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皆は就寝している中、ラムザは一人だけ起きて作戦を立てていた。
肌寒かったが、恐らく次の戦いで自分達の戦争は終わる――そう思えば寒さも気にならなかった。
「……とは言え寒いな…だけど間違いなく残りの神殿騎士は強敵揃い。きちんと対策は立てないと…」
寒さを紛らわせるように独り言を呟く。
待ち構えていると思われる神殿騎士の生き残り。
メリアドールの話が正しければ残るはヴォルマルフ、ローファル、クレティアンのみである。しかし何とも言えぬ不安が彼を襲っていた。
聖石に関わってきた彼だからこそ感じる不安感。一体何なんだ、この不安は……?
そこに帳が開き金髪の騎士が入ってきた。手に何かが入った水差しとコップを二つ持っている。
「このような時間までご苦労だな。とはいえ、隊長には当然の事だが」
女騎士はそう言って意地の悪そうな微笑みを向けながら横に座り込む。
その笑みはラムザにとって何にも勝る栄養剤であった。
「おそらく次の戦いで僕達の戦争は終わります。間違いなく激しい戦になりますから…」
「分かっている。だが、相手は間違いなく聖石の力を利用してくるだろう。生半可な策など意味があるまい?」
「そんな事はないですよ。キュクレインのような状態異常攻撃型だとか、ベリアスのような超攻撃型かとか…」
そう言うと頭を掻きながら、机の上に散らばった紙を纏め、整理する。
そして女騎士に向き合った。彼女は音をたてぬよう静かにコップに液体―酒であろうか―を注いでいる。寒さには1番だ。
よくできた女[ひと]だよね。僕には勿体ないくらいに――
「ん、そっぽを向いて悪かったな。確かに傾向を想定するのは大切だが」
「ただ、ルカヴィの力だけではない気がするんです。もっと他の何か…」
「ほれ、酒だ。疲れただろうから休憩してはどうだ?温まるぞ?」
「いや、休憩なんてしている暇なんてないです。それに僕もアグリアスさんも酒は…」
以前その事でムスタディオにからかわれた事を思い出す。
彼女もまた、一口呑んだだけで顔を真っ赤にする程の下戸であった。
「私はお前と一緒ならば平気だが?」
こう言われても退く奴は男じゃない。
飲めないといっても完全に飲めないのではなく匂いや味が嫌いなだけだから我慢すれば大丈夫なはずだ。
「……そうですね、進めながら飲みましょうか」
「ふふ……乾杯」
コップがぶつかり合い口に持っていかれ、酒が喉を通り過ぎる。
コク、コクと一気に飲み干し、お互い机に置いた。
「意外と行けるではないか。私も、お前も」
「自分でもビックリです」「もうすぐ……終わるのだな」
「えぇ。ですが、やはり……」
不安を口に出そうとするラムザ。
アグリアスは制止するように彼の唇を指で押さえた。
「お前は今までルカヴィを何匹倒して来たか覚えているのか?」
「キュクレイン、ベリアス、ザルエラ、アドラメレク、エリディブスですね」
「それに加えてアルテマ・アルケオデーモンを多数。何を心配する必要がある?」
「ルカヴィのリーダーだからです」
そう言うとアグリアスに対しそっぽを向き机に向き直った。
姉のようにも思っている彼女に不安まで見透かされているようで何だか拗ねたくなったのである。
確かに今まで何匹ものルカヴィと戦い、勝ってきた。自信が無いといえば嘘になる。だが……
「私は」
後ろからアグリアスがのしかかるように抱きしめてくる。
大きい二つの胸が後頭部にあたり――気持ちが良い。
「お前を信じている。他の皆もな。それでも不安なのか?」
私はお前を信じる――今まで何度救われてきた言葉だろうか。
あの時の事は今でも昨日のように思い出せる。
今思えばあの時から――
「…そうですね。ありがとうございます」
「聖石がどれ程の人間に信じられているかは分からないが、お前にも私達がいるのだからな、ラムザ」
「何せあの雷神シドもいますからね」
顔を上げ二人は見合って笑い、そのまま唇を重ねる。
この先何が待ち構えていようと、必ず生きて帰ってくる事が出来る――ラムザはそう感じていた。
幕内を照らすろうそくの火が揺れ、開いた帳から見える星々が綺麗に瞬いて――


「明日は決戦だというのに良かったのか、これで……?」
「心置きなく戦えるようにする事も大事だ。後悔があっては戦えないからな」
そう言うとラムザの左手を取り、自分の首に回して置かせた。
少々照れながらもそのまま彼女を抱き寄せる。
「…まぁ、緊張は解れました。ありがとうございます」
「なぁ、ラムザ」
「何ですか?」
「生きて帰る事が出来たら――」
最終更新:2010年03月30日 20:51