TERRORS
【てらーず】
ジャンル |
ノベルシアター |
発売元 |
バンダイ |
発売日 |
1999/8/5 |
メディア |
ロムカセット1枚 |
プレイ状況 |
ほぼ全エンディングクリア済…のはず…。 |
総合評価 |
S
|
すぐそこにある恐怖。
要するにサウンドノベル。ワンダースワンの縦持ち機能を生かした縦書きのもの。画面を上下に分割し、上にグラフィック、下に文章が表示される。全画面演出もあり。
5本+隠し。気軽に楽しめるショートストーリーとなっている。
- 怨霊旅館
- これといった目的もなく旅に出た主人公はある少女と出会う。そして旅館へと向かうのだが…。
- 愛しき友
- いとこの家に居候中の主人公。女二人の暮らしは快適だった。隣人が爆音でステレオを鳴らすこと以外は。
- 小さなお化け屋敷
- おなじ高校の仲良し三人娘は、肝試しとして遊園地のお化け屋敷に足を踏み入れた。何も知らないまま。
- きしむ音
- 山奥に帰郷する大学生の主人公。彼女を連れて、人形師である祖父の見舞いに行くのだが…。
- マザーテーブル
- 愛する彼氏を持つ天涯孤独の主人公。しかし、彼女には自らも知らない秘密があった。
- 隠しシナリオ 最終章
- 山で道に迷った「私」は館を見つけた。「私」は館に入ることにした。
システム
プレイヤーはWSとあって文字の読みづらさを危惧するだろうが、黒背景に標準サイズの白文字と(くっきりとはいかないが)意外にも読みやすい。WS本体に濃度調節機能もあり万全である。読み返し機能、中断セーブ、文字速度調節機能、音声オンオフ機能あり。
スタート画面をスタートを押すと、「どの記憶を呼び覚ましますか」と三冊の本が表示される。この本にそれぞれ5つのシナリオが書かれている、という演出(要するに3箇所それぞれにセーブできる)である。
一冊が5つのシナリオから構成されていて、すべてクリアすると隠しシナリオが現れる仕組み。最終章はその一冊における各シナリオのエンディングの良し悪しによって展開が変わり、また、迎えられるエンディングもそれによって左右される。
「テラーポイント」
主人公が「恐怖を感じる」選択肢を選ぶと加算されていくポイントであり、ポイントが加算される選択肢を選ぶと画面に波として表示される(実は波が表示されないテラーポイントも存在)。このポイントの存在がゲームの難易度を上げ、また繰り返しプレーする意欲を向上させるキモであるといえる。
テラーポイントはシナリオの全てに影響する。エンディングランクやエンディングランク分岐に関わるだけでなく、シナリオ分岐、選択肢も消えたり変化したりする。
このポイントが上限値を超えると、主人公が勇気のいる行動(要するにグッドへの道)を取れなくなったり、バッド直行になる。その一方で低すぎるとこれまたバッド展開に(虎穴に入らずんば虎子を得ずってことか)。
さらに厄介なのが、シナリオによっては「同行者に気を使う必要がある」ということである。同行者に嫌な目にばかりさせているとろくなことにはならないし、真実には近づけない。かと言って自分ばかりが進んで怖い目にあっていると、同行者は危機感がないまま迂闊な行動を取り悲惨な展開を迎えてしまう。このバランスが絶妙である。
玲ちゃんポイント
「怨霊旅館」のみ、「玲ちゃんポイント」という隠しパラメータが存在する。 玲子から主人公への好意がパラメータとしてシナリオ展開に関係してくる。当然グッドエンディングを目指すならば好感度を上げる必要がある。
評価する点
マルチエンディングシナリオで、エンディングが非常に多彩。分岐も変化に富み、エンディング数も多く長く楽しめる。
データセーブが三箇所で(三冊それぞれ)管理されているのでなかなか便利。またデータの管理も「続きから読む(中断データがある場合)」「このシナリオを最初から読みなおす(選択中のシナリオのプレイデータ初期化)」「この本を最初から読み直す(選択中の本全部のプレイデータ初期化)」と快適。テラーポイントが初回と二回目では変動するので、個別にプレイデータが初期化できるのはありがたい。
一本あたりのシナリオは短くサクっと終わる。そのためスキップ機能が付いていなくてもそれほど苦痛は感じない。「しおり」をはさんで中断セーブできるし、いざという時は電源を切っても中断したところから始められる(ただし説明書に書かれていないので推奨しない)。
当時では斬新であった「携帯ゲーム機でのボイス入り」はスゴイ!WSなので音はガビガビだが、低スペックゆえのノイズと音割れが逆に怖い!!という効果を生んでいる。「きゃぁぁっ」なんて「ギヤアアアアヅ!」(本当にこんな感じ)。こわすぎ。結果オーライ。
グッドエンドで聞くことが出来る主題歌「追伸」(玲ちゃん役の大森玲子による)は音割れのため何を言っているのか全くの不明…だが、それが逆にいい味を出している。クリアな音質で聞いてみても御世辞にも上手いとは言えない歌だが、曲のメロディラインがきれいでこのゲームの雰囲気にマッチしている。メロディーだけ聞いているととてもありふれたラブソングという感じはしない。耳に残るなんとも不可思議な名曲。ぜひ聞いて欲しい。
BGMが良い。数種類しか無いのに、あらゆる場面でそれにふさわしい曲として流れている。印象的な曲ばかりで、中でも焦燥感溢れる恐怖曲なんかはトラウマもの。これがバッドエンディングの画面で流れた日には…。一方、不可思議ゆえの不気味さも忘れない。そして時には残酷に、感傷的に。効果音は恐怖演出も生々しく適切な箇所で。
文章力が総じて高く、シナリオ一つ一つが不可思議な小説として完成している。どちらかというと、「怪談を聞いている」というより「奇妙な物語を読んでいる」といった印象。
どこか幻想的で、現実と異界との境目がわからなくなるような、ふわふわ足元がおぼつかないような。読み終わった後、考えさせられるような深刻な内容ではないのに、ポーッとしてしまうことはないだろうか?このゲームはそんな作品である。ある意味究極の雰囲気ゲーと言えるかも知れない。
グラフィック演出面では、白黒ドットイラストの恐怖ここに極まる。たぶんこれが美麗リアルCGやイラストじゃつまんないのだろう(それはこれの2で立証された)。また一枚絵と思いきやビジュアルが不意打ちのようにアニメーションするので心臓に悪い。
問題点
既読スキップがない。片手プレイ不可。「次の選択まで飛ばす」なし。まあワンダースワンにそこまで求めないであげてーという気がしなくもない。
中断データ(しおりをはさむ)は現在進行中の1シナリオしかできない。
白黒WSの宿命だが、データーが全部ぶっとぶことがある(このソフトは発生率低いが皆無ではない)。
攻略しづらい。テラーポイントについてだが、その本(データ)においての二度目以降のプレイでは、一度見た選択肢で加算されるテラーポイントが減る。つまりシナリオを再読すると、テラーポイントの計算がややこしくなるということである。ポイントが全てを握るこのゲームでこれはやや不親切な要素。
確かに「一回通ったところは怖さ半減」というプレイヤーの心情は再現できているが、それにしてもやりづらい。まあ、プレイ記録を消す機能は付いているのでそこまでの不満ではないが。
アイドルを声優に起用しているため、当然の結果棒演技。また、ここぞというところでしかボイスは入らないのも難。分岐が多くなるシナリオ後半にはほぼ皆無で、音声が前半に集中しているのも…。
総評
評価、S。
個人的に「プレイしてみてツラいな」と思えるところが画面の明るさ位である。それも明るいところでやれば全く問題ない。
なにより全体の雰囲気が素晴らしい一本。それがこのゲームの全てと言っても過言ではない。オチなしかもしれない。何にも解明されにかも知れない。しかし、そんなことは問題ではない。それはこのゲームの難点とは成り得ない。
読み終わった後、考えさせられるような深刻な内容ではないのに、ポーッとしてしまうことはないだろうか?このゲームはそんな作品である。ある意味究極の雰囲気ゲーと言えるかも知れない。
ただ白黒WSソフトゆえ、今現在プレイしようとするとなかなか入手するのが大変かもしれない(主に「可動するワンダースワン」を手に入れることが)。このソフト自体は数万本売れているので、WSソフトとしてはよく見かける方(イヤホンアダプタ同梱でなければ中古価格も捨て値だし)なので、サウンドノベル好きなら是非一度はプレイしてほしい。
最終更新:2011年11月18日 23:50