流行り神2 PORTABLE 警視庁怪異事件ファイル
【はやりがみ に ぽーだぶる けいしちょうかいいじけんふぁいる】
ジャンル |
ホラーアドベンチャー |
機種 |
プレイステーションポーダブル |
発売元 |
日本一ソフトウェア |
発売日 |
2008/08/07 |
メディア |
UMD&DL |
プレイ状況 |
既読率100%・データベース100% |
総合評価 |
S
|
怪異事件解明のロジックは…科学か?オカルトか?
主人公「風海純也」他、警察史編纂室などのメンバーに加え、科学を盲信する毒舌プロファイラーの「賀茂泉かごめ」を新たなメンバーとして迎えた新作。
今作も都市伝説絡みの怪奇事件を追う。
- 序章
- ガラスに囲まれ、向こう側にいる人物たちに「報告」をする男。それは風海の関わった事件についてであった。
- 第零話「黒闇天」
- 風海は初恋の相手と警視庁で偶然再会する。彼女は最近夫が自殺し、遺品を引き取りに来たところだという。
- 第一話「予知夢」
- ストーカー被害に悩まされているという女性が編纂室を訪れる。数々のストーカー行為に加え、彼女は恐ろしい夢を見るのだという。
- 第二話「心霊写真」
- 「劇団千年紀」で女優が殺された。事件の証拠品として心霊写真が提出された為、編集室が動くことに。
- 最終話「流行り神」
- 欠員の出た霧崎のゼミ旅行にとゆうかに誘われた風海と小暮、そしてかごめ。行き先は常世島という辺鄙な離島だった。
- かごめ編「座敷わらし」
- 故郷へと足を運ぶかごめ。今はなき実家を前に、彼女は忘れていた少女時代の思い出を思い出す。
- 小暮編「エレベーター幽霊」
- かつて乾署にいた頃の話。警視庁のエレベーターには幽霊が出るともっぱらの噂。そんな中、夜中に報告に行く羽目になるが。
- ゆうか編「作られた都市伝説」
- 留年確定の宣告を受けるゆうか。霧崎を唸らせるレポートを提出すれば留年を免れるというがレポートは難航。友人に相談することに。
- 人見編「よみがえり」
- 最終話「流行り神」の裏で人見はどう動いていたのか?選択肢の存在しない読むだけのシナリオ。
概要
2007年にPS2で発売された作品の移植作。
描き下ろしイベントCGが大幅に追加、隠しルートに「人見編」が追加。
PS2版プレイ済みユーザーの為に、「人見編」が最初から読めるコマンドも発表されている配慮ぶり。
さらに、霜月はるかの歌う新エンディングテーマも収録。サウンドテスト「物音保管室」も追加。
システム
既読スキップに加え、「次の選択肢まで飛ばす」スキップ機能、分岐が一目でわかるフローチャート機能が追加。
更にアナログステックに好きな機能(セーブロードやスキップなど)を割り振ることができるようになった。
「セルフ・クエスチョン」
自問自答。ゲーム中要所要所で何度か出現。シナリオ増量に伴いセルフ・クエスチョンも増えた。
ここでの推理がEDランクやシナリオの「科学」「オカルト」捜査方針決定に影響する。
超展開推理も可能だが、間違えた選択肢を選ぶとランク(評価)が下がってしまう上に、導き出した結論によっては主人公が迷走して速攻ゲームオーバーになることも。
またあまりにアレな推理ばかりしていると、最後に必要なキーワードが入手出来ておらず推理ロジックでバッドED突入ということもありうる。
不正解の選択肢を選んだ場合、文章や画面の脳波計がブレ(赤くなる)る。
「カリッジ・ポイント」
シナリオごとに定数があり、行動を決断する際に表示される。要するに勇気。
勇気を必要とするような言動を選択するとポイントを1つ消費する。今作は消費音が変わった。
ポイントを使い切ってしまうと、それから後はポイントを消費する選択肢を選べなくなってしまう。
使いきっても進行不可能にはならないが、後に重要な選択肢を選べなくなりベストエンディングを逃す可能性が出てくる為、使いどころを考えねばならない。
「推理ロジック」
解決直前に自分で作る人物相関図を作るシステム。ゲーム中で得たキーワードを当てはめていく。一つの空欄に対して複数のキーワードが表示される為、真相を把握していないと完成出来ない。
完成度で可か否かの判定が下り、否ならバッドエンドへ、可で真エンドへ分岐する。
当てずっぽうでは三角の判定かバツの判定を食らい、ランクが下がるか、バッド直行になる。また、セルフ・クエスチョンでミスりすぎていると必要なキーワードが無いことも。
今作はシナリオボリュームアップに伴い、関係図そのものが複雑化した。
「データベース」
ゲーム中に話題にのぼる都市伝説やオカルト用語を解説してくれる書庫。200項目。
なかなかの情報量でこれを収集するのもゲームの楽しみ。収集度が隠しシナリオ出現条件にも関連している。
問題点
実は不満点があまりない。
- フローチャート実装は嬉しいが、任意の分岐点に遡れればさらに便利である。
- シナリオボリュームアップに伴ない、フローチャートを全部埋めても既読度99%で行き詰まる呪いが…。
- それによって「物音保管室」の曲視聴条件「ランクS」「既読率100%」などが達成できず全曲試聴が困難に。
- 隠しシナリオの「終章」の出現難易度が高すぎる
くらいか。
シナリオ面で不満点を挙げるならば、新キャラクターのかごめが非常にオカルトに厳しい毒舌キャラなので、オカルトな選択肢やオカルトルートを選ぶ時などボロクソに罵られるのがちょっと気分悪いかもしれない。
厳しいことを言うと、かごめの存在によって編纂室チーム全体が科学寄りというか常識側に引き戻されているので、前作のように「この事件はこっくりさんの仕業です」とか好き勝手できないのは不満を感じた。
良い点
シナリオ冒頭と終りに挿入される「引き」の物語は、相変わらず先が気になる展開。
前回のパターンから行くと、最後の方でどういうことだか明かされるのはわかってるから余計に先が気になる。
今作はより「科学」「オカルト」の違いを出すことに成功していたと思う。
もちろん「都市伝説」を扱うシリーズなので、全て完全に「科学で説明できる」というわけではない。
推理の結果によって、オカルト現象にどうアプローチするがが変わる(現実を「これはオカルト現象だ!」と認めるか、認めずに科学で解明しようとするか)のだが、1はどちらを通っても基本オカルト一色で、ストーリーやわかる事実が変わる程度だった。今作は科学ルートでのアプローチがより科学寄りになり、差別化に成功していた。科学ルートを通ると割と常識的な事件顛末になるし…まあ基本はオカルトなんだけどね!
人間描写も愛憎たっぷりでいい。一話ごとのボリュームも数倍に増えて大満足。伏線も幾つか消化され、登場人物の過去や謎が明らかにされていて少しすっきりした。しかし同じくらい新たな謎が発生。先が気になる。
今作はカリッジポイントもシステムの力をより引き出せていたと思う。
シナリオが長くなった分、決断する機会が多くなったので悩む悩む。使いどころに悩まされるったらありゃあしない。前半で使いきって、最後の方にいかにも重要そうな選択肢が出てきた時の気持ちといったら(笑)
プレイヤーも風海と一緒に「これを言っていいものか」「こうしていいのか?」と悩むので、風海に同情というか感情移入できる。オカルト肯定を選択するのにあたってはプレイヤーもカリッジポイントを消費するからである…かごめこわいよ!!
キャラがいい。
ただ、どうも一話と二話のゲストは前作と比較すると印象が薄いかもしれない。原因は主に編纂室新メンバーのかごめに集約されるかと。彼女が強烈すぎる。
人見が「科学派」でトラウマもあってオカルトを「否定したい」というスタンスなら、かごめは「科学盲信」でオカルトは世迷い言と断罪してくるレベル。かごめの前ではフィクションとか都市伝説の話をすることすら許されない。
またおそろしく傍若無人なので、元々草食系(という単語がぴったり来る)の主人公は押されまくる、というかばっちり下僕と化してしまっている。胃が心配になるレベル。
しかし話数を進めて行くうちに、不思議にいい感じになってくる。三人一組がデフォルトになってくるというか。前作の主人公と小暮さんがベストコンビ過ぎてうまく馴染むか心配だったが、女王+振り回される二人、のでこぼこトリオという感じであっさり馴染んでいた。
で、このかごめ、イラッとするだけかというとそんな事はない。彼女は口だけでなく非常に有能だし、話を進めて行く内に可愛くなるというか思い入れが出てくる。ツンが9割くらいだけど可愛いところもある。と、いうか隠しのかごめ編をやればみんな一気に好きになると思う…あれは反則。
前作の音楽に加え、新規曲がやや追加された。1の曲はタイトル一文字、2の曲はタイトル二文字。物音保管室でこれらを聞くことができる。2以降はサントラが出ていないので嬉しい限り。
ちなみに既読度100%で聞ける音楽は前作のある曲。既読度100%は鬼だがそれだけの甲斐はあった。
フローチャートが追加されたのは本当に助かった。やや大雑把だが、セルフクエスチョンの結論が何種類あるのか、今どこを読んでいるのか、エンドはどれくらいあるのか、などが把握できるだけでもありがたい。
総評
自信を持って人に勧められる良作。システム面の改良されており、不満点がほとんどない。下手な新システムなどを導入せず、前作の良さを殺さずにいいところを伸ばした印象。
一応前作やってなくてもプレイ自体は大丈夫。組織とかそういう伏線関係は前作やってないとわからないからもったいないが。
一本一本のシナリオの持つ吸引力と言うかインパクト自体は(隠しシナリオ除いて)1の方が上かもしれない。その代わり物語が緻密、かつ長く楽しめるようになっている(ボリュームからして数倍の長さ)。
推理ロジックも比較にならないほど複雑になっており、セルフクエスチョンも相当回数繰り返され、推理モノとしての側面が強化されている。なんにも考えずに適当に選択肢選んで進めていると、何も分からないまま推理ロジック確定まで来て\(^o^)/になったりするレベルである。
1の時の推理ロジックは本当に関係整理ってレベルだっただけに、このシリーズの特徴的システムを生かして魅力的な2を作ってくれたことは賞賛したい。
DSでシナリオの隙間を埋める「隙間録」収録の移植版が発売されているが、画質音質はPSPの方が良い。
第零話全部が体験版としてプレイステーションストアで配信中。データも製品版に引き継げる。DL版も販売中。
ところでタイトル読みは「に」でいいのかな。「つー」かな…。
最終更新:2010年05月29日 01:52