九怨
【くおん】
ジャンル |
怪談アクション |
機種 |
プレイステーション2 |
発売元 |
フロム・ソフトウェア |
発売日 |
2004/4/1 |
メディア |
DVD-ROM1枚 |
プレイ状況 |
全クリア |
総合評価 |
B
|
本当の恐怖は覗いてはいけない……
平安の世に名を馳せた稀代の陰陽師、蘆屋道満の元に届いた依頼は、ある貴族の屋敷ので起こった異変の解決であった。
師である道満の命を受け、屋敷に向かった女陰陽師の「咲耶」と三人の弟子たち。
「咲耶」はその屋敷で、姉を探すはかなげな少女「浮月」に出会う。
餓鬼や妖怪の満ちる死の屋敷で、真相を究明し脱出することはできるのか。
システム
「符」と「固定武器」
キャラクターは屋敷内に散在するお札と固定武器(キャラクターごとに異なる)を拾い集め、これらを使って魔を倒す。札の効果は様々で、直接攻撃タイプと式神召還タイプに分かれる。
「心拍数」
コントローラの振動の強弱で表現される。走り続けると上昇、息切れを起こすと逃走中でも走れなくなる。また走ると体力も減少する。
「禍風 (まがかぜ)」
敵が不意に現れた時、魔のものに不用意に近づいた時に生じる突風。フラッシュを受け目が眩み一瞬硬直、ダメージを受ける。また、走っているときに「禍風」を受けると、主人公は「眩暈」状態に陥る。
「眩暈」
画面がブレ周囲の状態がわかりにくなり、動きが鈍る。また、この状態に陥ると「符」が使えなくなる。攻撃を受け続け安い状態。
「精神集中」
時間はかかるが体力を最大限にまで回復させ、心拍数を下げることができる。また、「眩暈」を回復させることができる。万能だが、精神集中時は無防備となる。
「覗き見」
イベントシーンで使う。覗き見ることでプレイヤーに攻撃を受けるなどの不利益は生じない。むしろ覗かないとイベントが進まない。
「形代船」
船に己の穢れを乗せて祓うという形でセーブする。特定のポイントでしかセーブできず、船の入手回数に限りがある。
その他、回復アイテムも存在。
評価点
3Dグラフィックの美しさがすごい。そして作りこみが凄い。
ステージも寝殿造りの屋敷内。庭なんてだだっ広く開放感あふれるステージなのに怖い。平安時代だから電灯なんて無くて真っ暗。
人が死に絶えた屋敷だからどこにも明かりがない。明かりは心許ない手元の火だけ。本当に自分の周囲しか見えない。一寸先は闇。行く手の闇に何が潜んでいるかわかったもんじゃなく、ただ歩くだけでも心臓に悪い。
しかし、恐怖心から(プレイヤーが)錯乱して走っちゃうと明かりが風でゆらめくからもっと暗くなる罠。しかも気配を気取られる。マジ心細い。お外に返して!
…背景の暗さ調整機能(明かりで照らされる範囲調節)がついているのは、真っ暗にして暗闇の恐怖と戦闘を楽しみたいプレイヤーと、最大限明るくして視界を確保し戦闘を楽にしたいビビリ両方に優しいと思う。もちろん自分は明るくした。
同じ和ホラーでも零との差別化に成功している。
零は廃屋は過去に何があったのか?そして廃屋であるからには、そこにいるのは生きた人間ではない。では何が「いる」のか。そういう恐怖がある。
しかし九怨は絶賛惨劇中なのが怖い。あちこち死体だらけ血溜まりだらけ呻き声だらけ。
さっき何かが通ったのが見えた場所に行ってみると、さっきまで綺麗だった床に、明らかに何かを引きずったような血の跡がべったり…なんてことも。
非常に細やかな気配りがされており、血溜まりを通ると床に自分の足跡がつくという、省こうと思えば省く事ができるところをリアルに再現。モーションも女性特有の色気、たおやかさなどなどが表現された動き。扉を開ける仕草一つでさえ、各キャラクターそれぞれ正確に合わせたものになっていところは感激すらした。
また、探索中、画面の端で(襲っくるわけではないが)ちらりと見える魍魎なども恐怖を盛り上げている。
キャラクターも濃く、ストーリーも重厚。
主人公が浮月「陰の章」と咲耶「陽の章」のどちらのシナリオからでも開始できる。
陰の章は「姉妹はどうなったのか、何があったのか」。
陽の章は「屋敷の住民たちはどうなったのか、今、何が起こっているのか」を知ることができるシナリオ。
また陰の章陽の章両方をプレイすると「九怨の章」が出現、全てが明かされる事となる。
同時間帯に「なにがあったのか」それぞれ別の人物の視点から、別の角度で描いたことはなかなか意欲的で面白いやりかただった。
オリジナルである呪いの設定からして平安時代色が濃く、難解だが考察のしがいもあり、話の完成度は高い。
ゲーム内に音楽はあまりなく、中ボス戦などである程度だが、それが逆によかった。
BGMなんて無粋だぜ!俺の効果音を聞け!と言った感じで、効果音は相当に凝っている。
生者の気配のない無音の屋敷。聞こえるものは、己の足音、ギシギシ鳴る床板、したたる血の音、亡者のうめき声、何かを引きずる音。そして風流な虫の鳴き声と川のせせらぎと葉擦れの音。
そう、闇の中で自分以外の気配がすれば、それは邪悪な「何か」なのだ。
音楽がないことによって、プレイヤーは自然と物音に集中することとなる。
条件を満たすとプレイ出来るミニゲーム「双六」(平安時代にあった白と黒の駒のアレの方)は対戦も可能。なんと「柳(つみかえ)」と「本双六」の2モードプレイ可。で対戦も可能。つみかえは単純だけどハマった。
問題点
グラフィックか綺麗(PS2としては)だが、川の流れに自分が映るなど「わかってるな!」というところにこだわっている一方、イベントCGには口パクがない。
禍風は斬新なアイディアだが効果がフラッシュなのが目に痛い。
あと、「本当の恐怖は覗いてはいけない…」ってパケ裏に書いてあるのに、覗き機能があって、しかもそれ覗いて不利になることがない仕様なのはどうかと思う。詐欺的な意味で。いや別に積極的に襲われたかったわけではないけれど。
陽の章、陰の章、両方から異なる角度で~というのはいいのだが、話の流れ的に、陽→陰で進めないとわけがわからんことになるので、どちらからでもプレイ可としたのは間違いだったと思う。
そしてその物語も、対戦相手などで変化をつけ差別化を図っているのは良かったが、双方の章で中盤まったく同じ所で同じ行動をとることになるのはやや興冷め。ザッピングシステムのようなものがあればよかったのだが。
トドメが陰の章陽の章両方をプレイすると出現する「九怨の章」。解決編とはいえ短すぎる。それだけでなく、操作キャラの登場はあまりに唐突。もう少し伏線張ってわかりやすくしても良かった。
また、話の軸となる浮月と咲耶の二人の友情というか心の交流というかもっと百合百合するべきをもっと描写するべきだった。その後の展開がより感動的になったと思う。
気楽にセーブできないので緊張感はあるが、一言で言ってしまうと面倒。回数制限を設けるのはともかく、可能場所まで指定されるのはつらいものが。演出的には風雅ではあったが。
戦闘面に難がある。入手できる符が多い割に、あまり演出・効果とも代わり映えがない符が多い。
武器が二回しか拾えず、また単に効果と攻撃力がアップするだけなのもつまらない。もっと色々使いたい。せっかくの平安時代なんだからもっとロマンあふれる小道具が欲しかった。
符を試すだけの妖怪が出てこない(出現数が少ない)印象。貧弱とは言え使用回数無限の武器を持っている上に、精神集中でHP無限回復ができるのだから、敵をもっとバンバン出して欲しかった。
敵が少ないので、最初は通路をビクビクして進めていたのに、その内堂々と進むようになってしまうのだ。もう少し雑魚の出現頻度を高めれば、アクションゲー的にはちょうどよいバランスになっただろう。倒す爽快感が得られない&暗闇に慣れてしまうのはいかにも残念。
効果の高い強力な符・武器の入手タイミングがあまりに遅すぎるのも気にかかる。手に入れた頃は既に終盤戦で、中ボスとの戦いすら無いなんておかしいだろう。ゲーム的に考えて。
総評
評価B。
個人的には「平安ホラー」という新ジャンルに挑戦し、それをうまく一本の作品に仕上げられた愛着のあるソフトだが、万人に無条件で薦められるソフトかというとちょっと。
どこかいまいちであり、何かもう一押し足りない。
最後のダメ押しがないというか。
一般人相手ならば「自分は好きだけど」と言う言葉をつけて紹介し、ホラーゲーが好きなら「やってないのにホラーゲー語るつもりか?」と紹介する。そんな一本である。
最終更新:2012年02月26日 20:41