クロックタワーゴーストヘッド
【くろっくたわー ごーすとへっど】
ジャンル |
アドベンチャー |
機種 |
プレイステーション |
発売元 |
ヒューマン |
発売日 |
1998/03/17 |
メディア |
CD-ROM1枚 |
プレイ状況 |
全エンディング制覇(13種) |
総合評価 |
A
|
二つの心を使い分け、生き延びろ。
東京の高校に通う17歳の女子高生、御堂島優(みどうしまゆう)。
彼女はある事件がきっかけで転校を余儀なくされ、都心から離れた町に住む父の友人、鷹野宅に向かっていた。自分の中のもうひとりの人格「翔(しょう)」とともに。
優が鷹野邸に着いた時、あきらかに様子がおかしいことに気が付いた。家族が外出した様子もないのに、人の気配がしない。恐る恐る上がりこんだ家の中で、優は見た。人間の死体 … いや、正確には、かつて人間の身体であったものの一部を!「これ」は本当に人間なのか?鷹野家の人間は無事なのか?この家で一体何が起こったのか?
1999年、春。唐突にして大胆で類希なるその事件は、もう始まっていた…
概要
クロックタワーシリーズの第3作目だが、この作品は外伝扱いなのでナンバーは入っていない。舞台を外国から日本の住宅街に移した意欲作。
システム
横スクロールで、操作は基本的にカーソルクリックのみ。
敵に襲われつついろんな所をうろうろし、調べてアイテムなどを手に入れ、自分の置かれている状況から脱出を図るアドベンチャーゲーム。
「敵を倒すのではなく逃げること」に主眼が置かれており、基本的に追跡者は倒すことが出来ず、逃げることしかできない。
「RSIシステム」
「連打せずにはいられない」システム(本当にそういう名前)。主人公が危険な状況の時、×ボタンを連打すれば、取っ組み合いになった末に一時的に回避できるが、代わりに体力が一段階落ちる。体力最低の時にもみ合いになると強制的に死ぬ。
「カーソルクリックシステム」
マウス操作のように矢印を操作し、人物や場所をクリックし移動し(移動操作も行きたい方向をクリック)てゲームを進めていくシステム。このゲームの根幹。
「二重人格」
主人公「優」は二重人格者である。彼女のお守り「ミコシサマ」が人格交代の鍵となっており、これを手放している時に「優」が精神不安定、または危機に晒されると「翔」が出現する。「翔」は「ミコシサマ」所持時は出現することができない。この点や二人の特性を利用して切り替えてゲームを進めていく必要がある。(ただし同じ身体なので二人の間には性能差らしきパラメーターはなく、体力や耐久力なども同じ。)
「撃退」
クロックタワーシリーズは「追われる恐怖」が売りなので、基本的には倒すことができず、一時しのぎの「撃退」しかできない。
「優」の場合、物陰などに隠れたり、モップとか消火器とか手近にあるもので撃退する。
「翔」の場合は銃などの武器を使って敵を撃退する。(銃器使用はクロックタワー初)
評価点
エンディング数もイベントも豊富。イベントがフルボイスなのも嬉しいところ。2は英語でちんぷんかんぷんだったが(自分だけだろうが)今回は日本語。衣装チェンジの秘密のコマンド、翔専用隠し最強武器コマンド、サウンドテストコマンド、クリア後にプレイ可能な翔のシューティングゲーム(スコアを競うものとタイムアタックの二種類)などお遊び面も嬉しい。
アクションの主人公が二重人格設定で、操作性に差が出るのは独創的。特に人格により「撃退」法に違いが出るのが面白い。銃攻撃は問題視されがちだが、実際は騒ぐほどのものでもない。
優の「撃退ポイント」を使った撃退が「いつでもどこでも可能」ようになっただけなので、やはり一時しのぎに過ぎない。よって、優が倒せるような雑魚は翔でも倒せるし、優が一時しのぎしかできないボスは翔でも倒すことができない。
それに、実は翔は戦闘において優よりも不利なのだ。
優はいくつかの罠を除いてほとんど問答無用で撃退成功できる上に、無限使用可能ポイントも多い。
が、翔は「隠れることや器物での撃退が不可能、つまり銃がないと打つ手なし」「弾切れを起こすと打つ手なし」「もっと有効な武器があっても持ち替えてくれない」「終盤は敵が強く弱点を狙う必要があったり、複数の銃撃を加えないと撃退不可」「そもそも操作性の問題で銃使いにくい」「バッドエンディング乱立」など恐ろしく弱点が多く使い勝手が悪い。
翔を常用する利点は、「翔かっこいい!」とか「銃ってなんとなく頼もしいような気がするよね!」とか「もっと難易度上げたい」とかくらいしかない。
「追われる恐怖」が売りのシリーズだけに、このへんはうまくバランスが取れている。
敵も「シザーマン」に負けず劣らずインパクト大。「キャハハ」とけたたましく笑いながら包丁で襲いかかる幼女や、大鉈を引き摺る般若の面を付けた白衣の男など。
彼らが接近してくると遠くからリアル音響で「キャハハ」、またはカラカラ…と鉈を引きずる音が聞こてくる。音による恐怖ってスゴイ。
しかも普段は無音なのに自分がいる部屋に侵入してくると専用BGMが流れ、その間セーブ不可となる仕様だから余計に怖い。
クロックタワー1&2は純粋にホラーゲーだったが、ゴーストヘッドに限っては「キャラ要素」もある。とにかくキャラクターが強烈。主人公だけでも充分に濃いのに、敵キャラのみならず登場人物が全員ネタ。
主人公からしてこんな感じ。
●「優」/メイン人格。気弱な女子高生である彼女が、一生懸命に脱出しようとする健気さは見ていてハラハラ。声優の荒木香恵の熱演もあって、なんとしても生き残らせてあげたいとプレイヤーは保護欲を掻き立てられる。しかし「か弱い女子高生」が消化器やデッキブラシをゾンビ相手に振り回す光景は相当シュールで笑えるポイントである。ジェニファーは「隠れる」の方が多いくらいだったのに、彼女に限っては「攻撃」機会のが多い。ぜひご覧頂きたい。
●「翔」/裏人格。男。一人称俺様。厨二病も極めればかっこいいという良い見本である。優がわからない理系関係や機器操作などは彼におまかせ。実に頼もしい。頭が良すぎてプレイヤーが時々放置プレイなのはご愛嬌(そうかわかったぜ!←しかしプレイヤーはわかってない)。冷酷と言う設定も非日常に置いては非常に心強く、時折見せる優しさとのギャップにやられた女性プレイヤーは多いと思われる。「彼」が一時撃退時に放つ股間にヤクザキックは(心理的に)とても頼もしい。
その他、どうみても不審な動きのおじさんやら、ぶつぶつうるさいおばさまやら、カッコつけな刑事やら、ケタケタ笑って包丁振りかざす幼女やら、ナタを引き摺る般若の仮面の男やらと、敵キャラ含め全員キャラが立ちまくっている。だからかもしれないが、とにかくこのゲームは印象が強烈だ。
追われるだけでなく、一応申し訳程度のストーリーも存在する。
前作までとは違い、日本が舞台だから感情移入はしやすいか。
問題点
ポリゴンがカクカクしているが、発売時期から考えると仕方がないか。
歴代クロックタワーと方式は変わらないが、今作では男の人格の「翔」時は銃器による攻撃が可能で、「それが追い詰められる恐怖」を若干弱めてしまっている(特に小さい子供のいる一般家庭に銃がごろごろあるのは問題…いや突っ込むところはそこじゃないか)。
二重人格切り替えがやや煩雑。優から翔に変化する為には、お守りをどこかに置いた上で敵に襲われ取っ組み合いにならなければいけない。手間がかかりめんどくさいだけでなく、取っ組み合いによって体力が減少してしまうのもが問題。その上、人格を切り替えたいときに限って敵が出てこず(殲滅済みとか)手持ち無沙汰になることも。ただし一定時間で敵が出現するのであまり待ちぼうけることも無いが。
人格交代しようとしてよく陥るパターンで、
敵出現→取っ組み合いで勝つ→自動で今いる部屋を出る→部屋の外で敵を倒す(しかし完全に倒しきれてない)→自動でさっきの部屋に戻る→倒しきれてないからまた敵出現
のループになるのも嫌過ぎる。
さらに「ミコシサマ」を置ける場所が「カーソルクリックシステム」上、限られてしまっている上に、どこに置いているか確認できるシステムがない。ポーズメニューとかでマップに表示とかされればいいのだが、されない。と、いうかそもそもマップが存在しない。どこに置いたかはプレイヤーが覚えていなければならないのである。そう、どの引き出しだったとかロッカーだったかとかまで記憶しておかなければならないのだ。
ゲーム難易度が高く行き詰まりやすい。また、バグなのか、ある一定の条件で(ごくまれに)詰んでしまうことも。
その上、最初のステージである行動を起こしフラグを立てていないと、最終ステージで強制バッドエンドなのはどうかと。時間泥棒過ぎるだろう…常識的に考えて。ゲーム中にこのバッドに関するヒントを入手できるが、バッドルートに入ってバッド確定しバッド直前にならないとヒントを拾えない。しかも「●●しないとこうなります。わかりましたか?」というヒントを…ありがたすぎて泣けるわ!
ゾンビがややしつこい。ネタバレになるがキャプチャー2ラストで急に別ゲームになるのはどうかと思う。しかも急に操作キャラが主人公ではなくなる。不死身ボス以外にザコ敵が必要なのはわかるが、最終面では別のザコ敵のほうが良かったのではないだろうか。または、2のように雑魚なしでボスの出現頻度を高めるとかで対応して欲しかった。
やや問題あり。かなりの数の設定や伏線が未消化なまま終わる。主人公「優」には数々の謎が降りかかるが、基本迷宮入り上等でストーリーは進んで行っちゃうのである。あれっ、あいつどうなった?って感じで…。
全部エンディングを揃えると設定資料が見られるがそれでもやや分からない部分が多い。公式ガイド(攻略本)にならいくつか説が掲載されているのだが、結局のところ「プレイヤーの解釈でよろしく」という部分が大きい。
それと多分シリーズで一番グロい。カクカクポリゴンだから気にならないけれど、今の技術でリメイクされたら間違いなくZ指定。人によってはキツイかも知れない。
総評
クロックタワーのナンバリング作品でないだけにいまいち知名度が低く、かつ銃攻撃可能という点がマイナス評価されることもある不遇のゲーム。
キャラの強烈さにサウンドの良さ、謎めいたシナリオ(謎だらけのままだがこれはクロックタワー伝統)とツボは全て抑えている。やや昔のゲームなのでバリバリのポリゴンと、グラフィック面では現在のゲームに大きく見劣りするが時代を考えれば仕方がない。
総合評価はA。
全エンディングをコンプリート×3回やった側からすれば、是非Sを付けたい。しかし、「最終ステージで強制バッドエンド」フラグが分かりづらい上に意地悪であること、ごくまれに第二章Cエンディング付近でで詰む(バグか?)ことなどで減点、Aとした。
ヒューマンから発売された最後の「純正クロックタワー」でもあるので、シリーズ好きな方は偏見を捨てて是非プレイを!
そしてできればリメイクかアーカイブ配信を…。
情報
ドラマCD『クロックタワー ゴーストヘッド』が発売されている。
ただしキャラの声がゲームの声優さんとは若干違う。内容は大筋でゲームと同じ。
攻略本は二冊発売されている。ガイドブックは裏設定的なことが載っており、もう片方は漫画がついている。ただし漫画がついてる方は攻略情報に間違いが多いので注意。
最終更新:2012年02月26日 19:55