流行り神3 PORTABLE 警視庁怪異事件ファイル

【はやりがみ さん ぽーだぶる けいしちょうかいいじけんふぁいる】
ジャンル ホラーアドベンチャー
機種 プレイステーションポーダブル
発売元 日本一ソフトウェア
発売日 2009/08/06
メディア UMD&DL
プレイ状況 既読率100%・データベース100%
総合評価 C

誰が最初に間違ったのか? 誰が正しく、誰が悪いのか?

お馴染みの警察史編纂室などのメンバーで臨む、シリーズ「完結編」。

  • 序章
    • 倒れる風海。一体彼に何が起こったのか。
  • 第零話「客の消えるブティック」
    • 女子中学生の行方不明事件の捜査依頼を進めていくうちに、中学生には手を出せないような高級ブティックに辿りつく。
  • 第一話「高額アルバイト」
    • 悩む小暮。風海が悩みでもあるのかと聞くと『妹が怪しげなバイトをしている』と打ち明けられる。高額な報酬の治験アルバイトに参加しているというのだ。
  • 第二話「赤いちゃんちゃんこ」
    • 進学校として有名なある小学校のトイレで、大量の血痕が見つかったという。
  • 第三話「下水道のペット」
    • 風海と小暮はとある団地で噂されている『地下下水道に住むペット』について調査することになった。
  • 最終話「コインロッカーベイビー」
    • ある日登庁すると、あるべきはずの編纂室が「無かった」。場所として存在していないのだ。みななにもわからぬまま、離れた部署に異動となったが。

  • 蘭子編「死のネックレス」
    • いつもふざけた態度の蘭子。しかし、実は彼女にはある念願があった。
  • D.K.編「死なない死刑囚」
    • 彼はかつて守れなかった大切なものを、今度は失わないために、走る。
  • 薫編「トイレの花子さん」
    • 「赤いちゃんちゃんこ」事件の捜査に加わっていた羽黒薫は、学園近くの公園に足を向けた。そこで彼は別の事件を追うことになる。

概要

1~2はPS2からの移植作であったが、今作は最初からPSPソフトとして製作された。
「流行り神」シリーズ完結作。

システム

改良されているが、基本的には前作までと同様なので省略。

問題点

データベースのカーソルが操作しづらくなった。カーソルが今どこを指してるのかわかりづらい。

カリッジポイントが最終話以外で生かしきれてない。
これまでのシリーズでは「ここで使用必須?それともまだ使うべきではないのか?」と使いどころに迷うバランスだったのに、0~3話は浪費してもポイント余裕。スリルがなくてつまらない。

そして最大の問題点。前作と比べて読み物としてのレベル低下が著しい。
推敲する時間がなかったのか誤字脱字がひどい。句読点忘れも多発。
プロが売り物として出してる読み物なのに、これでいいのか?と思うくらい稚拙な文章。厨二病気味というか、どこぞの学園祭の文集に載ってそうなレベル。
重要であるはずの心理描写も見たまんまそのまんまで深みがない。グロについての表現力も皆無。

ゲームの方向性が今までと違いすぎるのがマイナス。
じわじわ「科学で証明できない何かがあるんじゃないか?」と思わせるような、ぞっとする1~2の系統ではなく、「人の内側に潜む闇」が引き起こした事件ばかり。しかもその闇が浅くて笑えてくる。
怖がらせ方もどーん!ばーん!的凄惨なグロの厨二演出ばかりなのが気にかかる。
えぐさによる生理的な嫌悪感と、想像力が引き起こす寒気は別物。それがわかってない。
1~2が声をあげる間もなく凍りつく感じだったら、3は怪人が出てきて悲鳴上げる海外ホラー。ぺらい。書いた人はオカルトの意味わかってるのだろうか。

全てのシナリオが社会問題系統。事件の発端として「だけ」なら社会問題を扱っても良かっただろうが、シナリオの最初から最後まで一貫して、社会問題!病んでる現代社会!でウンザリ。社会問題を題材にするなら、あくまで客観的に事件の流れを描けばいいだけなのに、物語全体が主張してきてうるさい。
主人公達が関係者の非常識さに憤ってみたり、それをどう考えているかなどという描写は必要なかったように感じる。登場人物を通じて、シナリオライターが持っている不満とか思想を押し付けられているように感じて不愉快。
(特に女性に対してなんか思うところがあるように感じた。ゲストの女性、救えない馬鹿ばっかり出てくるんだがこれは…)
そもそもいちいち説教臭く気持ち悪い。そして後味というか救いゼロなのがもう…。

ややネタバレになるが、序章と最終章の繋がりがおかしいというか、ルートにもよるが最終章で序章にあたる場面が、全然別のシュチュエーションである。
どういうことなの!?

キャラクターがおかしい。「人間の闇」を描写することに拘った結果、レギュラーである登場人物までが嫌な面を強調して描写されている。
みんなの萌えキャラ小暮さん!と言えども、先輩スキー描写が今回はいくらなんでもやりすぎである。
風海に対し「好き」というより「執着」しており、特に女性故に臆面も無く風海にアタックできるゆうかへの嫉妬が露骨で攻撃的。いい年した男がこれか?と思うと違和感を覚える。愛されキャラだった小暮はどこに行ってしまったんだろう。
ゆうかも自分勝手、かつしたたかなキャラに改変されてて疑問符が。
やはり小暮さん絡みで目立つが、あんな露骨に嫌な感じの娘だったっけ・・・?確かに自己中な面はあったけども。
最終章に絡むレギュラーが異常に少ない点も納得できず、脚本を書いた人物のキャラクターに対する愛情らしきものがいまいち欠落しているように思えてしまう。

良い点

セーブシステムが改良されている。また、フローチャートが非常にわかりやすくなった。スキップも高速スキップのみならず、既読の場合「選択肢まで飛ばす」ことができるようになったため、繰り返しプレイのストレスから解放された。システム面は今作で完成されたと言っていいのではないだろうか。

一応「シリーズ完結」としてまとまってはいる。続けられないこともないような、しかし終わったのだと思える納得のラスト。物語のまとめ方は秀逸であった。特に最終章はなんとも不気味で、足元が崩れるような恐怖を味わうことができ、かつそこからの熱い展開を楽しめる。おまけシナリオもそれぞれのサブキャラクターの「物語」を完結させるにふさわしい。

これまであった数々の伏線・疑問をかなり消化している(それでもスッキリしないのはシリーズ伝統)。

総評

不満が残るが、区切りをつけるという意味での「完結編」としては妥当。C評価。
最終話の風海の成長をやりたかったのはわかるが、前の3話が完全に前振り扱いで完成度が低い。それどころか前座にすらなってない。2がよかっただけに残念である。
純粋に一本のホラーゲーとして見るのであればもう一つ評価を下げたい。シリーズ未プレイの人には絶対に薦められない。
「流行り神」を初めてプレイするのなら、絶対に1か2から!

それと、薫編「トイレの花子さん」はDLでの追加配信(無料)なので要注意。
最終更新:2011年07月20日 22:20