたらあんまり内容が語れなくなっただけ)。
データ連動しないと見られないバッド以外、全部のエンディング見たくらいには好きだよ!11時間もプレイしちゃったしね!!
色々と(特に流行り神サイド)残念だったところは次回作に期待。


以下、流行り神シリーズのネタバレが酷いです。
・「オープニング」
蘭子まっちょすぎる。かごめはヘアスタイルからして別人。ゆうか?誰ですかこれは。一方、人見はいい感じ。スゲェ美人。風海も美形に。小暮さんは…可もなく不可もなく。
風海は第三者から見ると「スーツでびしっと決めてる」「出来る人オーラ漂ってる」人間のように見えるらしい。
怪人デカおじさんはすっかり定番の都市伝説になってるそうな。
OPはキャラ紹介を兼ねてる感じで人から怪談を聞くなど話そのものは面白い。主人公も共感できるノリノリおばかだし。


アパシーサイド

DSでなんかゲームが出ていたかな?というイメージしかないんだけども、なかなか個性的というか色物キャラばかりで魅力的だと思った。設定もなかなか面白い。
ただアパシーサイドはストーリーがほぼ一本道なのが残念。

・「開かずの間」
グッドへの分岐条件がやや不親切な気がした。
何回もゲームオーバーになって作業しないとグッドへ辿り着けないのもどうか?
ネタ自体は定番でありながらも、どんでん返しがあって面白かった。あれは素直に予想外。
主人公の賽臥の特殊能力で、相手の発言が嘘か真かを知ることができるのはなかなかわくわくした。嘘言っててもどの箇所が嘘なのか自分で考えなくちゃいけない所など、オカルトと言うよりは推理メインのシナリオ。賽臥もアホっぽくて可愛い。

気になるのが真エンドで見られる会話。あーいう「仕事」は道明寺とかの仕事の領分だったか?2の道明寺レポート見る限り、えぐいのは野槌とかいう連中じゃないっけ…まあいいか。それより道明寺の絵がおっさん過ぎる気が…(1の時校長から「若い刑事が~」って言われているのに)。でも喋りは違和感なかった。

役不足の誤用確認。高校生+アホの子ってことでそう言わせたのだろうか?でもサウンドノベルでこういう誤用はやらないで欲しい。

・「紅女」
話の出来や実際の真相、真エンドで見られる後日談含め、一番の完成度を誇ると思う。
都市伝説の広まり(現在進行形)が体感できるのは面白い。
ただ、相当の作業を繰返してレベル上げないと真エンドへ辿り着けないのはどうかと。バッドエンド含めエンディングのの数は少ないけど面白いのがあった。悪ノリはいいものだ。

兄さんの登場がアパシーサイドとはなんという罠…。
それにしても、兄さんは既に教育関係者に見えない件。見かけからしてもう一般人じゃない。あれはネクタイなのか?もはや布を首に巻いてるだけのような…シャツもすごいことになってる。それなのに対応が大人で常識的、かつ口調が非常に丁寧だから困る(笑)
流行り神メンバーのキャラクター描写では、一番違和感なかった、というか自然だったのが兄さん。表情パターンもいかにも「らしい」。
でもせっかく兄さんが出たんだし、科学的視点から分析とか歴史とか民俗学的な視点からの話とかもっと色々聞きたかったなあ。

風海が事件の裏で動いてたのを色々想像すると面白いシナリオ。序盤に前振りがあったけどネタだけだと思って気にしてなかった。これは一本取られた。

ある選択肢で出る会話で「夏に常世島に行った」って話が出るので、流行り神時系列ではこれは2後で3前の冬の話のよう。
それにしても「鋭い目付きが余計に鋭く」ってどんだけ鋭くなるんだ兄さん…周囲マジ哀れ。

流行り神サイド

全体として流行り神っぽくない印象。オカルトルートと科学ルートに分岐しないのが原因か。マルチシナリオではあるが、流行り神というより、学怖という感じ。正確には、これはあくまで学怖のところが作った同人ソフトなんだと思い知らされた。まあ当たり前なんだけども。要するにキャラ描写に不満が大爆発。

流行り神の音楽を使ってるのは嬉しい。
セルフクエスチョンも再現されているけど、簡素でルート分岐かバッド直行くらいにしか使われていないのがもったいない。


・「ひきこさん」
ひきこさんの都市伝説やそれに関連する事件はとても良かった。それだけに真相がどれもひきこさんとまったく関係なくて残念。オカルトルートとしてどれかに本当にひきこさんが出てくればなおよかった。

シナリオは大きく3つに分岐、真相も変わってくる。特にある医者の出てくる真相ルートは科学ルートという感じで好印象。しかしあるバッドEDにサンブラ茶が使われているけど、なんにも知らない流行り神ファンがやったらオチの意味が分からないのはどうかと思う(お茶でなんでバッドになったのか把握出来ない気が)。
冒頭部分の都市伝説や事件発生までの話の流れ、分岐の多さなどもしかしたら楽しいかもしれない。しかしそれ以上にキャラクター描写について不満が残るシナリオだった。

かごめさんがかごめさんじゃなかった。これドッペルゲンガーじゃね?
かごめさんは人間の眼球見たくらいで「ひぃぃぃ」なんて言わない。実際、2の「予知夢」でも人間の眼球を見て怖がる小暮を笑っていたし、3の「高額アルバイト」の残骸を前にしても唯一取り乱さなかったのに。
それにあれだ。全体的に優しすぎる。かごめさんはもっとツンドラであるべき!!!
かごめさんはもっとウィットに富んだ絶対零度の貶め方をしてくるであります。優しすぎて別人であります。
それと笑いネタとしてしつこく繰り返される「かごめさんをおばさん扱い」がどうなの?って思う。しつこすぎて不愉快。
かごめさんまだ24じゃないか。そりゃ高校生からすれば歳行ってるけど、そんな事言ってたら人見さんはさんじゅ・・・おっと誰か来たようだ。

ゆうかが別人過ぎる…。脳内で絵とか台詞を自動変換するしかないレベル。今回一番キャラ破壊がひどいのではないだろうか。
まず人物画が別人。ツインテールで赤く可愛いデジカメ。いかにも「女の子」な顔立ちでお目目もぱっちり。
ショートカットにパンツルック、フィールドワークに最適で実用的ないでたちで、顔立ちもわりかし凛々しい系、ごついカメラなのがゆうかさんだ。お前誰だ。
フィールドワークとか言って豪雨の中軽装で島中駆け回る様な女なのに。この絵のゆうかはそんな根性絶対ない。雨だからやだーとか言いそう。
それに話し方がゆったりというか幼すぎるというか女の子というか。頭のネジが緩そうに見える。誰だこれ。
ゆうかってテンション高くてあちこち動き回る利発な小娘(トラブルメーカーと読む)って感じなんだけど。これ単に迷惑な女じゃん。
よかったのはゆうかと風海がいい感じぽいところくらいか。ああ、好きなキャラだけに悲しい。

それとゆうかが兄さんのことを言う時に「文献ぼーっと読んでたからきっと暇だよ」的な事を言うんだけど、2のゆうか編で本人が「いつも資料とにらめっこでぼんやりしてる姿なんて見たことない」って言ってたような…どういうことなの…。

・「渋谷で配られる無料の飴」
先輩大好き暴走エンドはさすが流行り神メインヒロイン!だと思った。
こんな調子でバッドエンドでも面白いのが多く、バッドそのものも多くて楽しめる。バッドでもバットじゃないのあったし(笑)悪ノリは大好き。

ちょっと面白かったのが、バッドエンドで小暮さんを送り出すかごめと風海の二人の反応。
かごめはともかくとして、風海が冷たすぎないか。もはやギャグにしか思えないあっさり感だったんだけど…ギャグなんだよね?
風海なら引き止めてくれると思うんだけど。僕にできるだけのことはしてみますから、とかなんとか。
小暮を諌めるというか説得する時も、小暮さんには失望した的な言い方で突き放しすぎ。風海はもっと情が深いというか優しい感じなのになあ。
それにしても風海…優柔不断でその上時々一人でブツブツつぶやいてる(セルフクエスチョン)んだ…流行り神でも言われてたけれど(笑)色んな意味でかわいそうな奴。

編纂室二人がこの時点で綾に面識が出来てしまうのも流行り神原作と違う。まあ、アパシーシリーズだしいいのか。

隠しシナリオ

・「ひとりかくれんぼ」
パッケージになってる癖に…隠しシナリオなのに…話の構成として一番ひどい、か?
ボリュームも無いし、ただ単にかくれんぼしました、おわり。という話。
「ひとりかくれんぼ」ネタについてはトワイライトシンドロームのほうがおもしろい。

風海が変。
興味本位でひとりかくれんぼやり出すところで違和感感じた。今まで怪異に関わり、散々な目に遭っておきながらあれはない…。
しかも兄さんに「呪いだから気をつけろ」とまで言われてるのに、実行に移す軽率君なんて風海じゃない。
もう少しきちんとした動機があったなら良かった(例えば「儀式を終わらせるために最初からやってみる」とか)。
それと、人見さんに大胆な発言やらかす場所があるんだけど、そんな度胸はない。せいぜい心のなかでこっそり思うくらいだろう(笑)

かごめは兄さんを霧崎先生って呼ぶのに、霧崎さんって呼んでるのはどうしたこと?
風海の「人見さん」という呼び方が、このシナリオ中でも式部さんだったり人見さんだったり…せめてシナリオ中くらい統一してくれ。
このシナリオの楽しむべき点は兄弟のブラコンぶりです!!ということでいいのだろうか?その点では相変わらずブラコン同士だなこいつら!と楽しめた。


以上、感想でした。
ホント頼むよ次回作!期待して正座して待ってる。
最終更新:2010年05月29日 01:53