むかし、むかーしのおはなしです。
ダルマスカというくにに、それはそれはうつくしいおひめさまと、ゆうかんなおうじさまがいました。
ふたりのおさめるくには、それはそれはうつくしいくにでした。
しかし、あるひ、きょだいなていこくが、せんそうをはじめました。
おひめさまとおうじさまのくには、ていこくのぐんにせんりょうされ、
そのたたかいのなか、おうじさまはしんでしまったのでした。
おひめさまは、なきおうじさまに、ていこくへのふくしゅうと、
うつくしかったふたりのくにを、とりもどすちかいをたてました。
しかし、ていこくはつよく、おひめさまひとりのちからでは、かつことはできません。
おひめさまは、ていこくにたちむかうちからとなる、
でんせつの「はおうのつるぎ」、「みっつのはませき」をもとめ、たびにでました。
たびのとちゅう、おひめさまはこころづよいなかまとであい、ともにていこくとたたかうことになりました。
そらかけるとうぞくと、うつくしいもりのせんし、おひめさまにけんをささげたけんし。
そして、おひめさまのくにのみらいをうけつぐこどもたち。
しゃくねつのさばくをこえ、どこまでもひろがるそうげんをかけぬけ、ふぶきのゆきやまをさまよい、
おひめさまと、なかまたちのたびはつづきました。
ながいたびじのすえに、ついにおひめさまは「はおうのつるぎ」、「みっつのはませき」をてにいれました。
そして、おひめさまとなかまたちは、ていこくにたたかいをいどんだのです。
「はおうのつるぎ」と「みっつのはませき」のちからで、
きょだいなていこくも、じょじょにおしかえされていきました。
ていこくは、きりふだのせんかん「バハムート」をしゅつげきさせ、おひめさまにせまります。
おひめさまは、そらかけるとうぞくのふねにのり、「はおうのけん」をてに、「みっつのはませき」をむねに、
さいごのたたかいにむかいました。
そして「バハムート」は、ながいたたかいのすえに、はませきのちからでしずみ、
きりふだをうしなったていこくは、ダルマスカのくにからてったいしてゆきました。
おひめさまは、とうとうていこくにうちかったのです。
「おうじさま、わたし、かちました。これで、おうじさまも、やすらかにねむれるでしょう」
おうじさまのおはかのまえで、おひめさまは、なきました。
そのご、おひめさまは、それはそれはうつくしいじょうおうさまとなり、かつてのうつくしいくにを、ふたたびよみがえらせたのでした。
そのくには、わらいごえのたえない、とてもしあわせなくにとなったのでした。
めでたし、めでたし。
~イヴァリース昔話より「ダルマスカのおひめさま」~
「――アグリアスさん?」
ふと本から目をあげると、アグリアスさんはくぅくぅと寝息をたてていた。
物語を読むのに夢中になって、アグリアスさんが寝ちゃったことに気が付かなかった……。
珍しくアグリアスさんから、
「ラムザ、頼みがあるのだが……」
なんて言われたので、何を頼まれるのかと思ったら、僕の前に一冊の本を差し出して、
「……む、昔話を、読んで欲しい……」
なんて、顔を真っ赤にして言われた。思わず、
「ええっ、昔話!?」
って言ってしまって、強烈な張り手を喰らってしまった。
「お、お前しか頼める者がいないんだっ!恥ずかしいんだからこれ以上言わせるなっ!」
色々な意味で、ボムが自爆したみたいな衝撃だった……。
何でも、子供の頃、寝る時に母親に読んでもらっていた本らしい。
「イヴァリース昔話」 イヴァリースに住む人なら、誰もが知ってる昔話を集めた本だ。
この「ダルマスカのおひめさま」や、「せいじんアジョラ」「りゅうとひめぎみ」
「チョコボのおんがえし」「クリスタルのせんし」「のばらせんそう」などが収録されている。
街の本屋で見かけて、懐かしさのあまり買ってしまったものの、自分だけで読んでいると味気ない。
誰かに読んでほしい。できたら、昔のように寝る前に――
「それで僕ですか……」
張られた頬をさすりながら聞いた。
「悪かった……。でも、お前くらいしか思いつかなくて、それで……」
すっかりしょげてしまったアグリアスさん。
「アリシアやラヴィアンやムスタディオでは馬鹿にされてしまうだろうし、ラファでは私が読んでやるような立場だし……
シド様やレーゼやメリアドールには……」
「分かりました。いいですよ」
言い訳が長くなりそうなので、僕はアグリアスさんの言葉をさえぎった。
「……すまない」
アグリアスさんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「それで、どのお話がいいですか?」
「……『ダルマスカのおひめさま』がいい……」
消え入りそうな声だった。
それで、この「ダルマスカのおひめさま」を、アグリアスさんのベッドの横で読んであげていたってわけだ。
眠るアグリアスさんの顔は、あどけない子供のよう。
――戦闘では男顔負けの勇敢さなのに、子供みたいなところがあるんだよなぁ。そこも魅力ではあるんだけど。
僕は本を閉じると、アグリアスさんの枕元にそっと置いた。
僕でよければ、また読んであげますよ。
おやすみなさい、アグリアスさん。いい夢が見られますように。
最終更新:2010年07月04日 20:59