街に着き宿へ。情報収集と物資調達のため三日ほどは逗留、担当以外は今日も明日も全員フリーだ。
嬉々として買い物へ赴くもの、酒場へ繰り出すものを見送って、さて僕はどうしようかと夕日の差すベッドに腰掛けたとき。
剣の柄に、小さなカードが差してあるのに気がついた。
「えーと…あれかな?」
書いてあった住所は街の繁華街からちょっと離れたところ。果し合いと勘違いしそうなシンプルな内容だが、逆に書いた人が誰か一発で分かるというものだ。
その店の前には人だかりができていた。…どうも、誰かがケンカしてるみたいだな。
「どうした酔っ払い。私に酌をさせるんじゃなかったのか?三人掛かりで情けないことだ」
美しい流れるような金髪にシックな髪留め、鎧を脱いだ平服姿。見た目は完全に貴族の令嬢と見まごうばかり。……ごつい男の胸ぐらを、片手でつかみ上げていなければ。
「ん、ラムザか。ちょっと待ってろ、すぐ片付ける」
哀れな酔っ払いを苛めているその令嬢は当然、われらが元・近衛騎士隊長。
アグリアスさんである。
淡いランプが照らす店内は落ち着いた雰囲気だった。気の毒な男たちを見送った後、二人で仲良くカウンターに腰掛け、互いに一杯目と決めている酒を注文する。
「お呼び出しとは珍しいですね」
「今日はお前と飲みたかった。たまにはいいだろう。迷惑がるな」
「迷惑なんてとんでもない。もちろん、いつでもお相手しますよ」
隊の運用、資金の運用、今後の見通し。そんなどうでもいい(よくないけど)話をしながら、多少回って来たかな、というあたりでアグリアスさんが口を開いた。
「……驚いたか」
「えぇ。予想外でしたね」
先刻の店先でのケンカの話だ。少なすぎる言葉ではあるが、必ず来るだろうと思ってたから即答できた。
が、彼女は僕の即答に、若干機嫌を損ねたようだ。
「それだ。皆、私を誤解している」
「誤解?」
「『おカタい騎士団のマジメな女隊長様』、お前も私をそんな風に思っているだろう?」
じとっとした目で僕を睨む。お酒にちょっと頬を染めて、ちょっと乱れた金髪はいつもの大人びた雰囲気ではなく、拗ねた女の子みたいでなんだかとてもかわいい。
さて、なんと答えたものだろう。
「違うんですか?」
「違う。私は由緒ある家に生まれながら令嬢でいられず、騎士になった後も意に沿わぬ隊長を殴り倒して何度か営倉入りしたバカな暴力女だ」
あのくらいのケンカなど日常茶飯事だったぞ。ぐっと残った酒を一息に煽り、次をバーテンに注がせる。言葉の真偽はともかく、飲みっぷりは実に男らしい。
「それは間違いなく、相手が悪いんですよ。アグリアスさんを知ってる人なら、詳しい話を聞かなくてもみんな分かります」
「…………」
「こんな時代なのに、場の空気とか軍規じゃなく、自分自身の規範にとても真剣なんでしょう?誰より真面目でしっかりしてるってことじゃないですか。
それなら僕の思ってるとおりのアグリアスさんだし、僕はそんなアグリアスさんが好きですよ」
「ぶ」
あ、むせた。ちょっと不意打ちすぎたかな。
でもあまりこの人には自分を批判したり疑問を持ったりはして欲しくないから、ばっさり言い切ってみた。まぁ、僕のわがままだけど。
「大丈夫ですか?」
「……聞かせろ」
「は?」
「次はラムザ、お前の番だ。お前の素の姿を、私に語って聞かせろ。嫌だとは、言わせないぞ」
恥かしがってるような、拗ねてるような表情で僕を見る。…あるいは、本当はこの言葉が言いたかったのかな。
うん、やっぱりこの人はかわいい。凛々しいけど、とてもかわいい。
「…それで、僕が助けようとやっと木に登ったと思ったら、アルマは先にさっさと飛び降りちゃって」
「で?」
「僕はしばらくそこから動けなくって、兄さんに助けてもらいました」
他愛の無いいくつかの話に、彼女は何度も声を上げて笑った。魅力的な碧眼の端には涙さえ浮かべている。
「ふぅ。…すまなかった。あんなことを言って、私もお前を誤解していたようだな。文武に長けたベオルブの家系、完全無欠の貴公子かと思っていた」
「完全無欠な人間なんていませんよ。思うままに動いて、たまには汚れて、それを笑って語れるから人は人を好きになれるんだと思います」
「そうか。…そうだな、お前の言う通りだ。私も、お前のことが……」
アグリアスさんは潤んだ瞳で、じっと僕を見つめる。と、不意に身体を密着させて――
「ここは二階に部屋が取れる。少し休まないか、ラムザ」
耳元で囁いた。と、…こういう場合のリアクションは……。
「……」
とりあえずスツールを降りて彼女の腰に手を回し、抱き寄せた。
ちょっと自分でもぎこちなかったけど、降りたアグリアスさんの表情を見る限り、気持ちは伝わったみたいだった。
「…ん…」
部屋の扉を閉めた途端、互いの背を掻き抱き、むさぼるような甘いキス。
自分の心と身体の熱を示すように、相手の舌を絡めとる。
「もっとお前が知りたい、ラムザ」
「僕もです、アグリアスさん……」
アグリアスさんの声。味。におい。体温。やわらかさ。リードをするとかされるとかの余裕も無く、ただ勢いのままにベッドに押し倒し、服を脱がせた。
「……」
「あ、…すみません、…痛かったですか?」
ちょっとだけ躊躇うような表情を見て、なんだかよく分からないが謝ってしまった。
「いいぞ。お前の好きにしていい……私を女にしてくれ、ラムザ」
裸体をちょっと恥かしげに隠しながら、微笑みながら頬を染める。
うん。これで落ちない男は、いないと思うんだ。
乳房を剥き出して、軽く手を触れる。ほのかに温かくて弾力のある柔らかい感触を、ゆっくりと揉みしだく。
「結構胸、大きいんですね」
「…馬鹿」
首筋にキスをすると、軽く呻く。そのまま舌を這わせ、絶妙な甘い肌と声とをじっくりと味わう。
同時に親指と人差し指とで、胸の先のまわりをゆっくりと円を描くようになぞる。抗議しようとした口は、口付けで押さえ込んだ。
目の前にはアグリアスさんのとろんとした瞳。陥落寸前。まぁ、僕はもうとっくに陥落しているわけだけど。
ころあいを見てかわいい乳首を指でつまむ。こりこりとした感触を楽しんでいると、彼女の身体が切なげに震えた。
「気持ちいいですか?」
「ん、…うん…それ、きもちい…あッ」
可愛い。可愛すぎる。死ぬ。
左は指で弄びつつ、右は舌と唇で攻めてみる。首筋よりも甘い味わい。相当感じてくれているらしく、吐息が熱い。
「ラムザ、ラムザ……もう、胸ばっかり……」
「ほかにご希望があるんですか。こことか?」
言いながら、不意をついて綺麗な脇の下を舐めあげる。ひゃうん、と変な声を出して、軽く僕を睨みつけた。
「そ、そんなところはいい!お前の、お前のが…その、そろそろ…」
「僕の何ですか?ちゃんと言わなきゃ、わかりませんよ」
言いながら、下へと手を伸ばす。柔らかな両の内腿を撫でさすりつつ、湿った気配のそこを焦らすように触ってみる。
つぷ、と入り口に浅く指を挿れ、すぐに抜く。もうすっかりとろとろに出来上がっているが、そんな簡単にしてあげては面白くない。
入り口を誘い、離れる。またちょっとだけ指を入れて、すぐに抜く。ひくひくと震える柔肉を無視して、両足の付け根をさする。
「ラムザぁ…やめて、もう…欲しい、欲しいよぉ…全部、奥まで、ちゃん…と…ッ!」
そんなことを何度か繰り返しているとアグリアスさんはすっかり涙目。その表情が愛おしすぎて、僕は更に苛めたくなる。
「僕、まだ何もしてもらってませんよ?」
言うが早いか、逆に一瞬で押し倒された。さすがの体捌きというべきか、しかしこんなとこでそんな本気にならなくても。
「出せ。自分で」
裸のアグリアスさんに押し倒されて迫力と興奮にどきどきしながら、ごそごそと臨戦態勢の自身をさらけ出す。
「下手でも文句言うなよ…」
ためらうことなく、彼女はそれにしなやかな舌を這わせはじめた。
白い指に擦り上げられる感触。唇に含まれ、しごきあげられる感覚。舌が裏筋を這い回り、絡みつき舐め上げる快感。ゆれる乳房と金髪。
一生懸命さがものすごく伝わってきて、正直すごく気持ちいい。
「イイか?…ラムザ…」
発する吐息、蕩け切った視線さえも心地いい。
「ええ、すごく…このままイッていいですか?」
「ダメだ。許さん」
互いに困ったような表情で、笑う。
彼女は仰向けに寝転がり、足を開いた。
僕は遠慮なく覆い被さり、ぬるぬるに脈打つ熱い膣中へと勃ちあがった器官を挿し入れた。
二人の嬌声が、部屋に満ちた。
互いの熱い肉体を貪るように求めあい、卑猥な音を立てて接合部をこすりつけあい、湧き上がる快楽に身を震わせる。
互いの名を呼び、くねる腰を打ちつけながら、両手を重ね、唇を重ねる。声、熱、汗、五感のすべてで、互いを感じあう。
「ラムザ…あッ、ラムザッ…」
「アグリアスさん…僕、もう…!」
気持ちいい。もう何も考えられない。
お互いに貪欲に快楽を貪る素の自分を見せ付けあい、自分から腰を動かす。
精神的にも、肉体的にも、互いに溶け合い混じりあう陶酔感の中で、僕は彼女の内で快楽の頂点に達した。
何度も、何度も。彼女の身体を固く抱き、身をうち震わせてその胎内に精気を吐き出した。
「…中で、出したな」
「はい。出しました」
「できたら、責任を取ってくれるんだろうな?」
困る僕の姿を楽しもうというのか、裸のまま悪戯っぽく微笑むその姿が可愛くて、僕はついついカウンターを返す。
「もちろん。貴族の奥方として、一生ドレスと宝石と社交界の花形としての立場が、貴女を待ってますよ。望むならね」
「…望まないな」
つまらなそうに口を尖らせる。あはは。そりゃそうだ。
「じゃ、二人で放浪の剣士にでもなりましょうか。世界中を回りつつ、子供を育てて」
「あぁ、それは望ましいな。しがらみのない、私たちらしい………私たちという人間らしい、素敵な夢だ」
朝日の差すベッドの上で、再度の口付けを交わす。互いの欲求が、再びごそりと動いたのを感じ合う。
チェックアウトまで、もうちょっと時間がありそうだった。
(FIN.)
最終更新:2010年04月08日 21:11