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今日は機織り祭の日だ。

勇敢な戦士である男神、北斗星と、機織りの上手な女神、南斗星が1年に1度、
星の海を越えて出会うとされる日である。
また、この日に、男性は北斗星、女性は南斗星に願いをかけると叶うとされている。
女性が家事や機織りの上達を願って南斗星を祭ったのが起源とされ、
イヴァリースの祭りの中でも規模の大きなものである。

ラムザの一隊も、お祭りの日は隊務が休みだ。
都合よく大きな街に駐留中でもある。空はよく晴れており、北斗星も南斗星もよく見えるだろう。
街には出店が所狭しと並び、隊の面々も今日ばかりは、と喜び勇んで街へ繰り出す者が大半だった。

こんな日ではあるが、アグリアスは静かな宿の食堂でひとり本を読んでいた。
人込みが苦手なのである。
お祭りそのものは好きなのだが、それにかこつけた騒がしさというのがどうも好きになれないというのもあった。

アリシアとラヴィアンはずいぶんおめかしして出かけていった。
ラムザはラッドとムスタディオに連れ出されてしまった。
レーゼはベイオウーフと出かけたな。あのふたりは多分朝まで帰ってこない。
メリアドールはラファを連れていった。ラファはまた食べ過ぎなければいいが。
シド様もおひとりで出かけられたが、意外とお祭り騒ぎがお好きなのだろうか。
クラウドくらいしか残っておるまい。奴は何にでも興味がないからな。

アグリアスの前のテーブルの上に、読み終わった本が数冊積みあがっていった。
隊の者も、ぽつぽつ帰って来ていた。さっき入り口で騒いでたのはラヴィアンだろうか。
また飲みすぎたのだろう。

(さて……)
アグリアスは本を閉じると、読み終わった本を脇に抱えて、自分の部屋に戻っていった。

街は祭りも終わり、独特の寂しさと静けさに包まれていた。
アグリアスは、街外れの小高い丘の上にいた。星空を遮るものは何もない、文字通り満天の星空だ。

アグリアスは丘の上に座り、星空をずっと眺めていた。

南の空に、ひときわ大きく輝く星。あれが、南斗星。

小さい頃、両親とこうして星空を眺めて、星や星座の名前を教えてもらうのが好きだった。

オヴェリア様とご一緒に星を眺めて、星や星座のお話をしてさしあげた。
「アグリアスは、星のことにも詳しいのね」
そう褒めてくださった。

南斗星よ。
私は、機織りもできないし、煮炊きも繕いもできない。そんな私の願い事でも、叶えてくれるだろうか。
私の願いは――

願い事は、言葉に出すと叶わない、そう言い伝えられている。

END
最終更新:2010年07月27日 01:10