乾季と雨季が交互に来るイヴァーリスの季節模様。
夏真っ盛りの天秤の月。そんなある日―――

「アグリアスさん大丈夫ですか?」
「すまない。迷惑をかけた、ラムザ」
「最近、戦闘での動きが変ですよ?どこか怪我をしているんですか?」
「立ち眩みだろ?このクソ暑いのにそんなにガッチリ着てるから鈍くなるんだよ」
「ムスタディオ、うるさいぞ。いつ敵に襲われるか分からんのだぞ?それに暑さで動きが鈍くなっているのではない」


「ラヴィアン、アリシア。少し良いか?」
「アグリアス様、どうしたんですか?」
「最近、胸に汗疹ができるんだ。それが戦闘中に痛んでな」
「あー、最近熱いですからねぇ」
「特に隊長の胸は大きいですから・・・」
「別に好きで大きくなったのではない。お前たちだって、小さくはないだろう」
「私は大きくなく、小さくなくって感じですからねぇ。私よりアリシアの方が大きいですよ?」
「そうなのか?アリアシア」
「若干ですよ」
「ふーん、私もアリシア達くらいの大きさが良かったな。戦う時に不便だし、夏は汗疹になるし」
「毎年なっているんですか?」
「あぁ。この時期の戦闘では特に汗をかくからな。戦闘後にひどく傷む時がある。ケアルをかければ治るんだが、鎧を脱がないと治せないのが難点だ。」
「でも、隊長はいつも暑そうな服着てますよね~」
「そうね。もっと通気性の良い格好に変えた方がいいですよ。鎧の下に着る服を変えるだけでもだいぶ違います」
「そんな事で汗疹を防げるのか?」
「生地にって吸水性が違いますからね」
「さっそく買いに行きましょう」
「で、隊長。どんな生地にします?」
「実はなラヴィアン。私は服に関しては全くの素人だ」
「いつもはどんな基準で選んでいるんですか?」
「そうだな・・・丈夫な服とか」
「丈夫さだけですか・・・肌触りとかは気にしないんですか?」
「気にした事がないな」
「まぁ、今回買うのは戦闘用の服じゃないですから、肌触りも考えていきましょう」



「アグリアスさん、今日は元気ですね!」
「あぁ、実はラヴィアン達に服を選んでもらってな。おかげでだいぶ暑さが和らいだのだ」
「へー。どんな服にしたんだ?」
「ムスタディオには分からんかも知れんが、シルクを使った服だ。待っていろ、今見せてやる」
「シルクくらい知ってるわ!」
「え・・・でもシルクって摩擦に弱かったような・・・・・・」
「どうだ!」

胸を張ってラムザとムスタディオに服を見せるアグリアスだったが―――

「おおおぉぉぉ!!!」
「な、なんだ?そんなに凄いか?」
「すげぇ・・・ってか、俺幸せ。アグリアス、最高だよ!!!」
「? 大げさな奴だな。ラムザ、どうしたのだ?鼻をおさえて」
「ご、ごめんなさい。鼻血が・・・」
「暑さにやられたのか?ラムザも私と同じようにシルクにすれば―」

とアグリアスが服に視線を落とすと、そこには擦り切れたシルク製のシャツとその隙間から見える乳が――――




「―――――――――――――――!!!!!!!!!」
「ん?アリシア、何か言った?」
「え?何も言ってないよ?」
「そう。でも、昨日アグリアス様に買った服ってシルクじゃないの?」
「違うよ~?アセテートと言う糸を使ったロマンダ製の服だよ」
「じゃあ、シルクと違って強度はあるんだ」
「いや~、吸湿性と乾きの早さ、それに軽さを重視した服だからシルクより弱いんじゃないかな」
「え。じゃあ、そんな服着て戦闘なんかしたら・・・」
「まぁ、今日の戦闘みたいに激しく動くとダメかな~」
最終更新:2010年03月30日 20:46