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それは一瞬の出来事だった・・・
偶然とはいえ南天騎士団の大部隊と遭遇してしまい、乱戦となってまった戦闘がようやくこちらに傾きかけた・・・そんな最中に起こった本当に一瞬の出来事だった・・・

「ラ、ラムザ!・・・イ、イヤァァァァァァ~~~~ッ!!」
誰かが叫んでる・・・
一本の細い矢が愛しい人の背中に突き刺さっている・・・
心のどこかにいるもう一人の私が他人事のように「ああ、あれは致死傷だ・・・何をしても無駄ね・・・」と語りかけてくる
そこでようやく叫んでいるのが私だと理解する
必死に私を押しとどめようとする敵を切り捨てながら駆け寄ろうとするが中々縮められない自分の足がもどかしく思える
ひたすら愛する人の元に駆け寄ろうと目の前に塞がる敵兵と言う障害を排除する
視界がぐにゃりと歪んだ・・・
ああ、きっと涙で歪んでいるんだろう・・・
そうもう一人の私が静かに分析する・・・
間に合わない・・・、手遅れだ・・・、もう遅い・・・、お前は護れなかった・・・
もう一人の私は冷酷で、残忍で、・・・そして・・・絶望的な事実を私に叩きつけてくる・・・
戦闘は私がラムザの下についたと同時に終わった・・・
敵は撃退できたがこちらの敗北だった・・・
私以外の主要メンバーが死んでいた・・・

戦闘が終わり、辺りを静けさが包む・・・
生き残った仲間たちが戦闘の後始末をする間もアグリアスはラムザの遺骸を抱き、泣いていた。

それから数日して主要メンバーが抜けた一行は櫛の歯が落ちるように一人、また一人と離れていった・・・
本来、副隊長たるアグリアスがラムザが抜けた穴を埋めるべく活動をしなければならなかったが、彼を失ってからの彼女はまるで壊れた操り人形のようだった・・・。

自然解散したラムザ一行だったが当然ながら残っていた軍資金はそれぞれの功績に合わせて分配されることになっていた
当然、隊の主力であり副隊長だったアグリアスにはそれこそ一つの家族が7年は遊んで暮らせるだけの資金が渡された

それらの資金で戦闘が行われた裾野の近くに小さな農園を作り、簡素ながら小さな祠を建て、仲間の遺灰を収めた。
3軒ある納屋のうち1軒の地下には仲間が忌み嫌い誰も引き取らなかった聖石を埋めた。

農園の手入れをする以外、ただ何をするでもなくボーっと風に揺れる草原を眺めて過ごす・・・そんな日々が続いた。
そんなある夜、アグリアスは夢を見た・・・

目の前にラムザの形をした何かがいる・・・
彼女が大好きだった笑顔を浮かべ、目の前に立っている・・・
だが、その笑顔を見ていると何故か安堵よりも嫌悪感が湧き上がってくる・・・
「お前は何者だ・・・なぜ、私の夢にその格好で出て来る・・・」
『・・・・』
「・・・私を笑いにきたのか?かつては戦女神などと呼ばれ、敵には恐れられ、味方には頼もしく思われた者が今では無力な女になったことを・・・」
『・・・・・』
「それともたった一人、愛する男を護れなかった愚かな女を慰めにでも来たのか?」
『・・・・・』
「何とか言ったらどうだ!」

しばらくして、その何かは語りかけてきた・・・
『汝、力なき乙女・・・汝は力を欲するか?』
「・・・・誰だ・・・」
『我はキャンサー・・・汝の願いを言え・・・我には其を叶える力がある・・・』
「ふっ・・・、そうやって私をルカヴィにするつもりか・・・」
『・・・否、我は汝の一人の男への愛に応じただけ・・・』
「・・・愛・・・愛・・・か。・・・幼き頃は「愛する人さえ無事であれば他には何も要らない」という侍女たちの会話を耳に入れるたびに不思議に思ったものだ・・・」
『・・・・・』
「だが、いまはどうだ?・・・この人を・・・、ラムザを失っただけで私は絶望し、この世の全てを憎もうとしている・・・」
『・・・汝は復讐を求め、我と契約するか? ・・・我にはこの世界の全てを敵に回してもその復讐を遂げる力もある・・・』
「・・・今更、今更復讐をなしたところで・・・ラムザは蘇ってこない・・・。いや、彼が愛したこの世界を否定することなど・・・私には出来ない・・・」
『では・・・汝は、その男を蘇らせる為に我と契約するか? ・・・我にはこの男を蘇生し、再び汝と同じ時を過ごさせる力もある・・・』
「・・・魅力的だな・・・だが、それは私の都合だ・・・ラムザは・・・ここで死すべき運命だったのかもしれない・・・。 今となってはそれを曲げるつもりなどない・・・」
『・・・では、汝は何を求め、我と契約するか?』
「・・・私は・・・私は・・・もう一度あの時をやり直したい・・・あの日、私がラムザとそして仲間を失ったあの日から・・・」
答えを伝えた途端、暴力的なまでの量の光がアグリアスの視界を塞ぎ・・・次に気がついた時、彼女はあの日、行軍していた道に立っていた・・・
「どうしたんですか、アグリアス様?」
「ボーっとしちゃって・・・あ~、またラムザ隊長との逢瀬を思い出されていたんですか?」
心配そうなアリシアと何故かニヤニヤするラヴィアンがこちらを覗き込んでくる
「あら?どうしたの?三人とも?急に立ち止まっちゃって・・・」
「アグリアス、そんな所で立ち止まるのも良いけど・・・急がないと明後日までにドーターにつけないわよ?」
レーゼやメリアドールがそう言いながらこちらに近づいてくる
「お~い、姐さん~。野イチゴが一杯熟してるとこ、見つけたぜ~!」
「そうそう、皆の分をとって来るから軽く休憩しねえか~?」
お調子者のムスタディオも、隊を裏から支えるラッドもいる・・・
「おや?戦女神様もお疲れになる時があるのか・・・」
「兄さん、そういうのはよくないよ・・・大丈夫?アグリアス、どこか具合が悪いの?」
マラークがこちらをからかい、それを嗜めながらラファが心配そうに顔色を覗き込んでくる
「いや・・・なんでもない・・・少し考え事をしていただけだ・・・」
なんでもないと口では言いながらも周りの状況がつかめず混乱する頭を必死に落ち着けようとする
「ほらほら、さっさと野イチゴとって来い、ラムザとアグリアスのほうは俺が何とかしておくよ」
「はっはっはっ、ベイオウーフ殿もレーゼ殿とご一緒に摘みに行かれてみてはいかがかな?」
年長者組はのんびりと会話している・・・
あともう数刻もすればこの仲間たちは・・・・ラムザは・・・・
「・・・あれ?アグリアス、どうかしたのかい?」
・・・懐かしい・・・二度と聞こえなくなった声が耳に響く・・・
「ああ、ラムザ・・・か・・・なんでもない・・・」
「そうですか・・・ラッドたちが戻ってくるまで各自休憩しましょう。町に足が生えて逃げるわけじゃないですから焦ることは無いでしょうし」
「そうだな・・・」
「今日はもう少し進んだら休みましょう・・・先行した偵察隊の報告では綺麗な泉と野営できる十分なスペースがあったそうですし・・・」
「・・・そうだな・・・」
(そこで我々は敵と遭遇してしまった・・・どうすれば・・・どうすればあの惨劇を起こさないで済むのだろうか・・・)
「ところでどうですか、その首飾り・・・気に入ってもらえましたか?」
いわれて始めて自分が首飾りをしていることに気がついた・・・キャンサーの聖石をした首飾りを・・・
「あ、ああ・・・」
「よかった・・・本当はあぶないかもしれませんが・・・でもやっぱり好きな人には綺麗でいてほしいですし・・・アグリアスにとても似合うと思ったから・・・」
「ふふ・・・ありがとう・・・」
こんな幸せの時間が長く続かない事を知りながらも私は・・・私はこの幸せがいつまでも続くことを願わずには居られなかった・・・
どこか違う次元の狭間だろうか・・・
漆黒の闇の中・・・大きな水晶に手をかざしながら、中に浮かぶアグリアスの横顔を眺める女性がいる・・・
真っ黒なフードを被り、女は優しい笑みを浮かべる女性・・・だがその笑みにはどこか狂気が渦巻いて見える・・・
「可愛い私のアグリアス・・・沢山夢を見なさい・・・貴女が望む世界・・・私が作ってあげるわ・・・うふふ・・・」
「沢山の幸せを知り、沢山の絶望と悲しみを知りなさい・・・」
そう言いながら闇に浮かぶ水晶を覗き込みながらフードを被った女は微笑むのだった・・・

「貴女が本当の幸せを掴めたとき・・・私の役目は終わるのだから・・・」
どこからとも無く吹いた一陣の風が女性を覆っていたフードを揺らす・・・
フードからは亜麻色の髪がさらりと姿を見せた・・・
最終更新:2010年03月26日 16:00